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子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

大阪で教科書問題にとり組む市民運動の交流ブログ

2020年、教科書展示会参考資料(2021年度使用中学校公民教科書)

2020-05-30 08:07:11 | 2020年度中学校教科書採択(大阪)
*あなたが採択してはならないと考える教科書、採択してほしい教科書を、その理由と共にアンケート用紙にはっきり書いてください。
*この資料で取り上げている各教科書の長所・短所以外にも、あなたの視点で教科書を読み、たくさん意見を書いてください。
*意見は何枚でも書けます。できたら一つのテーマで1枚書いてください。
*意見は記名でも無記名でも出せます。
*新型コロナによる人数・時間制限があるかも知れないので、事前に確認してください。


歴史・公民・道徳教科書資料は以下のページからPDFでダウンロードできます。
https://www.data-box.jp/pdir/143f94c7da6443a5b23364d31eff4eb9


◆◆公民教科書◆◆

1 公民教科書を選ぶ視点

①公民学習の目的は、「主権者」としてふさわしい資質を身につけることにあります。日本国憲法の三原則は「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」なので、公民教科書もこれらをきちんと学べるものでなければなりません。しかるに近年、戦前の「大日本帝国憲法」を理想とし、「改憲」を求める保守勢力によって、憲法三原則を事実上否定するような公民教科書が作られ、その他の教科書も影響を受けるようになっています。
日本国憲法は「平和憲法」とも呼ばれ、明治維新以降、アジアの大国を目指して侵略戦争を続けた結果、破滅的な犠牲をもたらしたことへの痛切な反省から生まれたものです。この憲法をないがしろにし、「国防」「義務」を子どもたちに押しつける教科書ではなく、人類普遍の民主主義の原則である「人権・平和・共生」の大切さを伝える公民教科書を選んでください。

②公民学習の中でもっとも大切なのは、「人権」についての学習です。「個人の尊厳」「個人の権利」は、しばしば「わがまま」「利己主義」の根源であるかのようにいわれますが、一人一人が大切にされなければ、「自由」や「平等」は一部の権力を持った人たちだけのものになり、弱い立場の人は「自由」も「平等」も享受できません。すべての人が大切にされる社会のあり方を考える公民教科書を選んでください。

③公民教科書は政治分野の記述に目が行きがちですが、経済分野の記述も重要です。近年、経済の「新自由主義」が盛んになるにつれ、若者の「起業」が奨励され、「もしあなたが経営者になるとしたら」などのテーマで、経済の学習を進める公民教科書が出てきています。しかし子どもたちのほとんどは経営者にはなれず、どこかで雇用される労働者になります。したがって「労働者の権利」「労働法」「社会保障」について学ぶことが非常に重要であるにもかかわらず、以前ほど教科書に記述されていないため、卒業後、無防備なままアルバイトをしたり就職して、不利益を受けても身を守れない状況が生まれています。経済分野がどのような視点で記述されているかにも注目して、公民教科書を選んでください。

2 各社の教科書の特徴

<育鵬社>
1.日本国憲法(p.40~41)
・日本国憲法より大日本帝国憲法を大きく扱う。
 ・日本国憲法はGHQが1週間で作った押しつけ憲法だと強調。しかし、もともと日本政府が作成した原案が大日本帝国憲法とほとんど変わらないものだったので、GHQが急いで作成した。その後、多くの日本の憲法学者がかかわり修正され、今の憲法になった。
 ・「憲法にのっとって国を運営していくことが立憲主義」と説明しているが(p.39)、これは法治主義の説明。他社は「憲法によって国家権力を制限するのが立憲主義」とちゃんと説明。

2.国民主権(p.42~43)
 ・国民主権の説明より天皇の役割の説明ばかり。1ページに天皇の写真が4枚もある。
 ・2011年3月16日の「天皇のお言葉」も掲載(p.14)。

3.基本的人権の尊重(p.46~47)
 ・基本的人権の大切さより、「基本的人権の制限」や「国民の義務」を強調。
 ・曽野綾子氏の言葉「人は一つの国家にきっちりと帰属しないと『人間』にもならない」を掲載(p.11)。これでは国籍のない在日朝鮮人や難民は「人間」ではないことになる。

4.平和主義(p.48~49)
 ・平和主義より、自衛隊の説明ばかり。
 ・第9条の具体的説明はなく、自衛権と自衛隊の重要性を強調。
 ・世界の憲法の「国防の義務」を大きく紹介。「国防の義務」のない日本は異質と言わんばかり。
 ・安倍首相の自衛隊観閲式の写真もある。初めて教科書に「旭日旗」が登場。
 ・「平和主義と防衛」(p.50~51)では、日米安保が「日本防衛の柱」だと沖縄米軍基地の重要
  性を強調。集団的自衛権についても詳しく説明。

5.憲法改正(p.52~53)
 ・「各国の憲法改正回数」の表を載せ、「無改正」の日本は異質であるかのようなイメージを与える。回数の多いドイツと日本の憲法体系の違いを無視して回数を比べても意味がない。ドイツは法律で扱うような具体的なことも憲法に記載するので、改正回数が多くなる。
 ・第9条、第96条など、安倍政権が変えようとしている項目について賛否の討論させる(p.72~73)。安倍政権の9条改憲案(第三項を追加)も議論させ、改憲に誘導。
 ・新聞記事の紹介も「自衛隊明記」をめぐる世論調査記事(p.85)。

