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青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

夏なれど、色はセピアの山の街。

2023年08月03日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(昔からこの名前です@山の街駅)

「こないな駅、カメラで撮ってどうするーん?」 ・・・通りすがりのオカンに言われた強烈ジャブ。 なんか味があっていいと思うんだけどね・・・ 急勾配に挟まれた、その名の通りの「山の街」駅。山の中の新興住宅街に出来た新設駅みたいなイメージを勝手に持っていたのだけど、どっこい開設当時の昭和11年からこの名前らしい。そもそものこの駅、当初は鈴蘭台駅と箕谷駅の間にあった信号場で、その名も「峠信号場」という名前だったそうな。「とうげのしんごうじょう」から「やまのまち」なんて、何ともプラレールチックなネーミングだなあと思う。よく見ると、有馬口側の出口に立っている駅舎は、望楼のような二階建てになっていて、かつての信号場の建物っぽいんだよねえ。神戸電鉄に詳しい方、連絡お待ちしています。

夏休みも近い、部活帰りの中学生が賑やかに通り過ぎる山の街の住宅街。神鉄の線路と有馬街道に沿って、昭和40年代から開発された北六甲のニュータウン群ですが、既に開発から半世紀が経って、当初の入居者たちはもう会社勤めを終えている世代になっています。これは感覚的な話になってしまうのだけども、山の街駅周辺の「少しセピア色っぽい、時を経たニュータウン感」が、個人的にはものすごい神鉄を象徴するパブリックイメージ的なものとしてあるんですよね。沿線住民の高齢化と通勤客の減少は、対バス戦略と並んで神戸電鉄の大きな課題でもある訳ですが。

谷上方面からの急勾配を全力で登ってくる5000系の「しんちゃん・てつくんラッピングトレイン」。箕谷からの1.7kmで、80m近く高度を上げてきます。ほぼ断続的に50‰の区間ですね。

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万葉の、歴史ゆかしき名湯へ。 

2023年08月01日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(温泉場への乗り換え口@有馬口駅)

神鉄の電車は、そもそもが「神戸有馬電気鉄道」として、神戸市街から有馬温泉を結ぶ鉄道として建設された経緯があることから、湊川から有馬温泉が有馬線、有馬口から三田が三田線と分かれています。本来であれば湊川~有馬温泉が本線格となりましょうが、普段の電車は三田方面に直通してしまうので、有馬温泉へ行く客はここで構内踏切を通ってお乗り換えになります。浦賀へ行く京急本線と久里浜線の関係みたいなものだろうか。

有馬口駅に同時進入する、区間運転の温泉ローカルと新開地行き。日中の有馬温泉~有馬口間は、時間4本の15分間隔。2編成を使用し、有馬口の4番線で発着。有馬口で上下の電車との接続を取り、有馬温泉駅の1面2線のホームを使って交換を行います。この日は6500系の3連と1100系の3連が交互に発着していましたが、新型6000系の3連バージョンである6500系は、今後の増備によってゆっくりと1000系列の3連を置き換えていくことになるのでしょう。

有馬口~有馬温泉間は単線。有馬口を出ると、武庫川の支流である有野川と有馬川の分水嶺を越えて行く山深い区間となる。少し長めのトンネルを抜けるとあっという間に有馬温泉の駅。さすがの三連休、温泉街へ向かう人波は多く、駅前のバスターミナルに到着しては出て行く大阪梅田行きの直行高速バスも満員。関東圏の人々にとっての箱根のような場所なのだろうか。

古く万葉の時代から栄えた国内屈指の名湯である有馬温泉。「有馬山  猪名の笹原風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」と詠んだのは紫式部の娘である藤原賢子(たかこ)。 式部ゆかりの温泉街へ向かうのは、キャスター付きのキャリアを引くインバウンドの観光客の姿。有馬温泉は、連休の賑わいのさなかにありました。折角有馬まで来たからには、旅の足を休めてちょっと温泉で一休みとも思ったのだけど、まーだ時間が早いですし、こんな時間から有馬の熱い湯に浸かったらヘロヘロになってしまってその後何もやる気なくなっちゃうんでやめときます。一回入ったことあるしね、金の湯。

