気に入らない

去年から、さっちゃんの通っている施設では改修を行っていたのですが
いよいよ、改修工事が終わりました。
今日は、みんなで新しくなった施設の床拭きをするということで
『汚れても良い服装』で来るように言われていたので
私は、昨夜から紺のジャージと、紺のトレーナーを用意していたのですが
さっちゃんは、どうもその紺のトレーナーが気に入らないらしく
私がトレーナーを用意した傍から、直ぐに棚に戻してしまいました。
それに気が付いた私が
「明日は汚れても良い服装なんだよ」
と、言って、もう一度紺のトレーナーをジャージと一緒に置いて
暫くしてから、さっちゃんのお部屋を覗きに行くと
やっぱり、トレーナーが棚に戻されていました。
「だから、明日はこのトレーナーで行くんだってば
　汚れたら、こっちに着替えるから」
私は、通所用のリュックに入れた袋を取り出して
袋の中の、着替え用の（可愛い色の）トレーナーとジーンズを見せて
もう一度、紺色のトレーナーをジャージと一緒に置きました。
さっちゃんは納得したのか、トレーナーを棚に戻さなかったので
そのままおやすみなさいをして、朝を向かえると…

紺のトレーナーが、また棚に戻ってるー！

先に寝たはずのさっちゃんが、どうやってトレーナーを棚へ…
どうしても紺のトレーナーが気に入らなくて、夜中に目が覚めたのでしょうか。

つい、私も意地になってしまい、もう一度紺のトレーナーを
ジャージと一緒にして、さっちゃんの枕元へ置いておきました。
その後、朝食の支度をしながら、さっちゃんを起こしに行くと
はじめは、寝ぼけまなこでぼけーっとしていたさっちゃんは
紺のトレーナーに気付くなり、むっとした顔をして
私の目の前で、トレーナーをぽいっと投げました。
私が、それを拾い上げ、またさっちゃんの前へ置くと、またぽいっ。
置く、ぽいっ、置く、ぽいっ、置く、ぽいっ…

はぁ～、うっ！
ちゃっちゃちゃちゃっちゃ♪ちゃっちゃちゃちゃっちゃ♪
ちゃっちゃちゃちゃっちゃ♪ちゃっちゃちゃちゃっちゃ♪
ちゃっちゃちゃちゃっちゃ♪ちゃっちゃちゃちゃっちゃ♪
ちゃちゃちゃ♪ちゃちゃちゃちゃ♪うっ！

マンボかよ！

思わず吹き出しそうになるのを堪えながら
「やかましい！今日はコレっ！」
私の一喝で、さっちゃんは、もうアカンと思ったらしく
ようやく渋々紺色のトレーナーに袖を通したのでした。

ナニが気に入らなかったんだ、紺のトレーナー。