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子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

日本教科書の不正な宣伝活動の証拠を発見!

2018-06-14 19:23:58 | 道徳教科書 中学校
日本教科書が教育再生首長会議で不正な宣伝活動をしていたことが、和泉市の辻市長と泉佐野市の千代松市長への情報公開請求によって明らかになりました。この証拠は東大阪市の野田市長からの情報公開によっては出てこなかったものです。野田市長は隠蔽した可能性があるので、今後東大阪市では追及する必要があります。

日本教科書関連の情報を整理しますと次のようになります。

■2017年7月12日 教育再生首長会議の7月会議で日本教科書の「リーフレット」が配布された。
*リーフレットのPDF 
https://www.data-box.jp/pdir/f7aa25e66ce3436aaecde1ddbe1d3e52

■2017年11月15日 教育再生首長会議の11月会議で日本教科書の監修者である白木みどり氏の講演会が行われ、その時、「会社案内」が配布された。
*「会社案内」PDF
https://www.data-box.jp/pdir/917f9991c766419d9b4c518f4d3ca21f

■2018年正月明け(日にちは不明)日本教科書がHPを開設し、日本教科書の宣伝を開始した。

■2018年1月24日 教育再生会議の1月会議で「会社案内」と「御案内」という文書が配布された。
*「御案内」PDF
https://www.data-box.jp/pdir/e6d373b76aec4caaac9a864fd2da1188


教科書検定中の宣伝活動を文科省は教科書会社に厳しく自粛を求めています。昨年、育鵬社に中学校道徳教科書の作成の有無を問い合わせた時、育鵬社は「静謐な環境を保つためそれは言えない」と答えました。文科省は教科書作成の有無も含め公開してはならないと規制しているので、育鵬社もこのように答えたと思われます。

にもかかわらず日本教科書は教育委員を選出する権限をもち、総合教育会議で教科書採択方針を決める権限をもつ首長に営業を直接かけるという大胆さでした。2015年の時の育鵬社の失敗を教訓にしてか、検定中の白表紙本こそ見せてはいませんが、教育再生首長会議を利用していました。

6月13日、文科省に検定期間中とは2017年4月から2018年3月までの期間をさすことを確認したうえで、日本教科書の不正事実を伝え、対応を求めました。文科省の教科書課の担当者はHPについては知っていましたが、他社もHPがあるので、特に問題はないと考えているとのことでした。教育再生首長会議での日本教科書の営業活動については知らなかったとのことで、とりあえず担当部署内で報告するということでした。こちらからは資料を提供できると申し出ましたが、それは受け入れませんでした。

日本教科書が教育再生首長会議で営業活動を行った証拠は3種類(添付)あります。2017年11月15日には白木みどり氏の講演会が行われており、このときに白木氏が会社案内を配布した可能性があります。社員がついてきて配布したとか、首長の誰かが依頼されて持ち込んだ可能性もあります。会社案内はリーフレットよりもっと詳しく、代表取締役社長の武田義輝氏の挨拶と、監修者として白木氏が写真入りで紹介されており、会社概要として所在地、資本金も明記されています。

内容上、一番問題なのは1月24日に配布された「御案内」です。顧問の八木秀次氏と代表取締役社長の武田義輝氏の名前で出されており、次のような文言があります。「市長が主催する総合教育会議では教科書採択の方針などについて議論することができるとされています」と、市長が教科書採択に影響を及ぼすことができるとしたうえで、「市長、教育長、教育委員の皆様に、直接ご説明の機会をおつくり頂きたく、ご検討賜りたい」とまで要請しています。ここまで露骨なことをしていたとは驚きです。

教育再生首長会議の事務所は日本教育再生機構の事務所に置かれており、首長会議の事務を日本教育再生機構に委託しているので、2名分の社員の賃金を首長会議が負担(年会費2万円)していることが、この間の東大阪市からの公開資料で明らかになっています。そもそも教育再生首長会議は日本教育再生機構が作った教科書を採択することを目的に結成されたともいえるので、癒着は予想されたことではありますが、仮にも「公平・公正な採択」をうたっているのですから、このような癒着を文科省が見逃すのかが厳しく問われます。長期の安倍政権で、緩み切ったお友達優遇が森友・加計問題で明らかになっていますが、今回もその一つです。