折り返しの準備を終え、出発待ちの1107F。有馬温泉に限らず、温泉街の終着駅ってのはすべからく頭端式ホームであって欲しいと思う。飯坂温泉とか別所温泉とか、温泉場に向かって敷かれた電車は、そこが目的であって、そっからもう線路を伸ばす必要もない。そういう駅に共通した何か・・・と言われたら、駅の改札口から温泉場へフラットに出て行ける導線なんじゃないかなと思う。洒落た駅舎の塔屋に立つ「神戸電鉄」の看板。夜になればネオン灯って、またいい雰囲気になるのでしょうね。

神有(しんゆう)の 時は流れて 幾星霜 湯客は続く 名泉の里。

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裏六甲、奥の細道。

2023年07月30日 10時00分00秒 | 神戸電鉄

(お得に美味しい@神鉄おもてなしきっぷ)

今回の神戸電鉄訪問に使用したのが、企画乗車券の「神鉄おもてなしきっぷ」。神戸電鉄の1日フリー乗車券と、沿線の飲食店で特典メニューがいただけて1,200円と大変お得なキップになっている。確か前回来た時にも似たような企画乗車券を買っているのだが、その時は折角の特典も使わずに、ひたすら全線乗り潰しに向かってしまったのを覚えているのだが、そこまで急ぐ旅でもなし・・・ということで、再び神鉄電車の人に。

午前中は長田と鵯越の駅でがっつり電車撮りをしていたら、あっという間にお昼。フルーツを並べた駅前商店が迎える箕谷の駅で、早速「おもてなしきっぷ」の権利行使を目論む。箕谷は、六甲山の北麓にある谷あいの街で、背後には山と神戸の都市高速が迫るニュータウン。駅前から三ノ宮駅前行きの直行バスが出ていて、朝ラッシュ7時台10分に1本・乗り換えなし30分450円。神鉄、朝ラッシュ12分に1本・新開地回りで乗り換えあり40分580円。どっちにどのくらいのニーズがあるのだろう。この「バスとの闘い」というものは、神戸電鉄全線に言えることで、有馬・三田線では神戸市交、神姫、阪急バスと、粟生線では圧倒的に神姫バスとのシェア争いが続いていて、長年会社の収益の圧迫要因ともなっています。

湊川から鈴蘭台へは六甲山地を縦断し、そして鈴蘭台から有馬・三田方面へは裏六甲に開発された山間地のニュータウンを走る神鉄有馬線。鬱蒼とした裏六甲の山中、奥の細道といった雰囲気のカーブを曲がり、50‰の急勾配になだれ込んでくる最新鋭の6000系。構図からは切っていますが、この上を高い高架で阪神高速7号北神戸線が通っています。山があれば長いトンネルを、谷があれば高架橋を掛けている高速道路と比べると、鉄道はそれこそ開業した1928年(昭和3年)時点の線形を基本的には踏襲していることから、列車の高速化も出来ているとは言えません。線路はこの辺り山の中をなんとか50‰で収めようとあっちへ曲がりこっちへ曲がりしていて、往時の建設の苦労がしのばれます。

そして、箕谷駅を出て鈴蘭台へ向けて50‰の勾配に立ち向かう1360Fリバイバル。基本的に4両運転が大半の有馬・三田線、3連が多数を占める1000系列を捕まえたかったら粟生線方面に行ったほうがいいんですが、リバイバルの4連をスカッと編成で撮りたかったんよね。先ほど鵯越の駅で見送った編成を、三田から戻ってくる時間を見計らってパチリ。床下の艤装が武骨でクラシックで、うーん・・・好きです!ってなるよね。

お目当てのリバイバルを手堅く編成でまとめて、駅前にあった「伝統自家製麺・いけや食堂」さんへ。「神鉄おもてなしきっぷ」適用店舗のうどん屋さん。ちょうど三連休のお昼時とあって外まで並ぶ混雑であったが、しょせん一人なので空いた隙間のカウンターに滑り込んだ。大盛りとり天ぶっかけうどん。これが特典のチケットでいただけてしまうのだから恐れ多い。冷たく締めたうどんもコシがあって美味しかったが、上に乗っているとり天がバカ旨く、持って帰る人もいるみたいで、名物なんですかねえ。ともあれ、ごちそうさまでしたなのであります。

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源平の 歴史に残る 逆落とし。

2023年07月28日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(鵯越の坂落とし@鵯越駅)

