FX寺子屋 by 葛勝老師

残りの人生FXに預けた!

100円割れしたユーロ。 1-3月迄は下値を模索する展開が続くと予想。 

2011-12-31 06:00:00 | 日記
読者の皆様は大晦日をどのようにお過ごしでしょうか。

30日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロが対円で100円を割り込み、10年来の安値をつけています。 昨夜、ユーロ・円の最安値99.434を記録し、年間の下落率は8%を超える結果となりました。 ユーロ・円については、年始早々には100円を切ると予想していましたが、年末押し迫って昨夜は劇的な瞬間を見ることが出来ました。 

<2012年 ユーロの動向から>
2012年のユーロ・円相場は、ユーロ圏のソブリン・リスクが周縁国から中核国へ伝播する懸念があること、ユーロ圏経済がリセッション(景気後退)に陥る懸念があることで弱含みに推移することが予想される。 最悪のシナリオは、ギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥り、ユーロ圏から離脱することで、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなどの重債務諸国も連鎖的に同様の経路を辿ること。

ユーロ圏経済は、世界的な景気低迷や債務危機の深刻化を受けた緊縮財政政策で悪化傾向が続いており、高水準の失業率とインフレ率が個人消費を圧迫し、リセッション(景気後退)に陥る懸念が高まっている。 欧州中央銀行(ECB)は、ソブリン・リスクやリセッション(景気後退)懸念に対応するため、利下げを継続する可能性があること、ユーロ圏の国債を無制限に買い取る ”最後の貸し手” となる可能性がある。

ECBが ”最後の貸し手” となり、英米中銀型の量的緩和に踏み切った場合、ユーロ圏のソブリン・リスクは解消に向かう可能性は高まるが、ユーロ安に拍車がかかることになろう。 ユーロ高要因は、ユーロ圏共同債が発行された場合、国際通貨基金(IMF)によるユーロ圏への支援が強化された場合などが予想される。

2012年度、特に注視したいのがイタリアであり、2-4月には1500億ユーロ規模の債券が償還期限を迎えるからです。 足元でイタリアの10年物国債利回りは7%付近で推移しており 非常にリスクが高まってきています。 これはイタリアの国家財政にとって非常にネガティブです。 このため、投資家は既発債だけなく、新発のイタリア国債の購入に慎重になり、敬遠する可能性が高いと思われます。 必然的に利回りが一段と上昇し、結果として、借り換えのための入札が失敗に終わる可能性があるでしょう。 イタリア、スペインなど重債務国経済は、既にリセッションに陥っており、今後の追加緊縮財政措置によってリセッションは一層深まる公算が大きいのは明白です。 モンティ新首相が財政再建と経済競争力の改善に向けて前向きな努力をしても、最終的にイタリアは国際支援を求める可能性が高く、2-4月を無事乗り切るまでは、ユーロ安は続くと思われます。

イタリア救済には、ドイツ・フランスなどを中心に、EU全体による支援が必要です。 イタリアの政府債務だけで1.8兆億ユーロですから、市場では、危機がイタリアにまで波及した場合、少なくとも2兆ユーロが必要と言われています。

ESM(欧州安定メカニズム)の想定資金枠は5000億ユーロ。 IMF(国際通貨基金)拠出の1500億ユーロとEFSF(欧州金融安定ファシリティ)の残りの利用可能枠2500-3000億ユーロを合わせても1兆ユーロ弱にしかなりません。 よって、EU政策当局は年初から市場に催促される格好で、積み増しに動くことになるでしょう。

2012年4月以降は全く予想がつかず。
特に、欧州問題がどのような形で決着して行くかが重要です。 危機へのECBの積極関与や、欧州共同債発行などの抜本的な解決がみられるなら、世界的に株式・ユーロ・重債務国国債は底入れし、4月以降は買われていく見通しです。

しかし、これまでのように問題先送りで解決策しか出さないようなら危機は燻り続け、むしろ、さらに事態が悪化し、株式・ユーロ・重債務国国債は下げピッチを加速させることでしょう。 同時に、S&P、フィッチ、ムーディーズなどの格付け会社は、金融機関の格下げをしてくることでしょう。 このため、残念ながら現時点では、4月以降の市場は不透明すぎて見通せません。 投資家の皆さまにとってまず重要なことは、試練の1-3月を無事乗り切り、市場から強制退場させられないことだと思います。

<2012年 ドル・円の動向から>
2012年のドル・円相場は、積極的なドル買い材料は想定できないものの、円売り材料がやや優勢な展開が予想されるため、下げ渋る展開、あるいは、緩やかなドル高・円安に推移する可能性はあります。

ドル・円は、世界最大の経常収支赤字国である米国の政策金利が、2013年半ばまで ”ゼロ金利” で推移することで、当分の間はドル高トレンドは想定できない。 また、米国の景気回復は、財政緊縮政策により財政刺激策を打ち出すことが出来ないことから期待できないと思われます。

円安の要因 : 野田政権が消費税引き上げを示唆していること/TPP(環太平洋経済連携協定)参加へ前向きなスタンスを表明していること/日本国債の格下げ懸念が高まっていること/日本の貿易黒字が減少傾向にあることで、円安材料が優勢となっている。

円高の要因 : ユーロ圏や米国のソブリン・リスクの懸念や中東の地政学的リスクが高まり、リスク回避の円高圧力が強まること/米国の景気後退懸念が高まり、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和第3弾(QE3)の可能性が高まった場合となる。

いずれにしましても1-3月迄は、ユーロの債務問題の方向性が見いだせない限り、ドルが買われる要因は少ないと考えています。 ユーロ問題が安定し始めると、逆に日本が抱えている問題が表面化し始め円安に振れるのではないでしょうか。

<2012年度 中国人民元の動向>
上海外国為替市場の人民元相場は、対米ドルで切り上げ後最高値を更新して引けました。 年間では4.7%高。 中国人民銀行は人民元を押し上げる兆候があると指摘しています。 人民元の対ドル相場の銀行間取引終値は1ドル=6.2940元。 26日に一時付けた6.3160元の最高値を大きく上回っています。

中国が記録的な貿易黒字を続ける一方、米国から2国間や多国間の貿易不均衡是正に向け、さらに取り組むよう圧力を受ける中、依然として2012年も元高が進むと予測されています。 ただ、来年の上昇率は約3%に鈍化する見通しで、上昇分の大半は下半期に見られのではないかと思います。

世界経済が低調で、中国の輸出が鈍化していることを考えれば、1ドル=6元の水準を大きく突破することはないのではないかと思われます。 先般、海運会社の方と話す機会があり、お聞きするとこの数カ月、欧州向けの物量が半分までに激減しているとの話でした。 

筆者も仕事の関係で人民元の動きは絶えず確認を取っています。 投稿でも何度も、2011年度は6.2台を予想していましたが、最終日に到達しました。

2012年度の予想 1ドル = 人民元6.00-6.50の間で推移。

読者の皆さまへ よいお年をお迎えください。

1 コメント

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良いお年を (ハノイ)
2011-12-31 20:21:35
精度の高い予想記事、いつも参考にさせていただいています。
葛勝老師さま、どうぞ良いお年を。

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