11/16(水)、野迫川村から高野龍神スカイラインを1時間ばかり走り、龍神村を訪ねた。ここは田辺市だから和歌山県なのだが、十津川村のすぐ東隣なので、「奈良にこだわる」のジャンルに入れさせていただいた。Wikipedia「龍神村」によると、《龍神村(りゅうじんむら)は、かつて和歌山県日高郡に存在した村。同県の中央東部に位置し、龍神温泉の村として知られていた。2005年5月1日に田辺市、中辺路町、本宮町、大塔村と合併し、新・田辺市になったが、田辺市龍神村として固有名詞を維持している》《和歌山県の中央東部に位置し、村の約70%を標高500m以上の山岳が占め、日高川が村内の主要な地区を流れている。 北に護摩壇山がある》。
Wikipedia「龍神温泉」では、《龍神温泉(りゅうじんおんせん)は、和歌山県田辺市龍神村(旧国紀伊国日高郡)にある温泉。美肌効果の高い泉質で日本三美人の湯のひとつに数えられる》《歴史 開湯は約1300年前とされているが、弘法大師による開湯伝説も残っている。また、役小角が発見した後、難陀(なんだ)竜王のお告げによって弘法大師が開湯したとも言われている》。「龍神温泉」という名前は、この「難陀竜王」(八大竜王の1つ)のお告げという逸話からきているようである。
龍神温泉観光パンフレットより
《江戸時代には紀伊国を統治した紀州藩とも関わりが深く、藩主が湯治を行うために、初代藩主徳川頼宣が「上御殿」「下御殿」を作らせた。但し、藩主の湯治は実現せず建物は村民に与えられた。上御殿、下御殿はそれぞれ旅館となり、上御殿の建物(国の登録有形文化財)は現在も宿として使われている。中里介山による時代小説『大菩薩峠』やその映画化作品において、主人公・机龍之助が目を癒した所として採り上げられ、全国的に有名になった》。
龍神温泉は、温泉教授として知られる松田忠徳氏の「日本百名湯」にも選ばれている(和歌山県下では他に白浜温泉、勝浦温泉、湯の峰温泉が選ばれている。奈良県下では十津川温泉が唯一ランクインしている)。著名な温泉なので、高野龍神スカイラインが開通してからというもの、私の故郷・九度山町から訪ねる人も多かった。だから城崎温泉のような賑やかな温泉地を想像していたが、そうではなく、静かな山あいの温泉場で、湯治場の雰囲気さえ漂っていた。これはいい所へ来た。
龍神温泉では共同浴場の「龍神温泉 元湯」(700円)がよく知られているが、何か珍しい温泉はないかと物色していると、元湯のすぐ隣りの「下御殿」(田辺市龍神村龍神38)の看板が目に入った。下御殿のHPによると《落ち着いた和の雰囲気が漂う内湯は、全国的にも珍しい御座敷風呂と、木の質感と香りが肌にしっとりとなじむ檜風呂の2種類。特に御座敷風呂は脱衣所・洗い場・湯船に至るまですべて畳敷きという贅沢さ。窓の外に流れる日高川の清流のせせらぎに耳を澄ましながら、ゆったりとお寛ぎください(朝夕で男女入れ替り制/日帰り入浴もご利用いただけます)》。
「龍神温泉 元湯」は、日帰り入浴客でいっぱいだ
ここでは1,000円で日帰り温泉が利用できる。畳敷きの風呂とは珍しい。しかもここにはご自慢の「混浴露天風呂」があるのだ! 《日高川の清らかな流れを望みつつ入浴できる当館自慢の混浴露天風呂。 四季の移ろいを肌で感じながら豊かな自然に囲まれれば心も体も癒されます。 渓流に面した開放感あふれる露天風呂でのんびり秘湯気分に浸ってください。 夜は渓谷の木々がライトアップされ、より幻想的な光景に…(日帰り入浴もご利用いただけます)》。フロントでも「露天風呂がありますが、混浴です。よろしいですか?」と聞かれたので、元気よく「はいっ」と答えた。あらかじめ沓脱(くつぬ)ぎに、若い女性の靴が2足あったのもチェック済みだった。
「下御殿」外観。入口は階段を降りたところ