現在、採択業務が全国で行われています。内容が人権侵害教科書であるにとどまらず、こんな不正なことまでやっていた会社の教科書が、しかも道徳を教える教科書が、他の7社と並んで堂々と採択候補として扱われているのは断じて許されることではありません。マスコミにもぜひ取り上げていただきたいですし、国会でも追及してもらう必要があるのではないかと思います。この問題が公にならず、日本教科書が採択されるなどということがないように、ただちに各地でも教育委員会に申し入れをしてください。特に、教育再生生首長会議に参加している自治体では「日本教科書」による接触があったかどうか、問うていく必要があります。

フジ住宅による大阪市のアンケート水増しは事後的にしかわからず、大阪市では育鵬社が採択されてしまいました。この轍を踏まないように今回はしたいと思います。








日本教科書HPで晋遊社隠し

2018-06-10 20:15:50 | 道徳教科書 中学校
5月下旬、日本教科書のホームページで、会社代表が武田義輝氏(晋遊舎会長)から、上間淳一氏に変わっていました。

■現在の日本教科書HPの「会社概要」ページ



会社登記を調べてみると、5月28日時点で、新たに5月1日付け(登記は5月22日)で、上間淳一氏が取締役と代表取締役に就任しています。しかし、武田義輝氏は、代表取締役を辞任したのではなく、そのまま代表取締役であることもわかります。(取締役2017年4月21日就任、代表取締役2017年9月1日就任)

■日本教科書の会社登記簿


従って5月28日現在、登記簿上は、代表取締役は、武田氏と上間氏の2人になっています。日本教科書HPで代表が替わったかのような表記になっていますが、これは明らかに晋遊社隠しです。

この間、日本教科書とヘイト本や児童ポルノ本を多数出版している晋遊社との一体性が指摘されたことに対する姑息な行動ではないでしょうか。

日本教科書と晋遊社とんぼ一体性については、以下の詳しく書かれています。

■リテラ記事
児童凌辱のマンガも出版、ヘイト出版社・晋遊舎が“道徳教科書”に参入! 安倍のブレーン・八木秀次がバックか
http://lite-ra.com/2018/02/post-3816_5.html

教科書展示会に行き、市民アンケートにあなたの意見を書いてください

2018-06-06 20:12:33 | 道徳教科書 中学校
教科書展示会に行き、市民アンケートにあなたの意見を書いてください

子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

* 採択してはならない教科書名と、採択してほしい教科書名を、理由と共にはっきり書いてください。
* 道徳教科書は文科省が定めた22の徳目の習得を目的にして作成されているため、どの教科書も問題があります。この資料では、特に問題のある教材と、「人権・平和・共生」の観点から比較的良い教材をあげました。教科書を見る際の参考にしてください。
* 自己評価の問題も含め、ご自分の視点で詳しく吟味し、よりましな教科書を選んでください。

今年の中学校道徳教科書採択に関する大阪府内の教科書展示会の日程表です。

大阪府教科書センターへリンク
http://www.pref.osaka.lg.jp/shochugakko/kyoukasyosenta/index.html

*************************************
   
2019年度使用、中学校道徳教科書の分析

1 特に問題があるのが<日本教科書>と<教育出版>

(1)<日本教科書>
  育鵬社の歴史・公民教科書を作成した日本教育再生機構理事長の八木秀次氏が立ち上げた出
版社で、自ら代表に就任したが、その後、代表は武田義輝氏に交代。武田義輝氏は晋遊舎会長を兼ねており、両社は事実上一体の会社。晋遊舎はヘイトスピーチ本『マンガ嫌韓流』や児童ポルノ本で知られた出版社。道徳教育を語る資格があるのか? 現在、HPでは代表が上間淳一氏になり、晋遊舎隠しがおこなわれているが、武田氏は今も代表のまま。

(2)<教育出版>
  小学校道徳教科書同様、日本会議系の道徳学者として知られる貝塚茂樹氏、柳沼良太氏が中
心で作成している。貝塚茂樹氏は育鵬社の道徳教科書パイロット版で、戦前の教育勅語教育
を全面賛美している人物。

