青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

人にやさしく 夏の越前・私鉄旅その5

2014年08月30日 22時49分28秒 | 福井鉄道

(公共交通を使いましょう@北府駅)

北府駅待合室のベンチに置かれていたクッション。「丹南広域公共交通機関活性化協議会」サマのご贈呈のようですが、どこの地方鉄道も不況・過疎化・少子高齢化で厳しくなってる中、色んな地方鉄道の沿線で「活性化協議会」が結成されているのを見聞きします。一口に「活性化協議会」と言っても色々で、社交辞令的と言うか最終的に廃線への引導を渡す死神役みたいな協議会もあったりしますが(「活性化協議会作ってアレコレやったけどダメだから廃線ね」みたいな)、概ね福井鉄道沿線の行政的支援は活発な印象を受けます。

 

越前武生駅から武生市街の路地を傘さして歩く事10分、北府駅に到着。旧名は西武生駅と言い、福鉄の車庫および工場がある心臓部でもあります。以前はいい雰囲気の草枯れた古い木造の駅舎が建っていたらしいのですが、最近以前のイメージを残したまま新しい木造の駅舎に生まれ変わりました。これも沿線の行政支援の賜物なのかもしれません。福井鉄道は平成19年に財務内容の悪化による銀行融資の凍結により自主再建を断念しており、主要株主だった名鉄から沿線各市(福井市・鯖江市・越前市)および福井鯖江の各商工会その他公的機関が株式を引き取った上で、現在は実質三セクみたいな形で再建の途上にあります。要するに公共交通を私企業に任せてたら立ち行かなくなっちゃったから公的資金ぶっ込んで、昔からの株主に手を引いて貰った上で行政が支援していると言うよくある構造なのですが、どのみちこれからの地方鉄道は大半が公的支援がないとどうにもならないとは思う。支援されなければトワカンみたいに廃止になるだけなんだよな。残酷だけど。

    

当時の雰囲気を残したまま新装開店した北府駅には福井鉄道の資料館的なスペースが設置されていて、そのヒストリーや昔の急行札やサボ、廃止された南越線や鯖浦線のキップなんかが展示されています。しかし南越線とか鯖浦線ってのはとても鉄道を通すほどの需要がある地域を走っていたとは思えないのだが、そこはやはり気候の厳しい裏日本、国鉄から離れた街には冬場の交通・物流の手段としての鉄道が渇望されていたのかなと。それにしても南越線の駅名と言ったら「社武生」「五分市」「岡本新」とかいちいち渋くてたまんないっすねw

  

雨に濡れる北府駅ホーム。武生に向かって大きく左カーブした途中にあり、ホームも湾曲しています。奥に見えるのは旧西武生工場、今は北府工場って事でいいのかな?建て直された新しい検修庫の横には電気機関車のデキ3と600型、200型のトップナンバー201編成が留置されておりました。201編成に関しては連接台車を外され編成を解かれており、アーチバーのくっそ古い仮台車を履かされて静かに雨に濡れております。噂では201編成はお鉄用語で「落ちた」らしいのだが、連接面をブルーシートで巻かれた姿を見ていると確かにそうなのかなと思わざるを得ないちょいと悲しい状態。デキ3は福井鉄道唯一の凸型電機ですが、現在は本線を走る事はなく工場内の入換が主な役割だとか。600型は東山線から移籍した610型の単行用両運転台バージョンなのだが、高床車はなるべく動かしたくないし、かと言って単行は800型で間に合ってるしみたいな中途半端な状態で、貸し切りのイベント用に使われる程度の存在らしい。

 

武生行きホームから北府駅の駅舎を。駅の近くに県立高校があるようで、日中の駅の利用者はほとんどが高校生。いつでもどこでも、地方鉄道の大事なお客様はクルマを使わない学生さんですね。三々五々にホームに集まる高校生の声でちょっと賑やかになったホームにやって来た800型。

   

北府は旅客上は無人駅ですが、工場と留置線のある運転上の要衝ですから、越前武生から車両交換で回送電車が引き上げてきたり、検修庫に工場担当の従業員が向かったりと人の動きがある駅です。福井方面の本線を逆走して留置線に引き上げる回送列車、留置線からさらに検修庫へ転線するために転轍機を回す姿なんかをぼんやり見ていると、時間なんかすぐに経ってしまうな。


さっき武生に向かって行った770型が武生到着後すぐ回送で戻って来てしまったので、そうなると次の福井方面の電車は当然武生の3番線で待っていた200型になる。カーブに車体を揺らしながら北府駅へ入線する200型、どうやら今日は終日運用に入ってくれるみたい。これに乗って北府駅を後にすることにしましょう。

結局なんだかんだで1時間くらい滞在してしまったな。
200型のボックスシートに腰を下ろすと、ようやく腹が減った事に気が付いた(笑)。
次回へ続く。
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