エレベーターで地下へ降り、いそいそと風呂に向かうと、上の写真(観光パンフレット)のような若い女性が1人、体にバスタオルを巻き付けて露天風呂のドアから出てきたので、驚いた。本当に露天風呂だったのだ。私はまず内湯(男風呂)に向かった。あいにくこの日の男風呂は御座敷風呂ではなく、檜風呂の日だった。しかし、太い檜を贅沢に使った豪快な浴槽で、手足を伸ばしてゆっくり入った。平日の昼間なので、お客は私1人。肌に当たる檜の感触がとてもいい。湯は無色透明ながら、肌がすべすべ・つるつるになるし、じーんと体の芯まで温まる。これは私が太鼓判を押す、御所の「かもきみの湯」(御所市大字五百家)の泉質にソックリだ。看板には「泉質 ナトリウム炭酸水素塩泉」とあった。あとでかもきみの湯のHPを見ると「ナトリウム炭酸水素塩・塩化物温泉」とあったので、私の感覚は正しかった。
この肌のすべすべ感が「美人の湯」の所以(ゆえん)なのだろう。化学的にいうと、皮膚の表面の古い角質(タンパク質)が、アルカリで溶ける(アミノ酸に加水分解される)ということである。講釈はさておいて、いよいよ混浴露天風呂である。タオルをシッカリ巻きつけて、露天風呂へ降りていく。露天風呂は、川べりの小さな岩風呂である。おー、誰もいない。残念、というよりまあ「ホッとした」というのが正直なところである。目の前に小さな橋がかかり、橋からも露天風呂が眺められる。温泉場によくある、大らかで開けっぴろげな岩風呂であった。4人も入れば満員になりそうな小さな風呂で、のぼせる寸前までじっくり温まった。
下御殿は、「日本秘湯を守る会」の会員である。この会は《旅人の心に添う 秘湯はひとなり…》《日本の原風景とう云うべき故郷を、自然風景を渇望する時が来ると信じ、流行と云う上面に流されることなく、忘れてはならないもの、変えてはならないものは何かを問い、求めてきました。いろいろな思いを胸に旅に出る人々の心根に思いをはせ、旅人を迎える宿と人がどうあるべきか、宿を取り巻く自然環境、温泉環境がどうあるべきかを問い続け、「旅人の心に添う 秘湯は人なり」は日本秘湯を守る会の永遠の理念であり、使命として認識し、多くの旅人に支持され、愛される宿の集まりでありたいと願っております》(同会のHP)。
会のHP「会員宿のご紹介」には、「山のいで湯を守って… 日本秘湯を守る会 会員宿一同」として、こんな文章も綴られている。《ずいぶん山の中で不便な思いもしました。冬は交通が途絶えたり食糧の確保すら難しい時代が長く続きました。いっそのこと山を降りてどこかで観光旅館でもと考えたこともしばしばでした。しかし、長年にわたってお訪ね下さるご常連のお客さまや、先祖が守ってきた温泉のことを思うと去ることも新築することにも頭をかかえました》。
《〝残してくれ〟〝古くさい建て直せ〟そんなお客さまの声を自問自答しながら生きて参りました。私どもの宿では、草一本、石ころひとつにも皆さんとの血が通っているように思われてなりません。古いものや自然環境を残そうと、今日まで言うに言えない苦労も致しました。おかげさまで、昨今はそれだから来たんだよとおっしゃるお客さまが多くなり、古さを守るという生きがいすら覚えるようになりました。有難いことだと思っています》。
団体客目当ての温泉地に閑古鳥が鳴く一方で、個人旅行者の間では「秘湯めぐり」が静かなブームとなっている。龍神温泉は「それだから行くんだよ」という秘湯ファンには垂涎の温泉場である。あとでパンフレットを読むと、下御殿のご当主は、龍神潔氏。上御殿のご当主も、龍神姓だそうで、ここは神さまのおわす勿体ない温泉であった。「秘湯は人なり」。龍神温泉へは、高野山から、高野龍神スカイラインを45km。ぜひ龍神温泉をお訪ねいただき、身と心を癒していただきたい。
※龍神観光協会の公式サイトはこちら