6.ディベートは歴代自民党政権のこだわりテーマばかり(p.87)
 ・「子どもの権利条約」(子どものわがままを助長すると、10年以上日本では批准しなかった)。
 ・「国際捕鯨委員会脱退」(クジラ料理は日本の伝統文化と捕鯨にこだわる)。
 ・「特定秘密保護法」(世論の反対を押し切って可決)。
 ・「夫婦別姓」(別姓は家族の一体化を損なうと反対)。
 ・「外国人参政権」(選挙権がほしければ帰化しろと主張。多民族共生を認めない)。

7.「核融合発電」をクリーンエネルギーと紹介(p.177)
 大事故を起こした福島原発は核分裂を利用した原子力発電。「核融合発電」も原発であることに
変わりはない。技術的にも難しく危険性はむしろ大きい。放射性廃棄物も大量に出る。

8.2025年の「大阪万博」を大きく取り上げる(p.198~199)
 安倍政権の推進する「Society5.0」を全面賛美して、「だれもが快適で活力に満ちた質の高い生
 活を送れるようになる」とバラ色の未来を描く。しかし「Society5.0」の要となる「5G」(第5世代移動通信システム)ひとつをとっても、大容量の電磁波が人体に与える影響が心配されている。問題点をいっさい示さず、政権の宣伝パンフレットのような教科書は許されない。

9.「領土問題」を特集(p.188~189)
 ・「北方領土」と「竹島」については、ロシアと韓国の主張も紹介。

10.「国旗・国歌」
 ・「国旗・国歌」への敬意の表し方を細かく記述(p.181)

11.その他
・「従軍慰安婦」の存在を否定するかのように、朝日新聞の謝罪記事を掲載(p.85)。
 ・全体として安倍首相、天皇、自衛隊の写真がたいへん多い。政権への迎合。

*育鵬社公民教科書を作成しているのは八木秀次氏ら安倍政権のブレーンと呼ばれる人たち。日本会議(日本最大の右翼集団)系の学者たちが作成。

<自由社>
1.あまりにも極端な記述が多く、100件を超える検定意見がついた。

2.全体として、内容は育鵬社公民をもっと極端にしたような記述 。
 ・「国民」より「国家」「政治権力」を重視(p.44~45)。
 ・「天皇のお仕事」(p.68~69)。天皇の日常を詳しく説明。
 ・中国など近隣諸国の人権侵害について詳しい(p.186~187)。
 ・「国防」の重要性を強調し、自衛隊の最新兵器を掲載(p.82)。
 ・「海をめぐる国益の衝突」(p.174~175)。周辺諸国との対立・国防の重要性を強調。
 ・「我が国の領土問題」(p.170~171)。竹島について韓国の主張も紹介。

*自由社公民教科書を作成したのは、藤岡信勝氏ら「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」の人たち。もともとは八木秀次氏らと一緒に歴史・公民教科書を作っていたが、今は分裂。
自由社歴史教科書は、あまりにも極端な記述が多く、検定意見が限度を超え不合格になった。

<教育出版>
1.日本国憲法(p.42~43)
 ・女性の人権を定めた第24条の作成に貢献したベアテ・シロタ・ゴードンを紹介。

2.国民主権(p.44~45)
 ・天皇については「象徴」として、政治的な権力行使はないと記述。

3.基本的人権の尊重(p.46~71)。
 ・人々の取り組みによってかちとってきたものをたくさん取り上げている。
  識字、ハンセン病、LGBT(p.52~53)、ヘイトスピーチ(p.55)、死刑囚の再審(p.56)、
  朝日訴訟(p.58)、子ども食堂(p.59)、夜間学級(p.60)、B型肝炎訴訟(p.63)、オスプレイ反対デモ(p.65)。

4.平和主義
 ・第9条を全文紹介(p.72)。
 ・自衛隊にたいしては「憲法違反」という声もあると紹介(p.73)。
 ・コスタリカの憲法がどのように軍隊をなくしたかも紹介(p.75)。
 ・現在の日本の平和を巡る現状と取り組みを考察(p.76~77)。

5.メディアリテラシーとクリティカル・シンキング
 誤った情報に惑わされないための方法(p.94~95)。

6.地方自治でも人々の取り組みを紹介。
 巻原発の住民投票(p.117)、市町村合併(p.120)、外国人の参加(p.121)。

7.経済をわかりやすく記述
 ・導入「もし、すべての給食を一人で作ったら」(p.128~129)。
 ・「安心して働ける社会」(p.145)で外国人労働者の問題も取り上げている。障がい者雇用の企業を紹介。
 ・今回、教育出版は中学生の起業を取り上げたが(p.146~147)、若者がぶつかる労働問題(非正規雇用、低賃金、超過勤務など)をもっと取り上げるべき。

8.社会保障、福祉
「平等」と「公正」をわかりやすいイラストで説明(p.177)

9.領土問題
 「威嚇や武力にうったえることなく、外交交渉によって平和的に解決することが何より重要」と記述(p.197)。

10.国際社会
平和外交(p.198~199)、子どもと女性の人権侵害(p.216~217)

11.エネルギー
 核のゴミのゆくえについて(p.219)

<帝国書院>
1.政治分野は「なぜこれを掲載するのか」と疑問に思うものがある。
・政権への忖度―新聞比べが「自民圧勝」の記事(p.72)。

2.経済の学習が経営者の立場から考えさせるようになっている。
 ・「パン屋を企業しよう」①(p.128)、②(p.130)、③(p.132)、④(p.136)、⑤(p.138)、⑥(p.140)、⑦(p.142)、企業の企画書完成(p.143~144)。労働問題を働く人の基本的人権の保障から考えるのではなく、人手不足など企業側の都合から考えさせている。

