10/4(土)14:30~17:00、大淀町文化会館(奈良県吉野郡大淀町)で、「吉野の地域産業を発展させる会」の発足説明会が開催された。
この会は、以前当ブログでも紹介したとおり、東京で環境支援ビジネスを手がけるハートツリー株式会社(服部進社長=冒頭写真)の呼びかけにより、地元の内原商店(木製品卸業)、瀬上林業(林業・木材卸業)、中神木材(山林管理・素材業)の計4社が発起人となって発足した会である。
※吉野ハート プロジェクト(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/663ef93b2f8a46bc2d9ff4b9e4f6da70
「Yoshino Heart(吉野ハート)プロジェクト」として、吉野材を使った割り箸や木製品などを普及させることにより、吉野の林業や地元産業を活性化しようというものだ。その第1ステップとして、吉野割り箸を全国に広めようとしている。コンビニや食品メーカーなどと提携し、輸入割り箸を吉野割り箸に代えてもらおうというねらいである。コスト上昇分は、メーカーの広告を入れることで賄う(=アド箸)という仕組みだ。
このハートツリー(株)は、早くから社名にある「ハートツリープロジェクト」を立ち上げている。企業などの協賛により、商品などの売上げの一部を植樹や森林の保育に回してもらおうという趣旨である(この日は朝から、同プロジェクトに伴う植樹イベントが行われた)。だから今回の「吉野ハートプロジェクト」は、同社プロジェクト第2弾で、地域限定の発展版という位置づけだ。
植樹イベント(10/4 瀬上林業の持ち山で 吉野郡下市町丹生)
この日の説明会の参加者は、約60人。林業家、県・町村関係者や地元銀行員の姿が目につく。製箸業者や製材業者の参加は少ない様子だ。冒頭の来賓(大淀町長と下市町長)挨拶の後、森林ジャーナリスト・田中淳夫氏の「日本の活性化は割り箸から! 木を見て森を見て、日本を考える」というタイトルの講演があった。
これに続き、ハートツリープロジェクトに協賛しているキンレイ(冷凍鍋焼きうどんとコラボ)、ローソン(吉野割り箸を提供)、オリンパスビジュアルコミュニケーションズ(間伐材を使用した紙をCDジャケットに使用)から、「吉野材活用事例」紹介があった(この3社は、朝から植樹も行っていた)。ハートツリーの服部社長からは、「今後の取り組み・会への登録方法」の説明が行われた。
とりわけ、ローソンの伊藤敏彦氏の話に注目が集まった。同社が首都圏で展開する「ナチュラルローソン」(82店舗)は、持ち帰り弁当などにつけている中国産割り箸を、11/25から吉野ヒノキの割り箸に代えるというのだ。タイミング良く昨日(10/4)の日経新聞にも取り上げられ、《はし袋の表側に広告を印刷して広告費用を得ることで、中国産に比べて2-3倍する製造コストを補う。森林の管理作業から出る端材を原料に使い、国内森林資源の維持につなげる。奈良県吉野地区で得られるヒノキの間伐材を加工する》とある。
(株)ローソンのシニアマネージャー・伊藤敏彦氏
(商品・物流本部 ナチュラルローソンMD部)
ナチュラルローソンでは、1店舗当たり約7500膳/月の箸を配布している。全店(82店)では年間約720万膳に上るというから、これは「吉野割り箸特需」だ。中国産に比べて安全・安心(漂白剤、防腐剤、防カビ剤など不使用)で、香りも手触りも良い吉野割り箸の配布は、「美と健康を考えたライフスタイルを身近でサポートする」ナチュラルローソンのお客に、大歓迎されることだろう。
伊藤氏によれば、当初はローソン全店で出している割り箸を国産に変えようと考えたが、それだと5億膳必要になり、とても調達できないから当面はナチュラルローソンだけにしたという話だ。
これについて、この日講演された田中淳夫氏は、自らのブログにこう書かれている。《5億膳! これは国産割り箸全部ひっくるめた量だ。しかもローソンが決行したら、おそらく周辺のコンビニ業界や弁当業界も引きずられるだろうから、その数倍の需要が生み出される可能性が高い。これが、東京のマーケッターの力か。今後、本当に稼働し始めれば、どこまで需要が生み出されるだろうか。むしろ、生産・供給面が心配だ》。
※吉野ハート・プロジェクト(田中氏のブログ:だれが日本の「森と木と田舎」を殺すのか)
http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2008/10/post-c8fe.html
キンレイも今月中旬から、和食レストラン「かごの屋」の関東の10店舗で、吉野ヒノキの割り箸(アド箸)を提供するという。これだけで年間100万膳になるが、最終的には全店舗・年間700万膳の利用をめざすそうだ。割り箸だけでなく、通常の箸として、企業のノベルティグッズ向けなどにも販売するそうだ。
