goo blog サービス終了のお知らせ 

子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

守口から平和と人権を考える会(もりナビ)が守口市教委に要望書

2020-07-12 09:14:39 | 2020年度中学校教科書採択(大阪)
7月10日、守口から平和と人権を考える会(もりナビ)が守口市教委に要望書を提出しました。


2020年7月10日
守口市教育委員会
教育長 太田 知啓 様

守口から平和と人権を考える会(もりナビ)

2021年度使用中学校教科書には生徒の人権に配慮した教科書を選定してください
育鵬社の社会科教科書、日本教科書・教育出版の道徳教科書は選ばないでください


 守口市は「めざす守口の教育」として『郷土を誇りに思い、夢と志をもって、国際化社会で主体的に行動する人の育成』を教育理念に掲げています。
 守口市には日本の植民地支配を起源とするたくさんの在日コリアンや中国人、そして近年にも外国にルーツをもつ子どもたちがたくさん暮らすようになり、その子たちは日本人の子どもと同じように守口市の公立小中学校で教育を受けています。教育基本法は日本国籍の児童・生徒にのみ適用され、外国籍の子どもには就学させる義務がないという解釈もあるようですが、近年外国籍の無就学児が多いことに批判があります。ましてや日本国憲法の権利規定は、外国籍の人を除外するものではありません。人権とは全ての人にそなわっているものであり、外国籍の児童・生徒、外国にルーツを持つ児童・生徒にも当然、義務教育を受ける権利があります。
 「めざす守口の教育」も当然、全ての児童・生徒に適用されるべきものであり、その基本理念は、全ての子どもたちの教育権や人格権に反するものであってはならないということは、言うまでもありません。
 その観点から、私たちは来年度使用の中学校教科書選定にあって、以下の点に留意して選定していただくよう申し入れします。

1、日本の戦争と植民地支配について正しく教えない育鵬社教科書は、採択しないでください

 近年、歴史認識問題を巡り、日本と、日本が過去侵略し植民地支配した国々との間で、歴史認識を巡る対立があります。そのほとんどは、日本の政治家が、日本が過去を行った侵略戦争や植民地支配を正当化することによってもたらされています。
 育鵬社歴史教科書は、日本が過去を行った侵略戦争や植民地支配を正当化しようという意図がにじみ出ています。
 一例をあげます。「韓国併合」について、育鵬社教科書は「植民地」という言葉を一回も用いることなく説明しています。(そのような教科書は育鵬社だけです。)そして韓国併合後に、朝鮮半島でどれだけ米の収穫高が増えたか、どれだけ学校が増えたかを説明しています。
 しかし、その米が日本に送られたために、朝鮮の農民は食べるのがなく、日本の炭坑や工場、土木工事などに出稼ぎに行かざるを得ない状況にまで困窮したことには触れられません。朝鮮半島に増えた学校で、朝鮮人の子どもたちは日本名を名乗らされ皇民化教育を受けさせられたことには触れられません。
 太平洋戦争を大東亜戦争と併記し、アジア解放に寄与したのだとイメージづけされています。しかし、日清戦争時の甲午農民戦争に対する弾圧や三・一独立運動への弾圧など、朝鮮を植民地支配するためにどれだけの朝鮮人を殺してきたかには触れられません。(それは台湾についても同じことです。)
 在日コリアン・中国人の生徒のルーツは、日本が過去に行った植民地支配にあります。在日コリアン・中国人の生徒のいる教室でこのような授業を行うことは、歴史の事実を曲げるばかりか、教室内に差別といじめの芽をもたらすことにしかなりません。
 外国にルーツを持つ子どもたちに自尊感情を持ってもらうためにも、そして日本人の子どもたちが戦後の民主主義社会に誇りを持つためにも、歴史は正しく教えるべきです。
 育鵬社歴史教科書には歴史歪曲ともいえる記述が各所にあります。大阪の歴史に6ページも割いているからと言って、歴史歪曲の罪を帳消しできるものではありません。守口市の中学生には、「普通」の歴史認識に基づいた歴史教科書を選定するよう、お願いします。