<日本文教出版>
1.政権への忖度か?
 ・政党のページは「自民大勝」の写真(p.82)。
 ・内閣のページは安倍首相の写真ばかり(p.92)。

2.領土問題は特集(p.184~185)。
日本政府の見解のみ記述。

3.原発は再稼働を進める政府を肯定的に記述(p.203)。

<東京書籍>
1.エネルギー問題の記述が最悪(p.196~197)。
 福島の復興を強調し、原発事故の影響に苦しむ人についての記述がない。

2.領土問題は特集(p.184~185)
日本政府の見解のみ記述。

3.政治も経済も、まんべんなく書かれているが、特に良い記述はない。わかりやすくもない。



2020年、教科書展示会参考資料(2021年度使用中学校歴史教科書)

2020-05-30 07:49:00 | 2020年度中学校教科書採択(大阪)

*あなたが採択してはならないと考える教科書、採択してほしい教科書を、その理由と共にアンケート用紙にはっきり書いてください。
*この資料で取り上げている各教科書の長所・短所以外にも、あなたの視点で教科書を読み、たくさん意見を書いてください。
*意見は何枚でも書けます。できたら一つのテーマで1枚書いてください。
*意見は記名でも無記名でも出せます。
*新型コロナによる人数・時間制限があるかも知れないので、事前に確認してください。


歴史・公民・道徳教科書資料は以下のページからPDFでダウンロードできます。
https://www.data-box.jp/pdir/143f94c7da6443a5b23364d31eff4eb9


◆◆歴史教科書◆◆


1 歴史教科書を選ぶ視点

①歴史学習の目的は、過去を振り返り、教訓をこれからの社会に活かしていくことにあります。そのためには過去の歴史を美化するのではなく、つらい過去でも向き合い、なぜそんなことになってしまったのかを考える歴史教科書が必要です。特に日本は明治維新以降、侵略戦争と植民地支配によって、多くのアジアの人々を犠牲にしただけでなく、結局は第二次世界大戦に敗れ、日本国民も300万人以上が命を失いました。その結果、二度と戦争をしてはならないという痛切な思いから戦後の平和憲法が作られ、民主教育の重要な要として社会科は位置づけられました。「日本人の誇り」を刷り込み、「愛国心」をふくらませるための歴史教科書ではなく、良かったことも悪かったことも、冷静に伝える教科書を選んでください。

②歴史はしばしば支配者・英雄の活躍物語として語られますが、いつの時代も多くの民衆が社会を支え、少しでも暮らしを良くしようと努力し、時には支配者に抵抗し、社会を変えようとしてきました。歴史を多面的に学習するために、そうした民衆のくらしや活動を、生き生きと伝える教科書を選んでください。

③ところが実際の歴史教科書は、学習指導要領に縛られているため、これらの視点がどんどん軽んじられてきました。時の政権の歴史観を刷り込む道具のような教科書すら出てきています。しかし他方で、本当に大切なことを子どもたちに伝えようと努力している教科書もあります。子どもたちを「戦争」に導く教科書ではなく、「人権・平和・共生」という民主主義の最も大切な価値観を伝える教科書を選んでください。

2 各社の教科書の特徴

<育鵬社>
1.日本の歴史を天皇の統治の歴史として記述(皇国史観)。
(1)神話の扱いが大きい(p.56~57)。神話の神武天皇が天皇の始まりであるかのように記述。神道を日本固有の宗教と記述し、天皇との結びつきを強調(p.44)。
(2)5世紀の古墳時代から「大和朝廷」が存在したかのように記述(p.37)。「朝廷」は律令制度における皇帝を頂点とした政府を指す言葉。日本が律令制度を取り入れたのは8世紀以降。他社は豪族の連合政権として「大和政権」ないし「ヤマト政権」と記述。
(3)聖徳太子を大きく扱う(p.46~47)。「聖徳太子の時代には中国の影響から抜け出そう」と
  していたと真逆の記述。聖徳太子こそ中国の律令制度を取り入れようとした最初の人物。
(4)武士が政権を握った封建制の時代も、幕府がいかに天皇を大切にしていたかを強調。
(5)歴史の締めくくりは昭和天皇と平成天皇の特集(p.282)。年号と天皇と日本の歴史の結びつきも強調(p.282)。

2.日本をすばらしい文化を持った国と過度に礼賛(日本すごい史観、日本中心主義史観)。
(1)エジプトのクフ王のピラミッドや秦の始皇帝陵と比べ、日本も「高度な土木技術をもっていた」と大仙古墳のすごさ(面積)を強調(p.39)。しかしクフ王のピラミッドは大仙古墳より約3000年も前、始皇帝陵は約600年前に作られ、両者とも高度な石組みの建造物。5世紀に作られた大仙古墳は、土を積み上げる技術しかなかったので底面積を大きくした建造物。時代も技術も違うものを比べて、面積の大きさだけで自慢するのは歴史学の非常識。根拠のない「日本すごい」教育は、子どもたちに歪んだ優越感を植えつけるだけ。
(2)外国人に日本をほめさせる(p.208)。シュリーマンが「どんなに貧しい人でも日に一度は公衆浴場に通っている」と書いたのは実態と違う。貧しい人たちは行水で済ませていた。イザベラ・バードが安全に旅行できたのは、西洋人を特別扱いする警察が保護したため。イザベラ・バードは田舎の不潔さなど批判的なこともたくさん書いているが、そういう部分は引用しない。

