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寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第2633話) 山陰にて  

2018年06月23日 | 出来事

 “山陰の旅二日目、午前中は雨。松江城から小泉八雲記念館へ行くことにした。車を置いて歩きだしたが、なかなか着かない。主人の勘に頼ったのがまずかった。道を尋ねようにも、雨で人がいない。しばらく歩き人を見つけ主人が尋ねると、何と全くの方向違い。お礼を言い、鈍った勘をからかい歩いていると、追い越された車から若い男性が降りてみえた。「送りますよ、乗ってください」。びっくりして助手席を見ると、先ほどの女性がにっこり。後部座席から小さな娘さんが手招きしてくれた。二人とも雨にぬれ、ちゅうちょしていると「私たちも図書館へ行くので遠慮なさらずに」とご主人。ありがたく乗せていただくことにした。
 昨日、愛知県から来たこと、午後は出雲へ行き、夜帰路につくことを話した。「山陰は雨が多いから。でも午後は晴れますよ」。車を降りるとき、奥さんがおっしゃった。何かお礼をと思いつつ、言葉だけですませてしまった。この家族の代わりに、誰かに返そうと思う。「図書館へ行く」は優しいうそかもしれない。
 境港、松江、出雲はいい旅だった。主人は写真をたくさん撮ったが、この家族三人の優しい笑顔と言葉が、記憶として一番に保存されている。”(6月3日付け中日新聞)

 愛知県大府市の主婦・広藤さん(61)の投稿文です。旅での親切、心細いだけに、特に嬉しいことである。特にこの若い家族は素晴らしい。教えるだけで終わらず、車まで出してきて送っている。広藤さん言われるように、図書館は口実だったかも知れない。ボクは図書館は後で行くつもりだったが、この時に合わせたのが本当だと思う。どちらにせよ、行き届いた配慮である。若い人には何でもないことでも、高齢者には大変なことが多い。ここらの配慮があると本当に嬉しくなる。
 受けた恩を他に人に返すことを「恩送り」という。そしてその恩を送られた人がさらに別の人に送る。そうして「恩」が世の中をぐるぐる回ってよい連鎖になる。これが好ましい世の中である。昔の日本はそうだったという。それが近年非常に減った気がする。ボクは田舎育ちで、いろいろな風習があった。結婚や葬儀、その他いろいろな儀式も、受けたものは返す、この意識で続いてきた。結婚式で呼ばれたら、自分の時には呼ぶ。初老で物をもらったら自分の初老の時に返す。これは恩を受けっぱなしにしない、と言う意識である。これを古い伝統、悪しき伝統、不合理な伝統として断ち切る。 ここに皆の納得があればいいが、革新的気分で勝手に行う。その結果、田舎でも付き合いは全く減った。話は少し違ったが、受けた恩は返す、そういう意味では同じである。


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