今朝(10/5)の奈良新聞1面に、この説明会のことが報じられた。見出しは「吉野林業復興へ連携 産地と消費地結ぶ まず情報共有」だ。
《日本たばこ産業(JT)や大塚製薬で勤務してきた服部社長は「私はマーケティングの人間で環境については素人。しかし商品を知り、PRする方法は分かっている。日本を元気にするため、木から日本を考えたい。吉野はブランド要素が満載」と話し、情報の共有化、原材料の安定供給、製造(加工)の依頼の3点が重要だとした》(10/5付 奈良新聞)。
《地元の登録業者を募集。流通やメーカー、外食産業などの賛同企業と来月から情報の交流を始め、来年4月に民間非営利団体(NPO)を設立、5月に設立総会を目指す》《東奈良男下市町長は「木がだめだと吉野はやっていけない。会の発展に期待し、できるだけの協力をしたい」と話していた》(同紙)。
この日の締めで、吉野町長・北岡篤氏がエールを送った。手元のメモから拾うと、《この20年、吉野の林材業(林業と製材業)はひどい状態だった。材価が安く、担い手も育っていない。何とかこの状況を打開しようと、政府が募集した「地方の元気再生事業」にも応募したが、残念ながら選に漏れた。今日は、力強いお話を聞かせていただいた。良い会を作っていただいたことに感謝している。この吉野ハートプロジェクトは、行政として応援させていただきたい》。
エールを送られる北岡町長
なお、北岡町長のいう「地方の元気再生事業」とは、政府(内閣官房 地域活性化統合事務局)が募集していた国の補助事業で、吉野町は「吉野杉でつなぐ林業と観光! 元気もりもり吉野スタイル提案」というプランを応募(募集期間:08.5.1~16)されたが採用されず、当県からは唯一、河瀬直美氏の「なら国際映画祭」が選ばれたという話のことだ。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/c5930409e60e441565aa4e6ecc8bc90f
考えてみれば、この吉野ハートプロジェクトこそが「吉野杉でつなぐ林業と観光」であり「元気もりもり吉野スタイル」であろう。割り箸が使う木材量はさほど大きいものではないが、誰もが毎日使う最も身近な木製品である。地元の飲食店や弁当に付ける中国産の割り箸を吉野割り箸に代えるだけで、立派な観光振興策になる。
吉野ハートプロジェクトにより、吉野が、奈良が、ひいては日本が「元気もりもり(森・森)」になることを大いに期待している。
この会は、以前当ブログでも紹介したとおり、東京で環境支援ビジネスを手がけるハートツリー株式会社(服部進社長=冒頭写真)の呼びかけにより、地元の内原商店(木製品卸業)、瀬上林業(林業・木材卸業)、中神木材(山林管理・素材業)の計4社が発起人となって発足した会である。
※吉野ハート プロジェクト(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/663ef93b2f8a46bc2d9ff4b9e4f6da70
「Yoshino Heart(吉野ハート)プロジェクト」として、吉野材を使った割り箸や木製品などを普及させることにより、吉野の林業や地元産業を活性化しようというものだ。その第1ステップとして、吉野割り箸を全国に広めようとしている。コンビニや食品メーカーなどと提携し、輸入割り箸を吉野割り箸に代えてもらおうというねらいである。コスト上昇分は、メーカーの広告を入れることで賄う(=アド箸)という仕組みだ。
このハートツリー(株)は、早くから社名にある「ハートツリープロジェクト」を立ち上げている。企業などの協賛により、商品などの売上げの一部を植樹や森林の保育に回してもらおうという趣旨である(この日は朝から、同プロジェクトに伴う植樹イベントが行われた)。だから今回の「吉野ハートプロジェクト」は、同社プロジェクト第2弾で、地域限定の発展版という位置づけだ。
植樹イベント(10/4 瀬上林業の持ち山で 吉野郡下市町丹生)
この日の説明会の参加者は、約60人。林業家、県・町村関係者や地元銀行員の姿が目につく。製箸業者や製材業者の参加は少ない様子だ。冒頭の来賓(大淀町長と下市町長)挨拶の後、森林ジャーナリスト・田中淳夫氏の「日本の活性化は割り箸から! 木を見て森を見て、日本を考える」というタイトルの講演があった。
これに続き、ハートツリープロジェクトに協賛しているキンレイ(冷凍鍋焼きうどんとコラボ)、ローソン(吉野割り箸を提供)、オリンパスビジュアルコミュニケーションズ(間伐材を使用した紙をCDジャケットに使用)から、「吉野材活用事例」紹介があった(この3社は、朝から植樹も行っていた)。ハートツリーの服部社長からは、「今後の取り組み・会への登録方法」の説明が行われた。
