天真寺日記

天真寺の日々を綴ります

親鸞讃歌(宗祖を憶ふ)

2009-02-06 11:33:31 | 天真寺
今日は、1つの詩を紹介させて頂きます。

題名は、親鸞讃歌(宗祖を憶ふ)。

私はS寺の報恩講で初めて聞いた詩であります。
また、S寺の落慶法要でも静まりかえった堂内にても読まれました。

この詩は昭和23年金子大栄先生68歳の時に作られた詩、
金子先生がご覧になった人間親鸞の姿が描かれております。


親鸞讃歌(宗祖を憶ふ)

昔 法師あり
親鸞と名づく
殿上に生れて庶民の心あり
底下となりて高貴の性を失わず

己にして愛欲のたち難きを知り
俗に帰れども道心を捨てず
一生凡夫にして
大涅槃の終りを期す

人間を懐かしみつつ 人に昵(なづ)む能(あた)わず
名利の空なるを知り 離れ得ざるを悲しむ
流浪の生涯に 常楽の故郷を慕い
孤独の淋しさ 万人の悩みを思う

聖教を披(ひら)くも 文字を見ず
ただ言葉のひびきをきく
正法を説けども師弟をいわず
ひとえに同朋の縁をよろこぶ

本願を仰いでは
身の善悪をかえりみず
念仏に親しんでは
自ら無碍の一道を知る

人に知られざるを憂えず
ただ世を汚さんことを恐れる
己身の罪障に徹して
一切群生の救いを願う

その人逝(ゆ)きて数世紀
長(とこしな)えに死せるが如し
その人去りて七百年
今なお生けるが如し
その人を憶いてわれは生き
その人を忘れてわれは迷う
曠劫多生の縁
よろこびつくることなし

この詩は、金子先生の随筆集『くずかご』の中に収められています。


(龍)