車泊で「ご当地マンホール」

北は山形から南は大分まで、10年間の車泊旅はマンホールに名所・旧跡・寺社・狛犬・・思い出の旅、ご一緒しませんか。

年の初めの神楽三昧「紅葉狩」

2022年01月10日 10時00分00秒 | 日本の伝統・芸能・技の美

「紅葉散る 里は静かに 眠るとも 聞こゆるものは 山寺の鐘」

神楽歌にのって始まる【紅葉狩】。時は平安中期、武勇の誉れ高い『信濃守中納言・平維茂』は帝の勅命を受け、信州戸隠山に住み旅人を襲って食らうと言う『鬼女・紅葉姫』の成敗に向います。

2013年7月6日「安芸高田神楽特別公演」は「横田神楽団(安芸高田市)による【紅葉狩】。
戸隠山に棲む鬼女を退治するため、先を急ぐ『余五将軍・平惟茂』と従者。横田神楽団の美形キャラはメイクが映えるイケメン揃い(笑)なので、私も含めて女性ファンが多いそうです。

一方こちらは信州戸隠山。錦秋の山々を彩る紅葉を愛でる美女三人。その輝くばかりの美しさは、手にする紅葉さえも色褪せてしまうほど・・ひとしきり披露される美しい三人の舞と鬼女大王の口上・・鬼女大王って(^^;)

神楽歌と笛の音・・人気の無い山中で紅葉狩りの宴を開いていた美女の姿に思わず心を奪われる平惟茂主従。武勇を誇る『平惟茂』も、美女の甘い言葉についつい役目を忘れ、差し出されるまま杯を重ね・・いつしか意識も遠のき・・

毒酒に倒れた二人を見て不気味に笑う美女たち。その手から伸びる妖の糸に絡め捕られ、もはや身動きさえも叶わぬ有様。

「今宵の獲物は何と美しい~。さぁこれよりは、こやつらの生き血を啜り~骨をば噛み砕かん」高らかに笑う紅葉姫たちの姿は見る間に恐ろしい鬼女に 

今宵の獲物を食らう準備に奥に消えていった鬼女・・鬼女の罠に嵌り深い眠りに落ちる二人のもとに現われたのは、八幡大菩薩の使神・竹内の神
二人に掛けられた妖術を解き、あの女たちこそが戸隠山に棲む鬼女である事を教え、ありがたい神剣を授けて消えます。

毒の眠りから覚めた『維茂』は、枕辺に残された神剣を手にし、神の威徳に深く感謝します。そして改めて鬼女の恐ろしさを胸に刻み、自らの使命を果たすべく、決戦の場へと赴くのです。
完全に鬼と化した鬼女、そこには女人であった面影は、片鱗も残ってはいません。

戦いが始まる前には、まずは自らの名と勅命を相手に伝えるのが、舞台の上でのお約束。で、この時の受け答えが実は私たちの間では密かなブーム。時に応じて「おうさ!」「なんと!」「た~だ今がことなり~」(笑)そして「いさ!勝負!!しょ~ぶっ!!」が決戦の合図。ここから神楽ファン必見の戦いの舞が披露されるのです。

残念ながら(^^;)戦いの場面の画像は、いつもの臨場感優先・・知らない人が見たら、多分何だろう??って思うだろうと自覚しつつ。 でも肉眼で見てもこんな感じで、本当に凄いスピードなんですよ。

部下を次々と成敗され、今はこれまでと自ら二人の前に姿を現す鬼女大王。真後ろから見る決めポーズも実に美しい(⌒∇⌒)

正義の味方を応援しているはずなのに、いつの間にか鬼の所作が決るたびに沸き起こる拍手。が、鬼が主役のままでは舞台は終わりません(((((^_^;)

八幡大菩薩から賜った神剣の威徳はありがたく、悪行を重ねた『鬼女・紅葉姫』とその一族は『平惟茂』によって見事成敗され、戸隠山は再び平和な山里の風景を取り戻しました。

------------------------00----------------------

2013年7月8日、同じく「安芸高田神楽特別公演」で、「桑田天使神楽団(安芸高田市)による【紅葉狩】。
なんと、信州戸隠山に住む『鬼女』、今回は、いきなり旅人を襲って捕り食らう場面から。

さて、都より『平惟茂』が鬼女退治に来ると知った『鬼女』。ならば返り討ちにせんと紅葉の宴の謀をたくらみます。舞い落ちる紅葉よりも艶やかな美姫とお付きの侍女二人。

鬼女の謀が待ち受けているとはつゆ知らぬ『平維茂:主従』。鬼女征伐の勅命を受けてこれより戸隠山へと向います。

主従は、人里離れた山中で紅葉狩の宴を催す三人の美女と出会います。こんな寂しい場所に貴婦人だけでいる事、本来ならば怪しいと思わねばならぬのに・・何時の世も美しい女性に殿方は弱いようです。そうして誘われるままに酒宴に加わる『維茂主従』。

美女たちのもてなしについつい杯を重ね、いつしか前後不覚に・・実はこの女達こそが戸隠山の鬼女とは夢にも疑わず、遂に酔い臥してしまいました。

「あ~らうれしや!、遂に維茂~倒れたり~~~」勝ち誇った鬼女の声が山中にこだまします。

毒酒に酔いつぶれ深い眠りに落ちた維茂主従。その夢に現れたのは、日々崇敬する八幡大菩薩。女人の正体が戸隠山の鬼女である事を告げ、ありがたい神剣を授けて彼らを目覚めさせます。