2、人権に配慮することなく義務感ばかりを教え込む育鵬社・自由社の公民教科書は、
採択しないでください

 育鵬社の公民教科書は、子どもたちの人権に配慮が足りないと言わざるを得ません。
 「グローバル化の時代に必要な資質とは」というコラムで曽野綾子の文章を引用し、このように書いています。
《人は一つの国家にきっちりと帰属しないと、『人間』にもならないし、他国を理解することもできない》
 外国にルーツを持つ子どもたちには、「一つの国家にきっちりと帰属」していないケースは少なくありません。両親の国籍が違う場合、日本の法律では20歳になるまでふたつの国家に「帰属」することになります。また市役所には出生届をしても本国領事館に届け出をしないために、国籍を有しない子どももいます。いわゆる朝鮮籍の子どもたちも、国籍を有しているわけではありません。きっと守口市の小中学校にも、そのような子どもは少なからずいるはずです。
ふたつの戸籍をもつ子ども、戸籍を持たない子どもは、人間ではないのでしょうか? 本当に他国を理解することはできないのでしょうか?
 育鵬社公民教科書を選定するということは、このような差別と人権侵害を容認するということです。
 守口市が目指す「国際化社会で主体的に行動する人の育成」とは、「『人間』にもならない」というような人権侵害教育を容認するものではないと、私たちは信じています。
 育鵬社の公民教科書は、憲法の項目では大日本帝国憲法は人権を尊重し、日本国憲法は押し付け憲法であったとイメージづけしています。国民主権の項目では主権者としての意味よりも天皇の意義を、基本的人権については人権そのものを教えるよりも公共の福祉と国民の義務に紙面を割き、平和主義では国防の義務を大きく取り上げます。これが正しい憲法観といえるでしょうか。生徒たちを主権者としてしっかりと育て、人権と平和を尊重しようという意識が、育鵬社公民教科書には皆無です。
 自由社公民教科書については、育鵬社に輪をかけてひどいものであるため、紙幅の都合から触れません。
 守口市の生徒のために、まっとうな人権感覚の教科書を選定してください。

3、生徒の心を型にはめようとする日本教科書・教育出版の道徳教科書は採択しないでください

 道徳という教科は人の内心に踏み込みます。より人権感覚に対して敏感であるべきです。
守口市の「めざす守口の教育」では重点項目7として「正義感・倫理観、自らを律し人を思いやる心、郷土や国を愛する心等を身につける取組みをすすめます」とありますが、それは教科書から獲得するのではなく、生徒たちの実生活や自発的な学びから獲得すべきと考えます。教科化や教科書が本当に必要なのかという疑問が常にありますが、そのことはここでの趣旨にあわないので、ひとまず措きます。

 日本教科書は差別を容認する教材がいくつもあります。『永久欠番42』『レーナ・マリアの挑戦』は差別されても黙って成功することを素晴らしいとする教材です。「黒人はジャングルに帰れ」とか「一本足」などとひどい差別発言を投げつけられても、耐えることが美徳なのでしょうか。
『大地~八田與一の夢』や『台湾に残したもの』は、台湾の植民地支配にあたって「日本人がどんないいことをしたか」ということを題材にしています。過去の植民地にルーツを持つ生徒がいる状況にあって、植民地支配を正当化する教材を用いるべきではありません。
 教育出版は、生徒の自主的な学びを促す気があるのだろうかと、疑問に思わざるを得ません。『怒りの救助活動』では、救助された人から礼がないことを怒り「人間として失格だ」とまで断じていますが、救命作業はどんな人でも助けるのが当然。しかも相手が救命後どんな状態かもわからない。それはあまりにも度を越えた身勝手な怒りではないでしょうか。また『校長先生の模擬面接』という、校長がルールを無視した面接に耐えうるか生徒を試すという教材があります。圧迫面接そのものが人権侵害であり容認できるものではありません。教育出版は、どこか人として大切な「守らなければならない一線」を勘違いしているとしか思えない教材が多いです。
 『あなたは顔で差別しますか』という教材では、差別される人、いじめられる人の努力を前提として「差別や偏見のない社会を築いていくために何が必要か」と問いかけられています。差別、いじめそのものが重大な人権侵害であり、差別される人、いじめられる人が自分を変える必要はありません。

 生徒がどのような大人になりたいかということは、生徒たち自身が決めることです。保護者も学校もそれを強制することはできません。せめて強制力の少ない道徳教科書を選定していただくようお願いします。日本教科書や教育出版の道徳教科書を選定すべきではありません。


 守口市には民族学級や夜間中学など、素晴らしい伝統があります。日本人だけではなく、外国にルーツを持つ子どもたち、就学する機会を奪われてきた人たちにもきちんと教育を保障することは、当該の人たちだけでなく、同じ教室、同じ学校にいるすべての生徒たちにとっても必要なことだし、それこそが本当の歴史、公民、道徳の教育だと思います。
 貴教育委員会におかれては、おとながどんな教育を与えたいか、ではなく、おもたちがどんな教育を望み必要としているかという視点から、子どもたちにとってよりよい教科書を選定していただきますよう要望します。