3.日本の侵略戦争・植民地支配を正当化し、加害の記述がほとんどない。戦争を美しく描く。
(1)韓国併合
・「韓国服の伊藤博文」の写真(p.200)。日本が朝鮮文化を尊重していたとイメージさせる。他社は、韓国皇太子に和服を着せた写真を載せている。どちらが日本の植民地支配の実態を表しているだろうか。
・「韓国併合後の朝鮮の変化」の表(p.201)。米の生産量が増え、学校も増え生活が良くなったとイメージさせる。しかし増えた米は日本に持って行かれ、朝鮮の歴史や朝鮮語の授業が禁止されていったことには触れない。
(2)日中戦争・南京虐殺(p.238)は、日本軍が与えた被害の実態を具体的に書かず、「犠牲者
  数には様々な見解がある」と数の問題にずらしている。
(3)太平洋戦争
  ・太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼ぶ唯一の教科書(p.242)。
  ・「戦時下の暮らし」(p.244)では国民がけなげに耐えたと美化。
  ・「特攻隊」の美化(p.249)。無謀な作戦への批判はない。
  ・沖縄戦の「集団自決」について記述しているが(p.245)、アメリカ軍の攻撃で逃げ場を失ったからのように記述。日本軍による強制については書いていない。
  ・開戦が天皇の関与のもとに決定されたことは書かず、敗戦の受け入れは天皇の英断によるものだったと天皇を美化(p.247)。

4.女性をあくまでも「男性を支える存在」として記述。
「なでしこ日本史」(p.68、p.102、p.154、p.214、p.256)は、女性の活躍を取り上げているように見せて、その実、性別役割分業を前提にしており、女性差別。

5.民衆についてほとんど記述がない。

6.大阪と横浜を特別に大きく扱う。
地域の歴史調べは、大阪6ページ(p.13~18)、横浜4ページ(p.156~159)。育鵬社が
採択されている地域での再度の採択を狙ってのことか。

7.案内役のキャラクターの服装が学生服とセーラー服。
  性的少数者の子どもへの配慮が課題となり、男女の制服の見直しが進んでいるにもかかわらず、相変わらず男子は学生服で女子はセーラー服。

*育鵬社歴史教科書を作成しているのは八木秀次氏ら安倍政権のブレーンと呼ばれる人たち。日本会議(日本最大の右翼集団)系の学者たちが作成。

<帝国書院>
1.各時代の特徴が大きな絵によって示され、わかりやすい(タイムトラベル)。
 縄文時代(p.24)、弥生時代(p.25)、奈良時代(p.34~35)、平安時代(p.48~49)、鎌倉時代(p.58~59)、室町時代(p.80~81)、安土桃山時代(p.102~103)、江戸時代(p.122~123)、明治時代(p.168~169)、大正・昭和初期(p.218~219)、第二次世界大戦時期(p.242~243)、高度経済成長期(p.256~257)。

2.コラム「人権」「平和」などで、歴史の中で埋もれてきた人々を紹介。
 「中世の老人と子ども、女性」(p.83)、「庭園造りで活躍した」(p.91)、「差別された人々」(p.125)、「渋染一揆」(p.163)、「差別された人々を描いた文学」(p.206)、「朝鮮との懸け橋となった日本人」(p.217)、「芸術に込めた反戦の意志」(p.235)、「在日韓国・朝鮮人」(p.265)、「男女共同参画社会へ」(p.273)、「言論の自由の回復と戦争へのまなざし」(p.275)、「日本における先住民族」(p.281)。

3.「歴史を探ろう」で「人権」や「平和」について特集。
 「琉球とアイヌの人々の暮らし」(p.120~121)、「長野県から見る満州移民」(p.240~241)、「戦場となった沖縄」(p.250~251)など。しかし、「日本の領土確定と近隣諸国」(p.266~267)は、日本政府の見解を一方的に載せ、相手国の主張を紹介していない。これでは子どもに相手国への反感を持たせることにしかならない。

4.加害についてきちんと記述。
(1)韓国併合
 ・和服を着た韓国皇太子の写真と韓国服を着た伊藤博文の写真を並べ、比べられるようになっている(p.196)。本文の説明は良いが、写真説明は良くない。
 ・韓国併合を誇る初代朝鮮総督の寺内正毅の短歌と、韓国の人々に心を寄せる石川啄木の短歌の両方を紹介(p.196)。
 ・インドのネルー首相が日本のアジア解放論のまやかしを批判(p.197)。
(2)太平洋戦争
 日本の東南アジア侵略の目的と実態を批判する戦後のインドネシアの教科書(p.247)。

5.歴史的な出来事に対する人々の様々なとらえ方を紹介。
琉球処分を巡る論争(p.180)、日露戦争をめぐる論争(p.195)、与謝野晶子、平塚らいちょ
う、山川菊枝ら3人の母性保護論争(p.230~231)、ナチスのユダヤ人弾圧に対する民衆の
のとらえ方(p.234)、満州の日本人少年の中国のとらえ方(p.239)、日本人の敗戦の受けと
め(p.252)、原爆で亡くなった少女の日記(p.253)。

<学び舎>
1.各章のテーマが関心を引き、象徴的な出来事から掘り下げて学ぶことができる。
 「ゆれる東アジアの中で」(p.38)、「境界に生きる人々」(p.72)、「アジアの海をつなぐ王国」(p.80)、「村に入ってきた秀吉」(p.96)、「バスチーユを攻撃せよ」(p.140)、「大政奉還のゆくえ」(p.156)、「土地を奪われた朝鮮の農民」(p.192)、「始まりは女一揆」(p.204)、「問答無用、撃て」(p.222)、「戦争と二人の少女」(p.230)、「走れ、ぞう列車」(p.252)、「南北に引き裂かれる」(p.252)、「ゴジラの怒り、サダコの願い」(p.258)、「豊かさとその代償」(p.262)、「基地の中の沖縄」(p.266)など。