Wikipedia「龍神温泉」では、《龍神温泉(りゅうじんおんせん)は、和歌山県田辺市龍神村(旧国紀伊国日高郡)にある温泉。美肌効果の高い泉質で日本三美人の湯のひとつに数えられる》《歴史 開湯は約1300年前とされているが、弘法大師による開湯伝説も残っている。また、役小角が発見した後、難陀(なんだ)竜王のお告げによって弘法大師が開湯したとも言われている》。「龍神温泉」という名前は、この「難陀竜王」(八大竜王の1つ)のお告げという逸話からきているようである。
龍神温泉観光パンフレットより
《江戸時代には紀伊国を統治した紀州藩とも関わりが深く、藩主が湯治を行うために、初代藩主徳川頼宣が「上御殿」「下御殿」を作らせた。但し、藩主の湯治は実現せず建物は村民に与えられた。上御殿、下御殿はそれぞれ旅館となり、上御殿の建物(国の登録有形文化財)は現在も宿として使われている。中里介山による時代小説『大菩薩峠』やその映画化作品において、主人公・机龍之助が目を癒した所として採り上げられ、全国的に有名になった》。
龍神温泉は、温泉教授として知られる松田忠徳氏の「日本百名湯」にも選ばれている(和歌山県下では他に白浜温泉、勝浦温泉、湯の峰温泉が選ばれている。奈良県下では十津川温泉が唯一ランクインしている)。著名な温泉なので、高野龍神スカイラインが開通してからというもの、私の故郷・九度山町から訪ねる人も多かった。だから城崎温泉のような賑やかな温泉地を想像していたが、そうではなく、静かな山あいの温泉場で、湯治場の雰囲気さえ漂っていた。これはいい所へ来た。
温泉教授・松田忠徳の新・日本百名湯 (日経ビジネス人文庫) | |
松田忠徳 | |
日本経済新聞社 |
龍神温泉では共同浴場の「龍神温泉 元湯」(700円)がよく知られているが、何か珍しい温泉はないかと物色していると、元湯のすぐ隣りの「下御殿」(田辺市龍神村龍神38)の看板が目に入った。下御殿のHPによると《落ち着いた和の雰囲気が漂う内湯は、全国的にも珍しい御座敷風呂と、木の質感と香りが肌にしっとりとなじむ檜風呂の2種類。特に御座敷風呂は脱衣所・洗い場・湯船に至るまですべて畳敷きという贅沢さ。窓の外に流れる日高川の清流のせせらぎに耳を澄ましながら、ゆったりとお寛ぎください(朝夕で男女入れ替り制/日帰り入浴もご利用いただけます)》。
「龍神温泉 元湯」は、日帰り入浴客でいっぱいだ
ここでは1,000円で日帰り温泉が利用できる。畳敷きの風呂とは珍しい。しかもここにはご自慢の「混浴露天風呂」があるのだ! 《日高川の清らかな流れを望みつつ入浴できる当館自慢の混浴露天風呂。 四季の移ろいを肌で感じながら豊かな自然に囲まれれば心も体も癒されます。 渓流に面した開放感あふれる露天風呂でのんびり秘湯気分に浸ってください。 夜は渓谷の木々がライトアップされ、より幻想的な光景に…(日帰り入浴もご利用いただけます)》。フロントでも「露天風呂がありますが、混浴です。よろしいですか?」と聞かれたので、元気よく「はいっ」と答えた。あらかじめ沓脱(くつぬ)ぎに、若い女性の靴が2足あったのもチェック済みだった。
「下御殿」外観。入口は階段を降りたところ
エレベーターで地下へ降り、いそいそと風呂に向かうと、上の写真(観光パンフレット)のような若い女性が1人、体にバスタオルを巻き付けて露天風呂のドアから出てきたので、驚いた。本当に露天風呂だったのだ。私はまず内湯(男風呂)に向かった。あいにくこの日の男風呂は御座敷風呂ではなく、檜風呂の日だった。しかし、太い檜を贅沢に使った豪快な浴槽で、手足を伸ばしてゆっくり入った。平日の昼間なので、お客は私1人。肌に当たる檜の感触がとてもいい。湯は無色透明ながら、肌がすべすべ・つるつるになるし、じーんと体の芯まで温まる。これは私が太鼓判を押す、御所の「かもきみの湯」(御所市大字五百家)の泉質にソックリだ。看板には「泉質 ナトリウム炭酸水素塩泉」とあった。あとでかもきみの湯のHPを見ると「ナトリウム炭酸水素塩・塩化物温泉」とあったので、私の感覚は正しかった。
