(急傾斜地の住宅街@神戸電鉄・長田駅)
湊川から乗った西鈴蘭台行きの各駅停車を、長田で降りる。湊川から1コしか乗ってない。湊川から長田の駅間距離は1.9km、距離だけであれば歩いても来れそう・・・となるのですけど、標高0mの湊川を出るとすぐさま六甲山地越えに向けての急勾配に差し掛かる神鉄電車。長田までで約70mの標高を稼ぐため、駅間の平均勾配は35‰を超えます。この蒸し暑さの中、とてもじゃないがそんな登り坂を歩いて来れるほど元気はありません。長田の駅は住宅街の中の無人駅。かつては駅員配置だったんでしょうけど、神鉄もだいぶ合理化が進んでると見え。自動改札を導入して駅は無人化、鈴蘭台のお客様センターで集中管理みたいなパターンの駅がほとんどですね。
駅前からは六甲山地に向けての前山を切り開いた住宅街と、海へ続く坂道に高層公団住宅が立ち並ぶ様子が見え、イメージとしては京急で言うところの京急田浦や安針塚とか逸見のような、そんな風景。そしてこの駅の南側には、線路に沿って公団住宅へ続く歩行者用の小道が続いていて、房王子町の踏切を抜けて長田の駅へ入ってくるカーブを抜ける列車を撮る事が出来ます。この長田カーブは神鉄定番の撮影地ですが、カーブの内側には桜並木が続いているので、春の時期には実に良い撮影ポイントになるんでしょうね。湊川からの坂道をスイスイと登って来た神鉄5000系。三田線・粟生線ともこの車両が中心選手って感じで、神鉄初のインバータ制御&オール電動車。山坂の多い線形に対応するため、定速運転のシステムが搭載されています。
神鉄と言えば・・・なこの車両、神鉄1000系。この1000系列は1000・1070・1100・1150・1200・1250・1300・1500etc・・・と各系列に亘り製造年次から仕様から組成から様々な車両が作られていて、そこがまた面白みの一つ。ざっくり言えば1965年の製造開始から1970年代前半にかけて製造された2ドアタイプと、その後に製造された3ドアタイプに分けることが出来ます。高度経済成長の中、沿線の開発ラッシュによる乗客の増加を増備増結で支え、神鉄の中でも一大ファミリーであった1000系列。しかしながら、老朽化と5000~6000系の新車導入による代替わりにより徐々にその数を減らしているのが現状。やって来た1105先頭の小野行き。1000系の中でも、真ん中にサハ車を挟み両側に前パン先頭電動車をくっつけた1100系列が一番カッコいいですかね。
神戸電鉄・中興の祖とも言える車両がこの3000系。自分なんかの小さい頃は、この3000系が「神鉄の最新型電車」であった。特徴的なのは、各車両のドア上にある出っ張りで、ここに物はさみ防止センサーみたいなのが付いていて、乗降の安全を補助する装置ともなっています。1975年から1991年まで16年間に亘る長期間の増備を経ている辺りは、伊豆箱根の3000系とか、中規模の私鉄にはよくある話。この3017編成が1991年に作られた最終増備車ですが、もう30年以上走り続けているんですね。
1000系シリーズ、1300系の4連。準急の三田行き。神鉄の優等列車には特快速・急行・準急と三つの種別がありますが、現行ダイヤだと特快速は有馬線方面からの平日朝の上り2本だけ。前回訪問した際は、夕方の粟生線にも下り特快速とかあったんですけど、コロナ減便の余波ですかねえ・・・ちなみに優等で唯一終日運転されているのがこの「準急」で、長田から鈴蘭台の間の丸山・鵯越を通過するのみのささやかな優等列車になっています。
1151編成のメモリアルトレイン。井の頭線を思わせるような淡いグリーンのカラーリング。神戸電鉄の鉄道開業90周年記念事業として、4連の1360編成が「オレンジ×シルバーグレー」そしてこの1151編成が「スプリンググリーン×シルバーグレー」というかつて使用されていた塗装に身を包んでいます。2018年からの塗装変更なので、もう走り出してから結構長いんだな。神鉄というと、基本的にはオレンジ系のカラーリングで走っている印象が強いので、こんな涼やかな塗色で走っていたとは驚きます。戦後間もないころの一部車両に使われていた塗装なのだそうで。
山に向かって延びて行く住宅街、神戸らしい風景のある長田の街。それも、高級住宅街や異人館が広がる生田や山手のいわゆる「六甲モダニズム」の風景ではなく、どちらかと言えば港で働く労働者や夜のネオンの街で働く人々の暮らしというか、ダウンタウン然としたアンダーグラウンドな切り口の神戸がある。観光客や外国人には決して見せない、しかしながらそれも確かに神戸の顔。そんな少し斜に構えたような街並みを登っていく神鉄電車。昔も今も、庶民の足なのでしょうね。
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