2.民衆の視点から歴史が生き生きと語られている。
 「家族と別れる防人の歌」(p.42)、「荘園の人々」(p.60)、「おどる聖と念仏札」(p.64~65)、「地頭が村にやってきた」(p.66)、「岩に刻んだ勝利」(p.76)、「僧が見た朝鮮の民衆」(p.98)、
 「武士のいない村」(p.108)、「綿花と底抜けタンゴ」(p.110)、「裏長屋に住む棒手振り」(p.120)、「地鳴り山鳴り、のぼりを立て」(p.122)、「工場で働く子どもたち」(p.142)、
 「生糸と鉄」(p.194)、「独立マンセー」(p.202)、「赤紙が来た」(p.232)など。

3.掘り下げて考え、討論する特集があり、思考力を養うことができる。
 「『学問のすゝめ』をどう読むか」(p.178)。

4.加害も被害も具体的に記述。
 「戦火は上海、南京、重慶へ」(P.224)、「東南アジアの日本軍」(p.228)、「餓死、玉砕、特攻隊」(p.234)、「町は火の海」(p.236)、「荒れ狂う鉄の暴風」(p.238)、「にんげんを返せ」(p.240)など。

5.日本軍「慰安婦」についても記述。
 「問い直される戦後」(p.270)の中で、金学順さんの証言、河野談話について記述。

<教育出版><日本文教出版><東京書籍>
この3社は、内容の程度、わかりやすさ、人権や加害の記述において、大きな差はない。
<教育出版>(p.268~269)、<日本文教>(p.292~293)
この2社は、領土問題を特集。日本政府の見解を一方的に載せている。

<東京書籍>
「従軍慰安婦」という言葉はないが、それを説明した記述はある(p.237)。

<山川出版>
今回初めて中学校歴史教科書を発行。高校日本史Bを少し簡単にした感じで、本文、資料ともに非常に詳しい。オーソドックスな記述で受験向けとも言えるが、こなしきれるかという心配はある。「従軍慰安婦」を記述したのは画期的(p.247)。しかし沖縄戦については「集団自決」の記述がなく(p.248)、現在、沖縄の市民団体から「来年の春、子どもたちに手渡すまでに記述すべきだ」という修正要求が出されている。


大阪府内の教科書展示会場一覧表

2020-05-23 08:51:50 | 2020年度中学校教科書採択(大阪)
2020年、中学校教科書採択に関して、大阪での教科書展示会の日程一覧表が公表されました。
6月に入ると各地で教科書展示会が始まります。
新型コロナ感染に気をつけながら、展示会に行ってください。

詳しくは、大阪府HPへ
http://www.pref.osaka.lg.jp/shochugakko/kyoukasyosenta/index.html





大阪市での教科書採択方針決定前に、質問書を提出しました!

2020-05-18 19:26:53 | 2020年度中学校教科書採択(大阪)
大阪市では、新型コロナ対策を理由にして4月は一度も教育委員会議が開かれておらず、5月下旬まで開かれません。
大阪市の教科書採択方針は、この5月下旬の教育委員会議に提案されることが想定されます。

大阪市教委は、2月25日(火)、3月30日(火)の教育委員会議で、昨年の小学校採択の課題と今後の方針について「非公開」で協議しています。

しかし、この2回の教育委員会議でどのような課題を認識し、それをどのように変えていこうとしているのか全く「非公開」です。
このままでは、5月下旬の教育委員会議に、すでに非公開で審議された方針案が提案され、粛々と決定していく可能性が高いと思われます。

そこで、私たちは、教育委員会議の前に、昨年度の教科書採択の問題点を明らかにし、改善をもとめる質問書を早急にまとめました。
本日、大阪市教委に提出しました。

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公正性と透明性の高い中学校教科書採択制度を求める質問書(2)

子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

 2020年1月6日、私たちは昨年度の小学校採択経過の分析を通じて明らかとなった課題について要望・質問書と提出しました。2月20日、貴教育委員会から「教科書採択についての要望について(回答)」(以下、「2.20市教委回答」)が届きましたが、具体的な内容の乏しいものでした。その後、2月25日(火)、3月30日(火)の教育委員会議で、教科書採択の課題について「非公開」で協議されています。そして、5月下旬の教育委員会議で、今年度の教科書採択方針が決定されようとしています。しかし、これまでの審議全てが「非公開」で行われており、昨年の小学校採択過程のどこに課題があったのか、そもそも何を検討してきたのか、全く明らかになっていません。私たちが要望した内容を踏まえて教育委員会議で活発な議論が行われるか、大変危惧しています。
 私たちは、5月下旬の教育委員会議に向けて、再度質問書を提出します。採択方針を決定する教育委員会議では、私たちの質問に答えることも含めて、十分時間を取って審議して頂きますようお願いします。あわせて、コロナ禍で大変な時期ではありますが、採択の透明性と公正性を確保するために6月8日(月)までに文書回答と協議の場の設定を求めます。

質問事項

1.地区調査会代表の選出方法について

(1)「2.20市教委回答」では、地区調査会代表は、「区担当教育次長の中から、採択地区ごとに1名ずつ教育長が指名」するとありました。
 地区調査会代表は、教育次長であると同時に区長でもあります。区長の選任は、市長が公募で選ぶだけで議会承認は必要ありません。従って、区長は市長の政治的な影響を強く受ける役職となっています。
 教育長はどのような基準で地区調査会代表を指名するのか、教育委員会議での承認は受けるのか、明確にしてください。

