tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良ビブレ跡地、マンションに。ホテル断念!(2013Topic)

2013年02月20日 | お知らせ
やっぱりというか残念というか、奈良ビブレの跡地、マンションになるそうだ。今日(2/20)の新聞各紙が報じている。産経新聞奈良版(2/20付)「奈良ビブレ跡地 マンションに 不動産会社 店舗設置は必須条件」によると、

近鉄奈良駅(奈良市)近くで1月に閉店した商業施設「奈良ビブレ」の跡地利用問題で、土地・建物を所有する不動産会社「浅川ハーベストビル」(同市)は19日、マンション建設を前提に、開発事業者に土地を売却すると発表した。マンションには一部店舗も入居するという。現在の建物は取り壊され、マンションは平成27年春のオープンを目指す。

同社の浅川哲弥社長によると、当初は跡地利用としてホテル建設構想も浮上したが、建物への市の高さ規制が壁となり断念。昨年9月の土地取得以前から、市や市議会に規制の見直しを働きかけたが、実現しなかったという。浅川社長は「商店街の活性化には、商業施設を残したマンションが現実的な選択」と説明した。浅川社長は、まだ土地の売却契約が済んでいないことを理由に、売却先の開発事業者を明らかにしなかった。

同社によると、マンションは分譲。奈良ビブレ跡地の東側の小西さくら通り商店街に面した側の、少なくとも1~2階には商業店舗が入居する予定。業種は未定で、今後の計画次第では店舗部分が拡大される可能性もあるという。開発事業者との契約が成立後、2月末から約半年かけて現在の建物は解体。マンションは8月末の着工を目指す。

小西さくら通り商店街は、観光客向けの土産店や地元住民向けの食料品店などが混在する形で発展してきたが、近年は郊外への大型商業施設進出などで苦戦。市などの通行量調査によると、昭和55年時点と比較して歩行者などの通行量は約4割減少。周辺の商店街でも、商店の跡地へのマンション建設が進んでいる。商店街の空洞化への懸念について、浅川社長は「商店街の形成が保てないマンションでは意味がない。店舗設置は必ずの条件で、魅力ある店舗が入ることを期待する」と話している。


建物への高さ制限については《昨年9月の土地取得以前から、市や市議会に規制の見直しを働きかけたが、実現しなかった》とあるが、こんなところに高い建物が建ってしまっては、景観を著しく害することは明白だ。景観は奈良の大切な観光資源である。それを損なっては「観光都市・奈良」の名前が泣く。

読売新聞奈良版(2/20付)でも《市が景観を守るために定めた20メートルとする高さ制限が、より高いビルを建てて客室を多くしたいホテル側の思惑と合わず、ホテルの誘致を断念したとしている》《建物と土地を購入した「浅川ハーベストビル」の浅川哲弥社長(53)によると、土地取得に動き始めた3年前からホテルの誘致を目指して高さ規制の緩和を市などに求めてきたが、実現しなかった。浅川社長は「奈良市中心部の一等地が、商業施設やホテルにとっていまや魅力のない場所になっている。奈良を活性化するために何が必要なのかを行政に問いかけたい」と話した》。井岡正浩理事長(小西通商店街振興組合)も《「今後は高さ規制の緩和も含めてここをどうしていくのか商店主、行政、市民が一緒に考えていかなければならない」》と話している。

何だか「20mの高さ制限がある(行政が解除してくれない)→高いホテルが建てられない→だから奈良が活性化しない」という三題噺にしたいようだが、これはおかしい。そもそも、良好な景観があってこその観光都市・奈良なのだ。景観を害し、奈良の魅力をブチこわしてしまっては、観光客の訪れようもない。

私が奈良に住み始めて30年以上になるが、この間に住吉旅館、都ホテルなど三条通りの旅館、ならや、あぶらや旅館、好生館、猿沢ホテル、奈良ホテル別館(近鉄奈良駅ビル)、旅館大文字、魚佐旅館などが閉館した。著名な日吉館、大和山荘、聖都、ドリームランドホテル、三笠温泉郷の旅館、高円山上の宿泊施設なども閉館し、共済会館やまとなど公営の宿泊施設も減っている。1~2年に1館の割合で閉館しているのである。しかも、新しいホテルの誘致は難航している。これは高さ制限を行政が解除してくれないというレベルの問題ではなく、奈良の宿泊観光が抱える「構造的問題」なのである。ここにメスを入れなければ、宿泊施設は減りこそすれ、増えることはない。

