吐露と旅する

きっと明日はいい天気♪

経験

2012-02-02 23:54:03 | インポート
昨日は泳ぎたくて辛抱たまらなくなって
朝、さっちゃんのリュックにプールの道具を押し込んで
ちゃっかり自分の水着までしのばせて
夕方、手ぶらでぷらぷらさっちゃんを施設へお迎えに行き
温水プールへ向かいました。

さっちゃんのお友だちで、このプールを利用している人は案外多く
これまでにも、何度か「バッタリ!」の機会がありましたが
今日も、プールに到着し、玄関で靴を脱いでいると
「さっちゃーん!」
と、声を掛ける人が…。
ヘルパーのKさんと、おともだちのAちゃんです。
2人は、もう泳ぎ終えて、ホールで休憩をしているところでした。
Aちゃんは、色白でとっても可愛いダウン症の女の子で
さっちゃんがKさんとお喋りをしている間
私は、Aちゃんにデレデレしていたのですが
ふとした瞬間に、Aちゃんが私の顔へ左手を伸ばし
私の右のこめかみの髪を掴みました。
え?っと思ったら、もう遅かった。
Aちゃんの小さな指は、みるみるうちに私の髪を絡め取り
さらに、髪を握り締めた手の周りに、髪がどんどん巻き付いていきました。
Aちゃんは小柄な身体には似合わない力で、私の髪を引っ張り続けます。
Aちゃんの両手に髪の毛を巻き込まれた私の頭は
Aちゃんのお腹の辺りから動かすことが出来なくなってしまい
Aちゃんの両手と、私の髪の毛がどんな具合になっているのか
全く分からない状態になってしまいました。
更に、Aちゃんは右手を伸ばして、私の後頭部の髪も掴んでしまいました。
なすすべもなし。
痛いと言えば、まあ、確かに痛い。
多分、歯車に髪の毛を巻き取られてしまうとこんな感じなのでしょうか。
でも、私が無理に動くと、Aちゃんが椅子から落ちてしまうか
私が髪を大量に失うかのどちらかです。
でも、直ぐ傍には、Kさんがいるし、ホールには大勢の人がいます。
私は、そのうち誰かが気が付くだろうと思い
取り敢えず、それ以上、Aちゃんが髪の毛を引っ張らないように
Aちゃんの両手が動かないように、手で押さえていたのですが
そういうときに限って、意外と誰も気付かない。

右のこめかみと、後頭部の髪が少しずつ抜けるのを感じながら
私は、ぼんやりとこんなことを考えていました。
さっちゃんにいきなり叩かれたり抓られたりした人たちは
こんな感じだったのかもしれないな。
なんの情報も準備もないのだから、もっと驚いただろうな。
怖かっただろうな、痛かっただろうな、などと考えていました。
(↑私が怖かったわけではありません)

ですが、既に、Aちゃんの表情は分からなくなってしまいましたが
少なくとも、髪を引っ張り出すまで、Aちゃんに全く悪意は感じられず
もしかしたら、表現が少し違うかもしれませんが
「なんとなく」始まったような気がします。
そうでなければ、「ためしに」、または、「取り敢えず」
Aちゃんの顔の近くで、私の長い髪がゆらゆら動いていたので
「なんとなく」、「ためしに」、「取り敢えず」引っ張ったら、そうなった。
そんな感じだったのです。

やがて、異変に気付いたKさんが、Aちゃんをなだめながら
Aちゃんの手に絡み付いた私の髪の毛を丁寧に外し
私は、ようやく開放されました。
Aちゃんの表情に、やはり一滴の悪意もありません。

うーん、そういうものなのかぁ…。

私は、他害行動をする子供のお母さんの気持ちしか分からず
他害行動の被害に遭ってしまうこの気持ちも
他害行動を起こしてしまう子供の気持ちも分かりません。
「痛かったでしょう」「ごめんなさい」は言えますが
その子の、生々しい気持ちまでは、分からないのです。
情けないし、悔しいとは思うけれど
分からないことを分かったつもりになる方が、もっと嫌。
だから、Aちゃんとのこの事件は
私にとって、いい経験になったような気がします。
だから、さっちゃんの他害行動をどうにかできるというのではなく
少しだけ、この子たちに近付けたような気がするのです。
それだけでも、私には「進歩」だと思うのです。

その後、プールでさっちゃんと散々遊び
さっちゃんの不思議な泳ぎにたっぷり癒されて
痛かったのは、チャラにして
残したほうがいいとこだけ、残しておきました。

※Aちゃんの行為について
 便宜上、不本意ながら「他害」という言葉を使わせて頂きましたが
 実際には、Aちゃんの行為は、私に一切「害」は与えていません。