(2)地区調査会の代表が区長である以上、区長が教科書採択へ政治介入していないかどうか、厳しくチェックされなければなりません。地区調査会の代表を選ぶときには、教科書会社、特定の教科書を推奨する団体の関係者、教育再生首長会議との関係性についても調査する予定でしょうか。

(3)区長が地区調査会代表として、教科書採択で政治介入を行う疑念を払拭するためにも、地区調査会代表は、決まり次第、公表すべきと考えますが、見解を聞かせてください。

(4)具体的には、昨年度の小学校採択について第3地区の地区調査会代表となった吉田康人大正区長は、自身のブログ「やすとログ」(2011年1月16日)の中で、育鵬社教科書を育鵬社と協同して作成・宣伝・採択活動を行っている日本教育再生機構大阪北地域支部長会議に参加し、「今後も、日本教育再生機構でがんばっていきます」とコメントしています。今年度の中学校採択において、吉田区長を第3地区調査会代表に指名するのであれば、上記の関係がどうなっているか確認し、公表すべきと考えますが、見解を聞かせてください。


2.地区調査会の役割について

(1)「2.20市教委回答」では、「地区調査会は会議体ではなく、各採択地区内の専門調査会と学校調査会における調査研究を執りまとめ、教科用図書選定委員会に報告することが主たる役割となります。」とありました。しかし、昨年度の小学校採択では、2019年7月4日の教科用図書選定委員会(以下、「選定委員会」)において、地区調査会代表が、「優位性」のある教科書を数社、報告しています。事実上、地区調査会について数社への絞り込みが行われました。
 しかし、地区調査会は「会議体」ではありません。調査会報告書も各社の差異がほとんどなく、「優位性」のある教科書を読み取ることは難しくなっています。地区調査会がどのようにして「優位性」のある数社を選んだのか、明らかではありません。私たちは、地区調査会は、恣意的な絞り込みの疑念が生じないように、学校調査や専門調査結果を数値化等して、誰の目にも「優位性」が明らかになるものにすべきと考えますが、見解を聞かせてください。また、地区調査会の会議禄を公開してください。

(2)2019年度の第15回教育委員会議(7月30日)で、事務局は「2社の中でもさらに優位性があるものについては、選定委員会での議論を踏まえた上で、各地区調査会における議論の中で優位性が認められたもの、または地区調査会代表と地区担当指導主事による再度の協議により優位性が認められたもの」と説明しています。1社への絞り込みが、「地区調査会代表と地区担当指導主事による再度の協議」によって行われていることを表明したものです。これは、「2.20市教委回答」で明らかにされた地区調査会の「役割」を超えるだけでなく、地区調査会代表に絶大な権限を与えるものとなっています。「地区調査会代表と地区担当指導主事による再度の協議」は、恣意的絞り込みの余地を排除しておらず、採択の透明性・公正性の観点から重大な問題です。
 私たちは、「地区調査会代表と地区担当指導主事による再度の協議」を廃止し、地区調査会で学校調査、専門調査に基づいた絞り込みを行うべきと考えますが、見解を聞かせてください。
 

3.学校意見の集約方法と活用について

(1)学校意見について「2.20市教委回答」は、「『本校にとって特に優れている点』『本校にとって特に工夫・配慮を要する点』について1校につき1つまで選択できるようにしました」としています。上記の地区調査会で客観的な資料に基づく絞り込みを行うためには、「1校につき1つまで」の条件を取り払い、学校調査において複数選択できるようにすべきと考えますが、見解を聞かせてください。


4.「定量的調査資料」について

(1)2019年度第2回選定委員会(7月4日)に「定量的調査資料」が提出されています。「定量的調査資料」にある「調査項目」の設定によって、教科書の特徴、評価は大きく変わります。従って恣意的な「調査項目」の設定は許されません。
 「定量的調査資料」について「2.20市教委回答」は、「客観的な資料として質疑が想定される項目」について、「専門調査会が作成」したとしました。また、大阪府教委の「選定資料」も「参考」にしたとしましたが、大阪市独自の項目も多数認められました。しかし、「定量的調査資料」の「調査項目」の決め方が、全く公開されていません。
 私たちは、「質疑が想定される項目」をどのようにして設定したのか、決定に至る過程を公開すべきと考えますが、見解を聞かせてください。


5.新型コロナウイルス感染対策と教科書採択の透明性について

(1)5月12日、文科省は「新型コロナウイルス感染症対策に伴う令和3年度使用教科書の採択事務処理の運用等について」を出しています。採択に関わる教育委員会議は、新型コロナ対策をした上で最大限の傍聴を保障することが必要です。どのような対策と配慮を取ろうと考えていますか。

(2)教員が安全に調査研究できる体制を保障することも必要です。例年以上に学校調査の時間を確保するなど、感染対策をした上での十分な学校調査を行うための配慮について、どのように考えていますか。

(3)教科書展示会も、感染症対策を十分した上で、「広く地域住民の方々が展示会に参加できるように工夫すること」(上記、文科省通知)がもとめられます。どのような「工夫」をしようと考えていますか。