神の御加護を受け鬼女の館に赴き、今は大鬼王となった紅葉姫一味に戦いを挑む維茂主従。狭い舞台の上一杯に繰り広げられる乱舞は勇壮でしかも美しく、何度も見ているはずなのに、見るたびごとに気持ちが高ぶります(笑)

手下の鬼女を成敗し、遂に大鬼王との勝負。張り巡らされた妖の糸の奥深くに潜む大鬼王に向かって、「いざ、じんじょうに勝~負!」

どの神楽の画像を見ても、戦いの場面は90%の割合で鬼が主役(^^;) ことほど左様に、鬼の演技は素晴らしく見る者を魅了せずにはおきません。

------------------------00----------------------

2013年12月7日「神楽門前湯治村:本郷太刀納め神楽」で、「上河内女性神楽団(安芸高田市)による【紅葉狩】
鬼女征伐の勅命を受けて戸隠山に向かう武将『平維茂』と従者。ちなみにお囃子方も全員女性と言う徹底ぶり。

さて、二人が奥に退くと同時に登場する鬼女、内掛けを高く差し上げる腕の細さが、間違いなく女性であることを示しています。

打掛を脱ぎ捨て振り向いた『紅葉姫』。どんなに秀逸な演技を見せようと、いかに上手に化粧をしようとも、こればかりは男性には真似のできない美しさ(^^;)。 余談はさておき、山道を急ぐ維茂主従を見つけ「良き酒肴が登り来!登り来る~!」と見得を切る場面。当然ですが声が可愛すぎて・・。でも、鬼女とは言え、元は都で高貴な方の寵愛を受けた『紅葉姫』。まして変化する前なら声が美しいのは当然なんです!

さて、紅葉の宴に誘われ、美女のもてなしについつい重ねてしまう盃の数。時折客席に向けられる紅葉姫の視線の怪しさ、何だかゾクゾクします(笑)

何時しか酔いつぶれて眠りこける二人を見下ろし、してやったりと正体を現す鬼女。観客席から湧きおこる拍手。

深い眠りに落ちた維茂主従の枕辺に立つ『八幡神』は、鬼女の正体を明かし、さらに維茂に神剣を授けて消えます。

いざ戦いの場面、今は完全に悪鬼と化した紅葉姫とその侍女二人。鬼棒片手の鬼の所作に、またしても会場からは大きな拍手。時々、〇〇ちゃ~~~んと声がかかるのは、お身内なのか、それともファンクラブの会員か(笑)

クライマックスの大鬼女との闘い。いやいや、この二人の決めポーズの何とも優雅で美しい事。ちなみに大鬼王の髪が深紅なのは、鬼があくまでも、元は女人である事を示しているから・・と思ったのですが真実は???

真偽のほどはともかく、そういった細かい演出を発見するのも神楽の楽しみの一つかな。ともあれ、こうして戸隠山の鬼は見事退治されました。

------------------------00----------------------

2019年4月21日、「因原交流神楽大会」で、「大都神楽団(江津市)」により【紅葉狩】

この日、信州戸隠山で鹿狩りに興じていた『多田満仲』主従は、里の「芝刈り権兵衛」に行き会います。

ここで権兵衛さんが登場する時点で、楽しい掛け合いが始まるんだろうと、客席は早くも笑う準備(笑) 従者の方、何が何でも笑うもんかと必死に生真面目顔ですが・・・

いきなり満仲さんに向かって本名で話しかけ、ものすご~~~~~~~っく、個人的な質問等するものだから、遂にたまりかねて笑いだしてしまいました。してやったりと、どや顔の権兵衛さん、良いのか本当に??(笑)

さて、気を取り直し、良い狩場を知っちょるから連れて行ってやるというので、付いていくことに。その山路で、紅葉狩する女性たちに出逢います。

誘われるままに酒を飲み、美女の舞に酔いしれる二人と、おまけの権兵衛さん。

やがて崩れるように眠りこける二人・・嬉しそうに顔を見合わす美女。で、気が付いたら権兵衛さんが消えてる(^^;) 

してやったりと鬼女の本性を現した二人、酒の毒に侵され思うように動けぬ二人に襲い掛かる鬼女たち。

その時、神の息吹にも似た鈴の音ともに白面の使徒が現れ、満仲に一振りの太刀を授け、また体に回る毒気を払って消えてゆきます。

神より授かりし太刀の威徳に気力をみなぎらせた満仲。客席に逃げ込んだ侍女を追うのですが、観客の皆さん一斉にカメラを取り出し・・おかげで画像は下半分がすべて観客の上半身で埋め尽くされました(笑)

この後、見事満仲の矢に抜かれて絶命、いよいよ残るはラスボス『鬼女・紅葉』。何と大太鼓の上を足場に、妖の糸を繰り出し、散々に満仲を苦しめます。

どうです、この迫力。深紅の髪を逆立てた鬼女の顔は、まさに名の通り、燃えるような紅葉の色。夜中に出会ったら・・・絶対に死ねます(^^;)

ちなみにここで登場する『多田満仲』は、鬼退治で有名な『源頼光』のお父さん。武勇の血はちゃんと受け継がれていたんですね。

------------------------00----------------------

神楽では正義の武人が窮地に陥ると「八幡神」がよく登場します。これは祭神である『八幡麻呂』が武勇の神とされるからです。神楽の演目には、この『八幡麻呂』が登場して鬼を退治する【八幡】があります。

正月十五日までは松の内 一月十日

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 年の初めの神楽三昧「坂上田... | トップ | 年の初めの神楽三昧「土蜘蛛... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本の伝統・芸能・技の美」カテゴリの最新記事