tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

10分でわかる万葉講座(奈良ロータリークラブ卓話)

2020年09月28日 | 万葉集
9月17日(木)、奈良ロータリークラブ様からお招きいただき、奈良ホテルで開催された2020年度第10回例会で、卓話をさせていただいた。「30分でわかる万葉集」というタイトルだったが、うち20分はVTR(昨年実施した「JR万葉まほろばウォーク」の模様)を見ていただいたので、私の出番はわずか10分。しかしパワポ資料を配布すれば10分でも結構中身をお伝えできるな、というのが実感だった。

このたびその10分の話をテープ起こしして、会報紙(9/24付)にきれいにまとめてくださった。以下、会報紙から抜粋して当日の内容を紹介する。なおパワポ資料は奈良まほろばソムリエの会・米谷潔さんがお作りになったものをアップデートした。米谷さんは当会で最も万葉集に詳しい人である。VTRでは当会のベテランガイド・安井永さんのガイドぶりを見ていただいた。安井さんは、奈良のガイド名人を決める「Nara観光コンシェルジュアワード」で、最優秀賞に輝いている。

JR万葉まほろばウォーク 20分ダイジェスト版(山の辺の道編)

ただ今ご紹介いただきました、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」専務理事の鉄田憲男と申します。おかげさまで、当会は来年で10周年を迎えます。メンバーも420人に増えました。発足した時、当時の小北会長がこちらの卓話に呼んでいただきましたが、当時の会員数は153人でしたので、あっという間に3倍に増えたことになります。

私は一旦退職いたしましたが、定年延長制度で今も南都銀行に籍があり、地域事業創造部で週に2日勤務しています。同じ部には松山会長様のご子息がいらっしゃいます。不思議なご縁に感謝しています。日々、奈良の観光振興を考えながら、週5日はソムリエの会、週2日は銀行で、同じテーマで活動しています。

先ほど会長様から「奈良の歴史、文化、食をこれからアピールしていきたい」ということでしたが、歴史も文化も食も、すべて私の得意分野ですので、何か協力させていただきたいと思っております。

今日は「30分でわかる万葉集」というタイトルをつけました。万葉集は昨年、新元号「令和」がスタートした時、令和という言葉が万葉集の詞書(ことばがき)から採られたことから、万葉集がブームになりました。そのブームは今も続いており、奈良まほろばソムリエの会では、来年2月末をメドに『奈良万葉の旅百首』という新書本の出版を計画しています。「県内の万葉集ゆかりの地に携えていただけるガイドブック」、というのが本のコンセプトです。



最初の10分で万葉集のあらましを説明いたします。残りの20分で、ソムリエの会が昨年実施いたしました「JR万葉まほろばウォーク」のVTRを見ていただきます。皆さまが実際に山の辺の道を歩き、万葉歌碑を巡っているようなバーチャル体験ができるように、と思って作ったVTRです。ロータリークラブ様は来年、子供さん向けに山の辺の道を歩くツアーを企画されているとお聞きしましたので、ちょうど良いかなと思って、このVTRを用意いたしました。

JR万葉まほろばウォークは、昨年12月7日(土)に実施いたしました。JR西日本の桜井線、つまり万葉まほろば線の新型車両4両編成をチャーターしました。JR奈良駅から巻向駅まで乗りまして、車内では柿の葉寿司のお弁当を食べていただきながら、車掌のマイクを使って「万葉ミニ万葉講座」を聞いていただきました。巻向駅からは山の辺の道を歩いて大神神社をめざしました。おかげさまで126人もの方にご参加いただきました。

あと各テーブルの上に、チラシを置かせていただきました。これは今年の「日本書紀編纂1300年」を記念して、ソムリエの会が行うウォーキングツアー「歩く・見る・学ぶ!『日本書紀』物語2020」のチラシです。本年10月~12月の間に月1回、飛鳥、橿原、桜井の3コースのツアーを行います。ツアーのスタート前には、約1時間の講演を聞いていただき、予習してから現地を訪ねるという仕掛けです。ちょうど昨日から募集を開始いたしましたので、よろしければぜひ、お申込みをお願いいたします。



前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。万葉集は現存最古・日本で最も古い歌集です。しかもドナルド・キーン氏によると「日本で最高の歌集」です。つまり日本最古・最高の歌集が万葉集です。「万」は数が多いということです。「葉」は「世」、つまり千年後万年後も世の中に伝わるべき歌集ということ、あるいは「葉」は「歌」、つまりたくさんの歌を載せた歌集ということ、の2つの解釈があります。

大伴家持が詠んだ「新(あらた)しき年の始の初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)」はご存じと思います。よく年賀状にも使われ、私も毎年3~5枚ほどはこの歌の載った年賀状をいただきます。今は太陽暦ですが、当時は太陰太陽暦でした。この年は太陽暦の元旦と太陰暦の立春が重なりました。それだけでもめでたいのに、豊作の予兆とされる雪が降ってきた、めでたしめでたし、という歌です。



さて全国の都道府県でも、一番万葉集に関わりの深いのが奈良県です。万葉集に登場する地名は延べ約2900あり、そのうち約3分の1の延べ約900が奈良県の地名です。これはダントツなのです。ですので犬養孝氏の名著『万葉の旅』は上中下の3巻ありますが、上巻はすべて大和です。



万葉集の詠み手は、上は天皇、下は防人や遊女。約500人の歌人(うち約100人が女性)が歌を詠んでいます。のちの古今集や新古今集はほとんどが貴族や公家の歌ですが、万葉集はこのようにいろんな詠み手がいてバラエティー豊か、そこに面白みがあるのです。



万葉集で一番よく歌われている動物は「ほととぎす」です。今も「目には青葉山ほととぎす初鰹」と言いますが、春を告げる代表的な鳥のほととぎすが1番です。2番目が馬。馬は今で言ったら車で、身近な存在でしたので、たくさん詠まれています。

植物では萩が一番多く、140首あります。次が梅です。萩は花が小さいので今はあまり注目されませんが昔は萩が秋を代表する植物としてたくさん詠まれています。

最後に載せましたのは、柿本人麻呂歌集に出てくる歌です。「敷島の日本(やまと)の国は言霊(ことだま)のたすくる国ぞま幸(ささ)くありこそ」。大和の国は言霊、言葉の魂が助ける国、ぜひ無事であってほしい。日本には古来、言霊という考え方がありました。不吉なことを口にすると本当に悪いことが起こるので言うな、と。だから日本ではブラックユーモアが流行りません。

「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮(しほ)もかなひぬ今は漕ぎ出(い)でな」(①8)これは額田王の有名な歌で、「熟田津で船出しようと月を待っていると、潮の流れもちょうど良くなった。さあ今こそ漕ぎ出そう」という意味ですが、単なる叙景ではなく、このような歌を詠むことで、その言葉の力で潮を引き寄せよう、という思いが込められていると言われます。このように万葉集の歌はいろんな解釈ができる大変面白い歌集ですので、皆様も機会があればお目通しいただければ、と思います。

※ここから20分はVTR上映(昨年実施された「JR万葉まほろばウォーク」の様子。ガイドは当会の安井永さん)。
これで私の卓話を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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