6.教科書採択の透明性を高める取り組みについて

(1)2015年中学校採択、教科書アンケート不正疑惑に対して、大阪市外部監察チームは、非公開の教育委員協議会で実質審議を行い「事実上内定」し、さらにその結論のみを市民に公開するため教育委員会議の細かいシナリオまで作っていたことを明らかにしました。「報告書」は、「結語」で「今後は、特に教科書採択に関する手続きについては、より一層丁寧かつ詳細な情報提供を行うことが望まれる。そして、そのような情報提供としては、単に法令上要求される範囲や、適法性を左右する情報だけに限ることなく、「第6」(高尾委員の疑惑)に検討したような関連事情も含めて、より幅広い事項について行うことが適切である」と指摘しました。その後、非公開の教委育委員協議会は廃止され、教育長も教育委員会議の場での「オープンな議論」を何度も表明していました。しかし、教科書採択に関する議論は、教育委員会議での「協議題」と位置づけられ、非公開となったままです。事実上、教育委員協議会が教育委員会議の中に吸収されただけで、非公開審議は変わっていません。今年も、2月25日(火)、3月30日(火)に行われた教育委員会議での「教科用図書の採択について」の審議が非公開です。これでは、大阪市外部監察チームの指摘をないがしろにしていると言わざるを得ません。
 貴教委は、大阪市外部監察チーム「報告書(結語)」で指摘された内容をどのように受け止めているのか、これまで「協議題」として非公開としていた教科書採択に関わる審議を公開の場でする予定はあるのか、明らかにしてください。

(2)2018年中学校道徳採択での選定委員会議事録は、発言した選定委員の名前が発言内容と共に公開されています(私たちが確認した範囲では、2015年採択以降2018年まで発言者は公開)。しかし、2019年小学校採択においては、選定委員会議事録から全ての発言者名が削除されています。これは採択の透明性の観点から極めて重大な後退です。なぜ、2019年度議事録から発言者を削除したのか具体的に明らかにしてください。
                                         以上 



大阪府内の全ての市町村教委に「2021年度使用中学校教科書の採択に関する要望書と公開質問状」を提出

2020-05-10 17:52:31 | 2020年度中学校教科書採択(大阪)
今年の中学校採択は、未曾有のコロナ感染というこれまでにない条件のもとで行われます。
大阪市教育委員会議は、4月は一度も開かれず、5月も26日頃まで開かれません。
どのように教科書採択方針が決められようとしているのか、
コロナ感染に配慮した上で、透明性の高い採択をどのように行おうとしているのか、
まだ明らかではありません。

大阪の会では、採択の年の5月上旬には、大阪府内の全ての市町村教委に採択制度の民主化と透明化を求めて要望書と公開質問書をだしています。今年は、それにコロナ対策も加えて要望と質問を入れています。

以下、要望書と公開質問書です。

2021年度使用中学校教科書の採択に関する要望書と公開質問状


子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会

 貴教育委員会の教育への日頃のご尽力に敬意を表します。
 さて2021年度から使用される中学校教科書の採択に向けて、貴教育委員会も準備作業を進めておられることと存じます。今年の中学校教科書採択は、新学習指導要領に基づいて初めて行われるものです。どの教科も文科省の検定が強化され、政府の見解を教科書に反映させる姿勢が社会科や道徳科で一層強まっています。
 また、今年の採択は新型コロナウイルス感染が蔓延している中で行われており、例年のような採択事務が滞りなく実施されるのか、懸念されます。
 私たちは、日本国憲法に体現される基本的人権、平和、民主主義、そして近隣諸国との友好関係を深める観点から、公正かつ民主的な手続きで教科書採択が行われるよう貴教育委員会に要望するとともに、以下の公開質問への回答をお願いいたします。なお、貴教育委員会からの回答は公表を予定しています。ご多忙と思いますが、回答を5月末日までにお願いします。

【要望書】

1.採択関係者が「利害関係者」でないことを厳密にチェックしてください。
 教育委員、選定委員、調査員については、「利害関係者」でないことを、事前に厳格にチェックしてください。昨年の小学校道徳採択から、大阪市では教育委員からも「利害関係者ではない」ことを宣誓する「誓約書」の提出を義務づけました。貴教委でも大阪市と同様に教育委員からも「誓約書」を義務づけてください。
 
2.人権、平和、共生など日本国憲法の精神を尊重した調査研究と採択を行ってください。
 貴教育委員会が作成する「教科書を調査研究する観点」には、従来から「人権の取り扱い」が項目に含まれています。大阪には、問題や在日外国人問題、障がい者問題などさまざまな人権に関わる問題があり、教育課題としても積極的に取り上げられてきたところです。道徳の教科書採択に当たっても、人権、平和、共生など日本国憲法の精神を重視する観点から調査研究をおこない、そのような観点から評価の高い教科書を採択してください。

3.偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を調査の観点に入れないでください。
 教育基本法には、「愛国心」に繋がる目標がありますが、そこには「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が同時に明記され、偏狭なナショナリズムに陥ることがないように求めています。  しかし、小学校教科書検定結果を見れば、「日本美化」「日本人はすばらしい」と言った内容がことさら強調されている教科書があります。これらは偏狭なナショナリズムにつながっていくものです。調査の観点に偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を採択基準に入れないでください。

4.「考え,議論する道徳」を重視する調査の観点を設定してください。
 新学習指導要領では、「考え、議論する道徳」が強調されています。しかし、教科書の中には、教材の前後に「学ばせたい徳目」に誘導する設問を設けて、子どもたちの学びを特定の価値観に誘導しようとするものがあります。子どもたちは、自由に発想し、幅広く考え、意見交換する中で自分の考えを深めていきます。自由な発想は、「考え、議論する道徳」の基になるものです。特定の価値観に誘導する教科書はそれらに逆行しています。
 
