天真寺日記

天真寺の日々を綴ります

百練自得

2006-07-01 19:30:08 | 日々
私の京都時代の恩師・井上尊明先生(法名・廣門院釈尊明)が74歳でご往生なされ、お通夜に列席いたしました。
井上先生のお寺は山梨県萬福寺であり、
3年前の天真寺門信徒会の旅行でお訪ねいたしました。
その際には、もぎたてのブドウ・手作りワインで歓迎してくださりましたこと、
昨日のことのように思い出されます。

井上先生は、勤式指導所(お経の学校)の会行事(総括責任者)であり、
私たち生徒は厳しく叱責されながら、時には叩かれながらも、熱心にご教示頂きました。
お勤めをすることの大切さ・心構えを身をもって教えてくださった先生であります。

今でも覚えている言葉があります。
それは、勤式指導所の入所式の時、
先生がおっしゃられた「百練自得」というお言葉であります。
「一回で出来なければ、二回三回、身体で覚えろ」
「苦労したものほど自分のものになる」という教えです。

自ら先生が体験なされてきたことではなかろうかと思います。
お通夜の時、息子さんのお話がありました。
先生が、山梨に養子で萬福寺に来られた時は、掘っ立て小屋だった。
1つ1つ積み重ねて今のご本堂をお建てになられた。
銀行の人が来ると隠れるものだと思っていたと、

どれほどのご苦労があられたことかと思います。

「百練自得」
先生自らが実践された道ではないだろうか。
苦労をせずに人生を生きていくのが私たちの望みかもしれない。
だが、そこになぜか虚しさを感じてしまう。
本当に大切なものは何なのか、
改めて自らに問い直す、
井上先生が問いかけてくださっているような思いの中、帰路についた。

(龍)