ときわの広場

ときわ動物病院のコミュニティ。診療のお話やしつけ教室の様子など、ざっくばらんに綴っています。

感染症1 フィラリア症(フィラリア吊り出し術)

2014-01-05 12:45:14 | 院長のつぶやき
こんにちは、岡村です。


世の中は共同社会でなりたち、
持ちつ持たれつの共生関係で成り立っていますよね
でも、微生物というものは時に
一方通行の片利共生関係になってしまいます
ウイルスや細菌、寄生虫の中にはそういったやつらがいてます
今回ご紹介しますのは、有名なフィラリアという寄生虫についてです。



フィラリアは特殊な生活環を営み、
動物の体内に既にいる親虫からうまれた仔虫は、吸血とともに一旦蚊の体内に入ります
その蚊の中で一段階成長してから、再び吸血とともに動物の体内に入ります。
吸血された個所で数週間すごしたのち、体内を巡りながら、
最終寄生先の心臓へと到達します。この間実に半年を要します
寄生数が増えれば、心不全や腹水貯留、肺高血圧症、血尿といった症状を発症させます。
感染犬でも発症していなければ、まだ猶予がありますが、
大静脈症候群を発症してしまうと、命の危険信号が灯ってしまいます

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この場合、心臓にいるフィラリア親虫をなんとかしなければいけません。
うっ血で怒張した頚静脈を露出させ、
そこから、カテーテルを心臓までいれて、親虫をつかんで吊り出します
写真の白い素麺みたいなものがフィラリアです。


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腹水貯留や貧血などを伴う、心不全のある動物に麻酔をかけるため
リスクの高い手術です
また、手術が成功しても、
フィラリア症によって臓器に一度おこった変性が後遺症として残ることも多くあります。


発症してからあせるよりも、日頃の予防がやっぱり大切です
フィラリアの生活環から、
自分の子が感染した状態は、
地域の別の子に感染させてしまう感染源となってしまっているということです。
予防必須な感染症ですね

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ターボくんよくがんばりました
後は管理をしっかりしていこうね





神経外科2 犬の椎間板ヘルニア2

2014-01-04 19:38:03 | 院長のつぶやき
あけましておめでとうございます
岡村です。
2014年になりました。
楽しみにみていただいているとのお声も多く聞きますので、
今年は、もっとざっくばらんなブログも頑張ろうと思っています


さて、今年最初に登場するのはぴあのちゃん。
年末に、後肢麻痺が発症してしまいました
排尿障害を伴う深刻な脊髄のダメージが疑われ、
入院しての内科管理を行いましたが、残念ながら、よくなりませんでした。

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足が麻痺してまっすぐに伸び、腰がもうあがらず、尻もちをついてしまっていました


わんちゃんがこうなってしまう理由はたくさんありますが、
椎間板ヘルニアが有名です。
確定診断には、脊髄造影検査、CT検査、MRI検査が効果的で、
椎間板ヘルニア以外の理由も探るにはMRIが最も有効でしょう。
どの検査を受けるかは、年令や発症時の禀告、他症状などから総合的に判断します。
当院では突出部位の場所を決めるためにまず、脊髄造影検査を行っています
単純エックス線撮影では脊髄が見えませんので、造影剤を脊髄腔に流してエックス線で可視化する方法です。
場所が決まれば、そのまま手術へ移行することも可能です
手術は片側椎弓切除術を行います。
脊髄の圧迫を解除し、突出したヘルニア物質を摘出する手術です。
外科が必要な急ぐべき流れなのか、内科で行くかをよく相談します。


ぴあのちゃんは、リハビリもよく頑張り、
腰が上がった時には、飼い主さんと一緒に喜びあい
日に日に良くなって行く様子がとても嬉しく、



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退院のとき、飼い主さんの待つ方へ歩いていってくれました。
この喜びはほんと、仕事冥利につきます
動物の頑張る力には感服しちゃいます
よかったね、ぴあのちゃん


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椎間板ヘルニアは、重症例では腰がたたなくなるため、
放っておけないことは一目でわかります
もし、発症してしまったら、
それ以上、悪くならないよう、ケージかキャリーにいれっぱなしで安静に過ごしながら
病院に走ってもらうことが大切で、抱っこなどは避けた方がよいと考えています