ビブレがマンションになることが決まった今となっては、1階と2階にできる「店舗」に期待するしかない。東向商店街の「ふる里」は閉店し、今もシャッターが閉まったままである。東向と小西にあった老舗「寿し常」は業態転換した。東向の無印良品は、まもなく撤退する。これからどんな「奈良」にしていくのか、大きな設計図が求められる。

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18 コメント

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Unknown (鹿鳴人)
2013-02-20 19:33:59
tetsudaさん。早速大きくとりあげていただき拝読しました。
高さ制限などについてはこれで終わりではなく今後も論議されるべき問題だと思います。
そして景観と土地の有用活用化は対立概念ではないと思います。どこかで調和点があると思います。

「これからどんな「奈良」にしていくのか、大きな設計図が求められる。」その通りだと思います。

よろしくお願いしたいと思います。

はっきりしているのは、このままで良いわけではない、ということではないでしょうか。

そして宿泊施設のドミノ現象もそろそろ、打ち止めにしないと、と思います。

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高さ制限 (あをによし南都)
2013-02-20 21:59:55
高さ制限のみならず建物意匠・外観などもしっかり規制してこそ競争力のある観光都市でしょうか。
そもそも高さ規制20mの緩和は奈良の価値保存の観点からは眺望価値の棄損になり好ましくないですね。一旦決めた都市計画の骨格を個々の不動産開発案件でその都度見直していたら何のための古都奈良の都市計画だったのか。
せっかく行基菩薩前を整備し、大極殿を復元して形を整えても東大寺二月堂や若草山からの景色が白いコンクリビルで林立するような景観になってしまえば奈良にとっては損害そのもでしょう。
根本的に宿泊してでも奈良に来たい、と思わせるための観光価値がないと新規の宿泊事業は現状、需給の観点から厳しいのでしょうね。
旧ビブレのオーナーさんがまさか高さ規制緩和を前提に不動産投資をされたと思えませんが、マンション分譲は短期で利益確保でき、事業者視点からすると宿泊事業者に賃貸するより有利な資金回収(高いIRR)だったおいうことでしょうか。
長期的な観点から観光価値を保全するという観点と事業者の要求リターンを両立させるのはタフなことですが本源的な奈良の価値は何か、という点を踏まえ、事業者さんにはCSRの観点を踏まえ事業に取り組んで頂きたいものです。
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コトの本質はどこにあるか (tetsuda)
2013-02-23 09:20:50
鹿鳴人さん、あをによし南都さん、コメント有り難うございました。

> はっきりしているのは、このままで良いわけではない、ということではないでしょうか。
> そして宿泊施設のドミノ現象もそろそろ、打ち止めにしないと、と思います。

はい、その通りです。「奈良の宿泊観光のあり方、誘致の仕方」について、きちんとした青写真が必要です。諦めムードの中で、マトモな議論がなされていないように思います。

> 長期的な観点から観光価値を保全するという観点と事業者の要求リターンを
> 両立させるのはタフなことですが本源的な奈良の価値は何か、という点を踏まえ、
> 事業者さんにはCSRの観点を踏まえ事業に取り組んで頂きたいものです。

目先の利益だけにとらわれていては、本質を見誤りますね。昨日の「週刊奈良日日新聞」がこのニュースを「ホテル誘致に壁 またしても高さ制限、奈良の未来は…」という記事に仕立てていて、これは危ないと感じました。