5.採択にあたっては子どもの実態をもっともよく知る教員の意見を尊重してください。
 ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」には、「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。」と明記されています。「教員の意見を尊重した採択」は、国際基準です。従って、教員が調査員をつとめる「調査員報告」や「学校意見」を集約する形で選定委員会「答申」を作成し、それに基づいて採択してください。

6.新型コロナ感染防止に配慮した、透明性の高い採択をもとめます。
(1)採択に関わる教育委員会議は、コロナ対策をした上で最大限の傍聴を保障してください。感染対策上、傍聴者を制限する場合は、別室でのサテライト傍聴を実現してください。

(2)教員が安全に調査できるように、例年以上に学校調査の時間を確保してください。

(3)文科省の通知によれば、教科書展示会は「一般公開を通じて、地域住民等の多くの方々に教科書に触れていただくための取り組み」として、「教科書展示会の開催に係る経費は地方交付税で措置されて」おり、「広く地域住民の方々が展示会に参加できるよう工夫すること」が求められています。しかし、現在、図書館などの公共施設が閉鎖され、教科書展示会の開催が危ぶまれる状況です。貴教育委員会では、例年以上に「広く地域住民等が展示会に参加できるような工夫」と配慮を行い、「法定展示」「法定外展示」を実施してください。

(4)新型コロナ感染対策等により、採択手続きを変更する場合は、十分時間をとって市民に周知するようにしてください。

7.教科書採択過程を市民に公開してください。
 教科書採択に関わる資料は、公文書として所有した段階で速やかに公開してください。特に教育委員会議、選定委員会の開催日と議題を事前に市民に周知し、傍聴の条件と機会を拡大してください。配付資料はその都度公開してください。教育委員会議、選定委員会の議事録を作成し、速やかに公開してください。
 教科書採択には市民の関心が高く、また教科書会社も傍聴に来ることから傍聴人数を制限している場合、市民が傍聴できないという事態が起こります。そういうことがないよう、傍聴希望者全員が入れる配慮をお願いします。
                                           
以上

【公開質問状】

1.貴教育委員会の採択手続き(コロナ感染対策を含む)は、昨年の小学校採択から変更がありますか。ある場合は、どのような変更か教えてください。
   ①ある    
   ②ない

2.貴教育委員会の「採択基準」「調査の観点」には、「愛国心」を醸成する項目を入れる予定でしょうか。
   ①「愛国心」の観点を入れる予定がある。
   ②「愛国心」の観点を入れる予定はない。

3.調査員の構成について
   ①現場教員を任命している。校長・教頭・指導主事は含まない。
   ②できるだけ現場教員を任命しているが、校長・教頭・指導主事も含む。
   ③現場教員はいない。
   ④その他(                     )

4.教科書の調査研究に各学校・教員はどのように関わっていますか。
   ①学校意見を集約している。           
   ②教員の意見を集約している。
   ③教員研究会の意見を集約している。
   ④意見集約を行っていない。

5.選定委員会「答申」や「調査員報告書」はどのような形式で作成されるのでしょうか。
   ①各社の長所と短所を記述している。
   ②各社の特長(すぐれた点)をまとめている。
   ③その他(                        )

6.選定委員会の「答申」はどのような方法で行う予定ですか。
   ①順位付けをして答申する。
   ②何社かに絞り込んで答申する。
   ③全社の長所と短所を文書表記して答申する。
   ④全社の特長(すぐれた点)を文書表記して答申する。
   ⑤その他(                      )

7.採択において選定委員会「答申」を重視しているのかどうか、その位置づけを教えてください。
   ①選定委員会「答申」を重視する。
   ②選定委員会「答申」を参考にする。
   ③選定委員会「答申」には一切左右されない。

8.教育委員会議では、どのような方法で採択をする予定ですか。
   ①話し合いによって全員一致で採択する。
   ②記名投票(挙手)で採択する。
   ③無記名投票で採択する。

9.選定委員会の会議録作成について教えてください。
   ①議事録を作成している。
   ②審議のおおまかなメモを作成している。
   ③議事録は作成しない。

10.選定委員会「答申」の公開はいつの時点ですか?
   ①「答申」ができた時点で公開請求があれば公開する。
   ②「答申」は採択日以降に公開する。

11.教育委員協議会(名称は教育委員会によって違う場合がある)は秘密会としておこなわれています。採択過程の透明性の確保の観点から、協議会も議事録を作成すべきだと考えますが、どのようにされていますか。
   ①協議会の議事録は作成している。
   ②協議会の議事録はないがメモは作成している。
   ③協議会の議事録もメモも作成していない。
   ④協議会のような会議は行っていない。

12.採択の教育委員会議で傍聴者が定員を超えた場合、どのように対応されていますか?
   ①できるだけ全員が傍聴できるように配慮している。
   ②傍聴希望者で抽選を行い、定員内の傍聴としている。
   ③その他の対応(                     )

13.傍聴者に配布した資料の取扱いについてどのようにされていますか?
   ①配布資料は回収している。
   ②配布資料は回収していない。
   ③傍聴者には資料を配付していない。

14.情報公開請求に対して、市民アンケート(教科書アンケート)は公開されていますか。
   ①名前、住所を含めて全て公開している。
   ②名前、住所以外は全て公開している。
   ③名前、住所以外にも非公開部分があり、部分公開としている。
   ④公開していない。

15.今年度の中学校採択に関して、貴市の市長、教育長、教育委員に対して、教科書会社やその関係者、政治家、教育再生首長会議関係者、モラロジー研究会などから何らかの接触・働きかけ・資料送付等ありましたか?

以上