とりわけ、ローソンの伊藤敏彦氏の話に注目が集まった。同社が首都圏で展開する「ナチュラルローソン」(82店舗)は、持ち帰り弁当などにつけている中国産割り箸を、11/25から吉野ヒノキの割り箸に代えるというのだ。タイミング良く昨日(10/4)の日経新聞にも取り上げられ、《はし袋の表側に広告を印刷して広告費用を得ることで、中国産に比べて2-3倍する製造コストを補う。森林の管理作業から出る端材を原料に使い、国内森林資源の維持につなげる。奈良県吉野地区で得られるヒノキの間伐材を加工する》とある。
(株)ローソンのシニアマネージャー・伊藤敏彦氏
(商品・物流本部 ナチュラルローソンMD部)
ナチュラルローソンでは、1店舗当たり約7500膳/月の箸を配布している。全店(82店)では年間約720万膳に上るというから、これは「吉野割り箸特需」だ。中国産に比べて安全・安心(漂白剤、防腐剤、防カビ剤など不使用)で、香りも手触りも良い吉野割り箸の配布は、「美と健康を考えたライフスタイルを身近でサポートする」ナチュラルローソンのお客に、大歓迎されることだろう。
伊藤氏によれば、当初はローソン全店で出している割り箸を国産に変えようと考えたが、それだと5億膳必要になり、とても調達できないから当面はナチュラルローソンだけにしたという話だ。
これについて、この日講演された田中淳夫氏は、自らのブログにこう書かれている。《5億膳! これは国産割り箸全部ひっくるめた量だ。しかもローソンが決行したら、おそらく周辺のコンビニ業界や弁当業界も引きずられるだろうから、その数倍の需要が生み出される可能性が高い。これが、東京のマーケッターの力か。今後、本当に稼働し始めれば、どこまで需要が生み出されるだろうか。むしろ、生産・供給面が心配だ》。
※吉野ハート・プロジェクト(田中氏のブログ:だれが日本の「森と木と田舎」を殺すのか)
http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2008/10/post-c8fe.html
キンレイも今月中旬から、和食レストラン「かごの屋」の関東の10店舗で、吉野ヒノキの割り箸(アド箸)を提供するという。これだけで年間100万膳になるが、最終的には全店舗・年間700万膳の利用をめざすそうだ。割り箸だけでなく、通常の箸として、企業のノベルティグッズ向けなどにも販売するそうだ。
今朝(10/5)の奈良新聞1面に、この説明会のことが報じられた。見出しは「吉野林業復興へ連携 産地と消費地結ぶ まず情報共有」だ。
《日本たばこ産業(JT)や大塚製薬で勤務してきた服部社長は「私はマーケティングの人間で環境については素人。しかし商品を知り、PRする方法は分かっている。日本を元気にするため、木から日本を考えたい。吉野はブランド要素が満載」と話し、情報の共有化、原材料の安定供給、製造(加工)の依頼の3点が重要だとした》(10/5付 奈良新聞)。
《地元の登録業者を募集。流通やメーカー、外食産業などの賛同企業と来月から情報の交流を始め、来年4月に民間非営利団体(NPO)を設立、5月に設立総会を目指す》《東奈良男下市町長は「木がだめだと吉野はやっていけない。会の発展に期待し、できるだけの協力をしたい」と話していた》(同紙)。
この日の締めで、吉野町長・北岡篤氏がエールを送った。手元のメモから拾うと、《この20年、吉野の林材業(林業と製材業)はひどい状態だった。材価が安く、担い手も育っていない。何とかこの状況を打開しようと、政府が募集した「地方の元気再生事業」にも応募したが、残念ながら選に漏れた。今日は、力強いお話を聞かせていただいた。良い会を作っていただいたことに感謝している。この吉野ハートプロジェクトは、行政として応援させていただきたい》。
エールを送られる北岡町長
なお、北岡町長のいう「地方の元気再生事業」とは、政府(内閣官房 地域活性化統合事務局)が募集していた国の補助事業で、吉野町は「吉野杉でつなぐ林業と観光! 元気もりもり吉野スタイル提案」というプランを応募(募集期間:08.5.1~16)されたが採用されず、当県からは唯一、河瀬直美氏の「なら国際映画祭」が選ばれたという話のことだ。
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/c5930409e60e441565aa4e6ecc8bc90f
考えてみれば、この吉野ハートプロジェクトこそが「吉野杉でつなぐ林業と観光」であり「元気もりもり吉野スタイル」であろう。割り箸が使う木材量はさほど大きいものではないが、誰もが毎日使う最も身近な木製品である。地元の飲食店や弁当に付ける中国産の割り箸を吉野割り箸に代えるだけで、立派な観光振興策になる。
吉野ハートプロジェクトにより、吉野が、奈良が、ひいては日本が「元気もりもり(森・森)」になることを大いに期待している。