この論法だと「高さ制限さえ解除すればホテルがどんどん建って観光客がいくらでも増えて、奈良の未来は明るい」というトンでもない理屈がまかり通ることになります。コトの本質をきちんと見極める必要があります。
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新築マンションを野放しするのはおかしい (シリウス)
2013-02-24 07:25:11
奈良に限ったことではありませんが、商業地域でのマンション新築を野放しするのはやめてほしいと思います。一度、分譲マンションが建設、販売、入居されてからでは再開発するのは困難になるからです。他にも、商業施設を取り壊してまでのマンション建設は地域活性化にならないばかりか、町並みを破壊し確実に活気がなくなります。ただ、マンションでもウィークリーやホテル利用が可能なワンルームであれば、帰宅困難者や低所得者を受け入れられるメリットはあります。分譲マンションに対しては条例による規制で商業地域内での建設を全面禁止したり、それ以外の地域でも税金を徴収することによって新築・建替えを抑制し観光資源に充当する目的税の導入は必要でしょう。
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セントアージュ奈良 (tetsuda)
2013-02-24 11:33:49
シリウスさん、コメント有り難うございました。

> 条例による規制で商業地域内での建設を全面禁止したり、それ以外の地域でも税金を徴収
> することによって新築・建替えを抑制し観光資源に充当する目的税の導入は必要でしょう。

うーん、なるほど。ある程度の規制はやむを得ないかも知れませんね。

JR奈良駅前に「セントアージュ奈良」というきれいな分譲マンションがあります。ここは、高齢者限定のマンションなので、建築が許可されたそうです。
http://www.st-age.jp/

2回ほど、マンションの既居住者と、新たに居住を考えている人向けに、ここの集会室で講話をし、そのあと貸切バスで短いツアーをしてきました(次回は3/16で、古事記の話とツアー)。このような高齢者福祉に資するマンションなら、良いですね。
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景観は、大切ですが。。。 (しかおとこ)
2013-02-24 18:27:53
tetudaさん 「奈良の宿泊観光が抱える「構造的問題」」とは、何なのですか? 景観を守り続けていても、宿泊施設は閉鎖に追い込まれ、宿泊する観光客は減少の一途です。CSRを論じている方もいらっしゃいますが、企業利益があってこそCSRだと思います。リターンが確保出来ずに、投資する企業は存在しないと思います。新築マンションに別途課税する案は、益々、奈良への投資を遠ざける事になると思います。また、ウイークリーマンション利用とすれば「帰宅困難者や低所得者を受け入れられるメリット」も、それがどのように奈良の観光、事業者の収益に繋がるのか理解できません。「高齢者福祉に資するマンションなら、良いです」は、高さ制限を緩和しても良いと言う事でしょうか?そうであるなら、矛盾を感じます。
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奈良観光の価値は何か (tetsuda)
2013-02-24 19:50:52
しかおとこさん、コメント有難うございました。

> 景観を守り続けていても、宿泊施設は閉鎖に追い込まれ、宿泊する観光客は減少の一途です。

それは、全く関係のない2つの問題をくっつけていますね。では逆に、奈良のこの素晴らしい景観を破壊して大きな宿泊施設を作り、それで宿泊観光客は増えるのでしょうか?観光客は、何を期待してこの古都・奈良に来られるのでしょうか?それで満足して帰られるのでしょうか?

> 「高齢者福祉に資するマンションなら、良いです」は、高さ制限を緩和しても良いと言う事でしょうか?

全くそんなことは書いていません。引き合いに出したマンションも、高さ制限を守っています。

当ブログでは繰り返し、高層ホテルなどではなく、例えば宿坊、農家・町家民泊など、奈良県の地域性に合った宿泊施設を提案しています。繁忙期だけ、商売をするのです。

ご存じと思いますが、奈良では、春秋の観光シーズン以外は、宿泊施設では閑古鳥が鳴いています。トップシーズンとボトムの差が大きすぎるのです。企業が少ないので、宴会需要も見込めません。だからホテルが来ません。それが構造的問題です。「リターンが確保出来ずに、投資する企業は存在しない」のです。