2 各社の問題のある教材

<日本教科書> 人権侵害が顕著。
1年P.92「永久欠番42」 黒人初の大リーガーとなったロビンソンの契約条件は、差別をうけても「やり返さない勇気」を持つことだった。差別する側のことは問わず、差別される側が努力して自分の価値を認めさせることによってしか差別はなくならないと教えている。人種差別撤廃条約の理念を真っ向から否定。
1年P.141「銅像が教えてくれたこと」 日清戦争・朝鮮侵略の中心人物であった陸奥宗光を郷土の偉人として教える。
2年P.8 「14歳の責任」 14歳からは刑事責任能力が問われると罰則を強調。イジメで被害生徒を自殺させた場合、少年院送り、地元では針のむしろ、賠償金の支払いは一生続くと脅しつける。これが“心を育てる道徳教育”といえるのか?
2年 P.54「雨の日のレストラン」 長時間労働の肯定。忙しいのは自分だけではないと知り、友人たちとの会食のあと、また会社へもどって働く若者の話。
2年 P.92「キスからもらった勇気」 1919年、シベリアのポーランド孤児を日本で治療したという美談。同じころ、日本軍はシベリアのイワノフカ村で民間人を虐殺していたが、都合の悪いことは書かない。
2年 P.152「込められた想い 和解の力」 安倍首相のホノルル演説(2016.12.27)。日
米ともに謝罪のないきれいごとの演説を美化。現職首相の演説を載せているのは日本教
科書だけ。森友・加計問題で関与を疑われている現職政治家を載せるのは不適切。
3年 P.78 「自分が好きですか」 統計を見せて、外国に比べて日本の若者の自己肯定感が
低いのはなぜかと問う。保守派の場合は、日本に誇りを持たせる教育が行われていないせいだと強引に結論付けるために利用する。
3年 P.100「ライフ・ロール」 結婚した女性は、たとえ仕事をもっても家庭を優先すべき
と教える男女の役割分業・女性差別の教材。

<教育出版> 偉人伝が多く、日本自慢の教材が多いのは小学校と同じ。
(1)各学年の巻末に47都道府県にゆかりのある偉人とその言葉を紹介。戦国武将、勤王の志
士など、子どもたちのロールモデルにはふさわしくない人物が多い。
・戦国武将―伊達政宗、大友宗麟、上杉謙信、武田信玄、織田信長、徳川家康、毛利元成、前田利家、石田三成、加藤清正、真田幸村
・勤王の志士―吉田松陰、橋本左内、高杉晋作、坂本龍馬、西郷隆盛、大隈重信
  戦国武将は下剋上と戦争・殺戮・略奪にあけくれ、勤王の志士はテロを辞さなかった。子どもたちに最も伝えなければならない「命の大切さ」とは縁遠い人物たち。

(2)特に西郷隆盛を美化―これは小学校道徳教科書も同じ
3年P.164「徳の交わり~西郷どんと菅はん」 もともと武力討幕のために、西郷隆盛が幕府側の庄内藩を挑発したことには触れず、平和的で寛容な政治家として美化。

(3)在日外国人の子どもたちへの配慮がまったくない“自国中心主義・排外主義”の教材。
3年 P.70「外国人から見た日本人」 日本人のすばらしさを強調。東日本大震災の時の日本
 人の行動に対する外国人の高い評価(「我慢する精神」「秩序を守る気高い姿」など)を
紹介し、最後に「あなたは世界の人たちに胸を張れるどんな人になりたいですか?」と子どもたちに問いかけている。無言のうちに「立派な日本人になれ」と同調圧力をかける教材。こんな教科書は教室では使えない。
3年 P.150「それでも僕は桃を買う」福島県産の桃を避けるのは差別と決めつける。福島原
発事故による放射能の危険性についてはいろいろな意見があり、大阪には福島から避難してきている子どももいるのに配慮に欠ける。いじめの原因にもなる。

<学校図書>
全学年で「日本人としての自覚」を強調。愛国主義的傾向が強い。

<東京書籍>
1年 P.17「権利と義務を考えて」 個人の権利より義務の押しつけ。
2年 P.182「郷土のことを考える」 山形県は軍人の工藤俊作
3年 P.113「差別や偏見をなくすために」 第五福竜丸のことを取り上げている。平和教材ではあるが、アメリカの水爆実験による被害ということが明確でなく、差別の問題にされている。