この肌のすべすべ感が「美人の湯」の所以(ゆえん)なのだろう。化学的にいうと、皮膚の表面の古い角質(タンパク質)が、アルカリで溶ける(アミノ酸に加水分解される)ということである。講釈はさておいて、いよいよ混浴露天風呂である。タオルをシッカリ巻きつけて、露天風呂へ降りていく。露天風呂は、川べりの小さな岩風呂である。おー、誰もいない。残念、というよりまあ「ホッとした」というのが正直なところである。目の前に小さな橋がかかり、橋からも露天風呂が眺められる。温泉場によくある、大らかで開けっぴろげな岩風呂であった。4人も入れば満員になりそうな小さな風呂で、のぼせる寸前までじっくり温まった。
下御殿は、「日本秘湯を守る会」の会員である。この会は《旅人の心に添う 秘湯はひとなり…》《日本の原風景とう云うべき故郷を、自然風景を渇望する時が来ると信じ、流行と云う上面に流されることなく、忘れてはならないもの、変えてはならないものは何かを問い、求めてきました。いろいろな思いを胸に旅に出る人々の心根に思いをはせ、旅人を迎える宿と人がどうあるべきか、宿を取り巻く自然環境、温泉環境がどうあるべきかを問い続け、「旅人の心に添う 秘湯は人なり」は日本秘湯を守る会の永遠の理念であり、使命として認識し、多くの旅人に支持され、愛される宿の集まりでありたいと願っております》(同会のHP)。
会のHP「会員宿のご紹介」には、「山のいで湯を守って… 日本秘湯を守る会 会員宿一同」として、こんな文章も綴られている。《ずいぶん山の中で不便な思いもしました。冬は交通が途絶えたり食糧の確保すら難しい時代が長く続きました。いっそのこと山を降りてどこかで観光旅館でもと考えたこともしばしばでした。しかし、長年にわたってお訪ね下さるご常連のお客さまや、先祖が守ってきた温泉のことを思うと去ることも新築することにも頭をかかえました》。
《〝残してくれ〟〝古くさい建て直せ〟そんなお客さまの声を自問自答しながら生きて参りました。私どもの宿では、草一本、石ころひとつにも皆さんとの血が通っているように思われてなりません。古いものや自然環境を残そうと、今日まで言うに言えない苦労も致しました。おかげさまで、昨今はそれだから来たんだよとおっしゃるお客さまが多くなり、古さを守るという生きがいすら覚えるようになりました。有難いことだと思っています》。
団体客目当ての温泉地に閑古鳥が鳴く一方で、個人旅行者の間では「秘湯めぐり」が静かなブームとなっている。龍神温泉は「それだから行くんだよ」という秘湯ファンには垂涎の温泉場である。あとでパンフレットを読むと、下御殿のご当主は、龍神潔氏。上御殿のご当主も、龍神姓だそうで、ここは神さまのおわす勿体ない温泉であった。「秘湯は人なり」。龍神温泉へは、高野山から、高野龍神スカイラインを45km。ぜひ龍神温泉をお訪ねいただき、身と心を癒していただきたい。
※龍神観光協会の公式サイトはこちら
いつも安宿なのですが、その日は奮発して初めて「部屋付露天風呂」に泊まりましたので印象深さも尚更です。
思い返しても、しっとりした名旅館だったと思います。
あの混浴露天もせせらぎの中にいるようで、混浴なら尚、良かったのにと思いました。
馬見丘陵のセグウェイツアーにも是非、いらしてください。
> 奮発して初めて「部屋付露天風呂」に泊まりましたので印象深さも尚更です。
おお、これはまさに殿様気分が味わえたのではないですか。
> 馬見丘陵のセグウェイツアーにも是非、いらしてください。
そうですね、空き時間ができればお邪魔したいのですが…。