「景観は大切ですが…」ではありません。この景観を守らないと、奈良が奈良でなくなるのです。
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景観行政 (あをによし南都)
2013-03-09 00:29:07
http://www.city.nara.lg.jp/www/contents/1330675040980/files/ikentotaiou.pdf
御参考までに。
どう実行していくかが重要ですが行政でもしっかり景観課題については認識されているようです。
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雑感を書かせていただきます (奈良出身の都民です)
2013-03-11 00:15:28
観光客が減少すると、観光客向けのお店が消えて行きます。法隆寺近辺は、裏手と一部の古い街並を除いて、観光地のていをなしていません。観光客の喜ぶような商店街もありません。法隆寺を訪れる観光客が少ないから、観光客向けのお店がなりたちません。悪循環です。
わたしは、生まれ育った奈良を離れて久しいです。長年、都民として、女子大の教員をしています。専門とも授業とも関係無いのですが、ここ数年、授業の履修学生全員に添付ファイルで送付する授業の参考資料のなかに余談として、奈良観光案内みたいなものを加えたりすることがあります。お寺やお店のURL入りです。女子大生が奈良に行かないのは、東大寺とシカしか知らないからだと感じています。浮見堂の写真に引かれる学生は多いですし、砂ずりの藤もとても訴える力が強いです。二月堂を知らない学生がほとんどですし、唐招提寺が訪問先の候補になっていません。唐招提寺も薬師寺も法隆寺も、訪問すれば、来て良かったと思うだろうにです。また、奈良の市街地で何を食べていいかわからない人だらけです。葛関係のお店やお菓子のお土産、某プリンも知ったら大喜びするだろうに、気づかないまま奈良を後にする人がほとんどです。遷都くんが青い服とかいろんな服を着るようになったと聴いただけで行きたがったりするのにです。なので、そういう訪問先とそこへ行った場合の魅力的な食事やお茶のお店の選択肢まで記してあげると、本気で「春休み、みんなで、奈良行こうか」って話になったりするのを目撃しています。平日なら、ちょっと県庁の入り口の大きな遷都くんと記念撮影して、屋上に上がって、これから回る全貌を把握してから東大寺に行けば、って薦めると本当にそうする人が少なくないのです。ただ、奈良への旅行をすすめる際、唐招提寺、薬師寺、慈光院、法起寺、法隆寺のコースをどういう交通手段で、どういう回り方をするのがいいか、残念ながら、思いつきません。法隆寺 i センターで自転車を借りたらいいけど、龍田方面の国道25号線は、自転車危ないよ、みたいなアドバイスしかできません。この駄文とビブレ跡地利用に何の関係があるのかわかりませんが、雑感を書かせていただきました。要約すると、奈良には、観光客を引きつけるものや場所が沢山あるのに、それらや、それらの回り方が知られていないのが、惜しいなあ、といったところです。
奈良出身とはいえ、長年、奈良を離れている身、言わば、よそ者の身で、僭越なことを書かせていただき、申し訳ございません。お気にさわった折は、どうか、お許し下さい。
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のんびり、ゆっくり (tetsuda)
2013-03-16 10:23:19
奈良出身の都民さん、コメント有難うございました。

> 奈良には、観光客を引きつけるものや場所が沢山あるのに、
> それらや、それらの回り方が知られていないのが、惜しいなあ

全くそのとおりです。奈良は観光資源の「宝庫」なのに、「倉庫」に成り下がっていると思います。だから私は毎日、奈良の情報を発信し続けています。

> 奈良への旅行をすすめる際、唐招提寺、薬師寺、慈光院、法起寺、法隆寺のコースを
> どういう交通手段で、どういう回り方をするのがいいか、残念ながら、思いつきません。

これらの名刹は、1日では回れません。といいますか、決して1日で回らないでください。じっくりと良さを味わってほしいのです。

1日目は近鉄「西の京」下車、徒歩で薬師寺と唐招提寺へ。ランチのお店もあります。そのあとは、近鉄「郡山」からバスで慈光院へ。抹茶をいただきながら、お庭と奈良盆地の眺めを楽しんでください。

2日目はJR「法隆寺」下車で法隆寺へ。バスもありますが、学生なら徒歩で。その後、すぐお隣の中宮寺、そこから徒歩で法輪寺、法起寺へ足を伸ばします。帰りは同じルートを戻るか、国道へ出てバスに乗り、筒井で近鉄に乗ります。

ぜひ、学生さんにお奨めください。
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