<日本文教出版>
2年 P.120「いじめをなくすために」 罰則を持ち出して子どもを脅す。
<学研教育みらい>
2年 P.83「あなたへの質問」 日本の若者の自己肯定感の低さを強調。
2年 P.44「ヨコスカネイビーパーカー」 軍港横須賀には触れずに、地域起こしを美化。
2年 P.178「声援を力に 第72代横綱稀勢の里」 久々の日本人横綱を強調。現在の相撲界は外国人力士の活躍によって成り立っていることが明確でない。

<廣済堂あかつき>
全体として保守的。文章が長く、1時間内に消化しきれない教材が多い。

3 子どもに数値で自己評価させることの問題

中学校道徳教科書は8社すべてが子どもに自己評価させている。評価については議論があったものの、文科省は最終的には「道徳に数値評価はなじまない」として文章表記とした。ところが中学校の学習指導要領・解説では「生徒自身による自己評価」が奨励されているため、日本教科書をはじめとして5社は子どもによる自己評価を数値でさせている。

<第1のパターン>22の徳目ごとに数値評価―日本教科書、教育出版、廣済堂あかつき
<第2のパターン>一定の観点を数値評価―東京書籍、日本文教出版
<第3のパターン>文章で振り返る―光村図書、学研教育みらい、学校図書
 
 日本教科書は特に悪質。各学年の教科書の最後に「心の成長を振り返りましょう」というページを設けて、22の徳目それぞれをどの程度達成できたか、レベル1からレベル4まで「態度や行動」を自己評価させている。「愛国心」をどのレベルまで「態度と行動」に現わすことができたかを子どもに問えば、「日の丸」に敬意を表し、「君が代」をしっかり歌うように、目に見える形で表現するように強制することにしかならない。
さらに日本教科書は「理想の人物はだれか、その人物に何パーセント近づいたか」まで書かせている。特定の人物の特定の側面だけを美化した教材を学習させ、その人物をロールモデルにさせるのは、子どもたちの視野をせばめ、一面的な価値観のもとに行動させることにしかならない。

4 各社の「人権・平和・共生」教材は?

<光村図書> 小学校同様、人権教材がもっとも多い。
1年 P.42「私の話を聞いてね」 手に障害を持つアメリカの少女
1年 P.46「ユニバーサルデザイン―誰もが使いやすいものを」
1年 P.143「異文化の人々と共に生きる」
1年 P.148「考えの違いを乗り越える」
1年 P.183「親友」 男らしさ・女らしさ
2年 P.90「アダプテッド・スポーツって何だろう」 個人の条件に合わせたスポーツ
2年 P.135「明日、みんなで着よう」 いじめの被害者への連帯
2年 P.140「アンネのバラ」
2年 P.146「国際人道支援―どんな仕事があるのだろう」 国境なき医師団
2年 P.164「桃太郎の鬼退治」 鬼の立場からも考える
3年 P.60「ぼくの物語 あなたの物語」 人種差別
3年 P.68「世界の子どもたちの状況」
3年 P.94「一票を投じることの意味」 18歳選挙権
3年 P.100「社会の一員として」 年齢ごとに関係してくる権利・法律
3年 P.150「希望の義足」 ルワンダ内戦
3年 P.156「本当に意味のある国際協力とは」 

<日本文教出版>
1年 P.62「花火に込めた平和への願い」 ホノルル市と長岡市の交流
2年 P.20「最後のパートナー」 引退盲導犬 
2年 P.42「リスペクト アザーズ」 他者の尊重
2年 P.46「人権課題への取り組み」 
2年 P.48「戦争を取材する」 戦場カメラマン山本美香
3年 P.122「自分・相手・周りの人」 マタニティマークなど
3年 P.145「さまざまな性」

<東京書籍>
3年 P.144「その子の世界、私の世界」 少年兵、児童労働など
3年 P.151「子どもの権利条約」
3年 P.172「命見つめて」 第二次大戦の被害者の憎しみと許し

<学校図書>
1年 P.6「誰も知らない」 障がい児への偏見
2年 P.172「自分らしい多様な生き方を共に実現させるためにできること」 セクシュアル・マイノリティ
3年 P.36「豊かなれ阿賀の流れよ―新潟水俣病の苦悩をこえて―」

<学研教育みらい>
1年 P.65「ノーマライゼーション」
2年 P.128「ものづくり」 障がい者が使いやすいスプーン

<廣済堂あかつき>
3年 P.96「虹の国―ネルソン・マンデラ―」 アパルトヘイト

*ここにあげた教材はごく一部です。多様な観点から教材を読み、ぜひあなたの意見を教育委員会に届けてください。

【要望書】人権侵害・自国中心主義の<日本教科書>と<教育出版>は採択しないでください。

2018-06-03 20:44:53 | 道徳教科書 中学校
大阪では、大阪府内の全市町村教育委員会に「日本教科書」と「教育出版」を採択しないように求める要望書を提出していきます。
大阪で活用する文案を下記に載せますので、各地で加工してご活用ください。

*********************************



○○市教育委員会  ○○様
○○市教科書選定委員会様
                               2018年  月   日
                                   ○○の会

2019年度使用中学校道徳教科書の採択にあたっての要望書

人権侵害・自国中心主義の<日本教科書>と<教育出版>は採択しないでください。

 貴教育委員会の日頃の教育へのご尽力に敬意を表します。
 今年度の中学校道徳教科書の採択にあたって、私たちは既に貴教育委員会に要望書と公開質問状を提出させていただきましたが、さらに<日本教科書>と<教育出版>は採択しないようにとの要望書を提出いたします。以下にその理由を述べますが、よくご検討のうえ、「人権・平和・共生」を最も大切にしている教科書を採択してくださるように切に要望いたします。

1 <日本教科書>には、人権侵害の教材がたくさんあります。

1年 P.92 「永久欠番42」 黒人差別の話。 徳目⑪公正・公平
 1947年に黒人として初めてメジャーリーガーになったジャッキー・ロビンソンの話です。観客や選手から差別されても「やり返さない勇気」を持つのが契約の条件でした。苦しむロビンソンを、同僚の白人選手が仲間としてかばったことによってロビンソンへのヤジが止まり、ロビンソンは新人王に輝き、1997年に42番は全球団の永久欠番になったという偉人伝です。
この話は第二次世界大戦直後の状況をもとに、黒人は差別されてもじっと耐え、リベラルな白人の温情によって差別がなくなるという構図で書かれています。差別する側の問題、黒人の抗議する権利・抵抗する権利については一切触れていません。1960年代の公民権運動によって、アメリカ社会の黒人差別が厳しく問われたことにも全く触れていません。
この教材は差別されても抗議するのではなく、実績をあげて自分の価値を認めさせることによってしか差別はなくならないと子どもたちに教えています。差別は差別される側に問題があるのではなく、差別する側、差別を認めている社会に問題があるという、今日では世界基準になっている人種差別撤廃条約の理念にもまったく反します。
『マンガ嫌韓流』などのヘイトスピーチ本や児童を対象としたポルノ漫画など人権侵害の書籍を多数出版してきた晋遊舎系列の会社(日本教科書の代表者の武田義輝氏は晋遊舎の会長でもあり、両社は事実上一体の会社です。その後、日本教科書の代表はHP上では上間淳一氏となり、晋遊舎隠しがおこなわれていますが、日本教科書は今も晋遊舎ビルの一角にあります)にふさわしい教材というべきかもしれませんが、文科省は「黒ん坊」とか露骨な差別表現だけには検定意見をつけたものの、この教材を合格させました。文科省の責任も厳しく問われねばなりません。

2年 P.8 「14歳の責任」 少年法の話。 徳目①自主・自律
14歳からは刑事責任能力が問われると罰則を強調しています。イジメで被害生徒を自殺させた場合、少年院送り、出所しても地元では針のむしろ、賠償金の支払いは一生続くと脅しつけるような内容です。これが「心を育てる道徳教育」といえるのでしょうか?少年法は社会科公民の刑法のところで扱いますが、それにしてもこんな脅迫まがいの教え方はしません。

2年 P.54 「雨の日のレストラン」 若い会社員の話。 徳目⑧友情
 友人たちと夕食の約束をしたものの、仕事が終わらず欠席しようとしましたが、友人たちは待っていてくれました。待っている間、友人たちはレストランのテーブルで各自仕事をしていました。忙しいのは自分だけではないと気がついた若い会社員は楽しく食事をした後、また会社に戻って仕事に集中しようとするという話です。
 ここでは長時間労働への批判的視点はまったくありません。実質上の過労死の勧めであり、「働き方改革」といいつつ、無制限の労働を強いる「裁量労働制」を導入しようとしている安倍政権政権に迎合した教材です。この教材はたとえ仕事がしんどくても、長時間勤務であっても、わかりあえる友人がいればがんばれると友情の話にすり替えています。また会社員の仕事はこんなにも厳しいものだ、これが働くということだというイメージも刷り込みます。企業が労働者をこき使って過労死や自死に追い込んでいることが社会問題化しているにもかかわらず、それには全く触れずに現状を肯定し、子どもたちに誤ったメッセージを送る教材は許されません。

2年 P.152 「込められた想い 和解の力」 安倍首相演説。 徳目⑱国際協調
 2016年12月27日、安倍晋三首相の真珠湾での演説からの抜粋です。「寛容と和解」を強調していますが、その前提としての「謝罪」はありません。太平洋戦争に関しては、日本は一方的な戦闘の開始、連合国軍兵士の捕虜の虐待などを謝罪せねばならず、アメリカは空襲による民衆の無差別爆撃、広島・長崎への核兵器の使用などを謝罪せねばならないはずです。しかし日米ともにそれには触れず、きれいごとで済ませています。
 ちなみに現職首相の演説を掲載しているのは日本教科書だけです。森友問題や加計問題で関与が疑われ、国会で厳しく追及されている現職政治家を道徳教科書に掲載するのは不適切です。

3年 P.100 「ライフ・ロール」 共働きの女性の話。 徳目⑪社会参画
 共働きの母親の忙しい日常。祖母の介護を夫婦、子どもたちが押しつけ合いますが、結局母親が引き受け、管理職への登用をあきらめるという話です。母親が「私には他にも役割がありそうです」と、家庭を優先し上司に管理職の話を断ることが肯定的に描かれています。父親が仕事を優先させることへの批判はまったくなく、介護を社会的に解決するという視点もありません。
 この教材は家事や介護は女性の仕事という男女の固定的な役割分業を当然であるかのように教えています。女性の社会参画は「家庭優先」が前提という、女性差別を子どもたちに刷り込む教材です。

2 <教育出版>にも人権侵害教材があります。

(1)偉人伝が多いのは小学校道徳教科書と同じです。
 
 中学校道徳教科書では、各学年の巻末に47都道府県にゆかりのある偉人とその言葉を紹介しています。戦国武将、勤王の志士や軍人など、子どもたちのロールモデルにはふさわしくない人物が多いのが特徴です。
・戦国武将―伊達政宗、大友宗麟、上杉謙信、武田信玄、織田信長、徳川家康、毛利元成、
前田利家、石田三成、加藤清正、真田幸村
・勤王の志士―吉田松陰、橋本左内、高杉晋作、坂本龍馬、西郷隆盛、大隈重信
 戦国武将は下剋上と戦争・殺戮・略奪にあけくれ、勤王の志士はテロを辞さない人物たちでした。子どもたちに最も伝えなければならない「命の大切さ」とは縁遠い人物たちです。
 
(2)特に西郷隆盛を美化するのも、小学校道徳教科書と同じです。

3年 P.164「徳の交わり~西郷どんと菅はん」補充教材 
そもそも武力討幕のために西郷隆盛が幕府側の庄内藩を挑発したことには触れず、また会津藩には徹底的に攻撃したことにも触れず、西郷隆盛を平和的で寛容な政治家として美化しています。

(3)教育出版の次の教材は“自国中心主義”で、在日外国人の子どもたちへの配慮がまったくない人権侵害教材です。

3年 P.70「外国人から見た日本人」 日本人のすばらしさ。 徳目⑰愛国心
東日本大震災の時の日本人の行動に対する外国人の高い評価―「我慢する精神」「秩序を守る気高い姿」など―を紹介し、最後に「あなたは世界の人たちに胸を張れるどんな人になりたいですか?」と子どもたちに問いかけています。
もともとこの問いかけは「あなたは世界の人たちに胸を張れるどんな日本人になりたいですか?」でした。教育出版は排外主義だと批判されることを恐れてか、「日本人」を「人」に変えましたが、それによってこの教材の自国中心主義・排外主義的な本質が変わるわけではありません。
 そもそも教材のタイトルが「外国人から見た日本人」であり、「日本人の気高さ」を強調したうえで「世界の人に誇れるどんな人になりたいか」と外国籍の子どもに問えば、無言のうちに「立派な日本人になる」ことを求める同調圧力にしかなりません。
教室には外国籍の子どもや外国にルーツをもつ子どもがたくさんいます。そのような子どもたちへの配慮を欠いた日本礼賛の教材を教室で使用することはできません。

(4)福島から避難してきている子どもへの配慮に欠けた教材

3年 P.150「それでも僕は桃を買う」 福島県産の桃を避けるのは差別だと決めつける。
中国籍の子どもが自分が差別された経験に基づき、検査に合格した桃を避けるのは差別だから、自分は「買う」と決意するという話です。福島原子力発電所の事故後の放射能の危険性をどう考えるかはいろいろな意見がありますが、この教材は“絶対安全”という立場で書かれています。全国には福島から避難してきている子どももいます。そのような子どもへの配慮を欠いた教材であり、いじめの原因にもなりかねません。こんな教材を教室で使うことはできません。

3 自己評価をどのようにさせているかも、採択の観点として考慮してください。―「22の徳目」ごとに、子どもに数値で自己評価させる教科書は採択しないでください。

 中学校道徳教科書は8社すべてが子どもに自己評価させています。評価については議論があったものの、文科省は最終的には数値評価はせず、文章表記としました。ところが中学校の学習指導要領・解説では「生徒自身による自己評価」が奨励されているため、日本教科書をはじめとして5社は子どもによる自己評価を数値でさせています。

自己評価のさせ方は、次の3つのパターンに分かれています。

第1のパターン
<日本教科書> 22の徳目ごとに「態度と行動」を4段階で数値評価
<教育出版> 22の徳目ごとに3段階で数値評価
<廣済堂あかつき> 22の徳目ごとに5段階で数値評価

第2のパターン
<東京書籍> 学期の終わりに、一定の観点を4段階で数値評価
<日本文教出版> 教材ごとに一定の観点を5段階で数値評価

第3のパターン
<学校図書> 教材ごと(徳目の観点を含む)に、文章で振り返る。
<光村図書> 徳目ごとではなく、自分の学びを文章で振り返る。
<学研教育みらい> 徳目ごとではなく、心の成長を文章で振り返る。

(1)子どもたちに4段階で「態度と行動」を数値評価させる<日本教科書>。

 日本教科書は各学年の教科書の最後に「心の成長を振り返りましょう」というページを設けて、22の徳目それぞれをどの程度達成できたか、レベル1からレベル4まで「態度や行動」を自己評価させています。
たとえば「愛国心」をどのレベルまで「態度と行動」に現わすことができたかを子どもに問えば、「日の丸」に敬意を表し、「君が代」をしっかり歌うように、目に見える形で表現するように強制することにしかなりません。
さらに日本教科書は「理想の人物はだれか、その人物に何パーセント近づいたか」まで書かせています。特定の人物の特定の側面だけを美化した教材を学習させ、ロールモデルにさせるのは子どもたちの視野をせばめ、一面的な価値観を刷り込むことにしかなりません。

(2)教育出版も「心かがやき度」として、22の徳目ごとに3段階で子どもに数値評価させています。廣済堂あかつきも「自分自身を振り返って」として、22の徳目ごとに子どもに5段階で自己評価させています。

 「道徳には数値評価はなじまない」として、教員による評価は文章表記になったはずです。子どもが自分でやるなら数値評価させてもよいのでしょうか?

4 子どもたちにより良い教科書を採択してください。

 8社の道徳教科書は文科省が定めた「22の徳目」にそって作成されているため、「特定の価値観の刷り込みになるのではないか」という懸念がたびたび報道されています。そのような懸念が現実のものとならないように、より良い教科書を採択してください。

 <日本教科書>と<教育出版>以外の教科書にも、「日本人としての自覚」や「日本人としての誇り」を強調した教材があります。道徳の時間につらい思いをする子どもがいては本末転倒です。

 人類普遍の道徳ともいえる「人権・平和・共生」の観点に基づいて、民主主義社会の主権者を育てるのに最もふさわしい道徳教科書の採択をお願いいたします。