時は1184年(元暦元年)。数々の戦いの中で功を遂げ、朝廷に近い位置に上り詰めて権勢栄華を極める平家一族。傍若無人さを極める圧政に苦しむ中、平家の総大将ともいえる平清盛に立ち向かったのが源頼朝・義経を中心にした源氏の一族。国を東西に分かつ戦いの中で、両軍が相まみえた摂津国一ノ谷。陣を張る平家側の兵士たちを、松明をくくりつけた鹿とともに断崖絶壁の上から急襲し平家側を撃破した源氏軍。その危険を顧みぬ勇猛な進撃は、「鵯越の坂落とし」と呼ばれ、後世に語り継がれる源平の戦いの一幕ともなっています。

そんな歴史に名を遺す「鵯越」の地を、50‰の急勾配で越えて行く神鉄の電車たち。トンネルの向こうのレールが見えないあたりに、その勾配の厳しさが窺い知れます。神鉄の勾配は最大で50‰となっていて、1kmで50mを登るくらいの坂道が最大値になっています。急勾配をどこもきっちり50‰で収めているところを見ると、おそらく最大で50‰を超えないような規格で建設されたと思われるのですが、神鉄の恐ろしいところは総延長約70kmの営業距離の約8割が勾配区間で、そのうち2割が50‰。ひたすら山坂を上り下りしている路線ということになる。なんともまあ、足腰の鍛えられる路線だこと。

準急は通過し、たまに思い出したように普通列車がやって来て、六甲山系に登るハイカーたちを降ろしていく。この駅から登るのであれば、菊水山だろうか。菊水山と言えば、それこそ鵯越から鈴蘭台にかけての六甲山中に菊水山駅という秘境駅があったのですが、平成17年に休止。ほぼ、菊水山に上るハイカーしか使わなかったと聞き及びますが、どっこい駅は廃駅となった今でも設備が現存していて、車窓からその姿をお手軽に見ることが出来ます。

駅前にあった「ひよどり商店」という茶店兼酒店。昔ながらのコカ・コーラの看板があって、いかにも古くからの街の景色を見守っているようだった。休日はやっていないようだったけど、かつてはハイカーたちの喉を潤し、一服つけるような駅前のオアシスだったのだろうか。以前来たときは、人の暮らしと住民の顔がもう少し見えたように思う鵯越の駅。「里山キッチン」の看板を掲げた弁当屋をはじめ、周辺の店も軒並みシャッターが降りていて、かなり利用状況には厳しさがあるのは気がかりなところ。

リバイバル塗装が、歴史の谷を越えて行きます。

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シンテツ・ダウンタウン・アンダーグラウンド。

2023年07月26日 17時00分00秒 | 神戸電鉄

(急傾斜地の住宅街@神戸電鉄・長田駅)

湊川から乗った西鈴蘭台行きの各駅停車を、長田で降りる。湊川から1コしか乗ってない。湊川から長田の駅間距離は1.9km、距離だけであれば歩いても来れそう・・・となるのですけど、標高0mの湊川を出るとすぐさま六甲山地越えに向けての急勾配に差し掛かる神鉄電車。長田までで約70mの標高を稼ぐため、駅間の平均勾配は35‰を超えます。この蒸し暑さの中、とてもじゃないがそんな登り坂を歩いて来れるほど元気はありません。長田の駅は住宅街の中の無人駅。かつては駅員配置だったんでしょうけど、神鉄もだいぶ合理化が進んでると見え。自動改札を導入して駅は無人化、鈴蘭台のお客様センターで集中管理みたいなパターンの駅がほとんどですね。

駅前からは六甲山地に向けての前山を切り開いた住宅街と、海へ続く坂道に高層公団住宅が立ち並ぶ様子が見え、イメージとしては京急で言うところの京急田浦や安針塚とか逸見のような、そんな風景。そしてこの駅の南側には、線路に沿って公団住宅へ続く歩行者用の小道が続いていて、房王子町の踏切を抜けて長田の駅へ入ってくるカーブを抜ける列車を撮る事が出来ます。この長田カーブは神鉄定番の撮影地ですが、カーブの内側には桜並木が続いているので、春の時期には実に良い撮影ポイントになるんでしょうね。湊川からの坂道をスイスイと登って来た神鉄5000系。三田線・粟生線ともこの車両が中心選手って感じで、神鉄初のインバータ制御&オール電動車。山坂の多い線形に対応するため、定速運転のシステムが搭載されています。

神鉄と言えば・・・なこの車両、神鉄1000系。この1000系列は1000・1070・1100・1150・1200・1250・1300・1500etc・・・と各系列に亘り製造年次から仕様から組成から様々な車両が作られていて、そこがまた面白みの一つ。ざっくり言えば1965年の製造開始から1970年代前半にかけて製造された2ドアタイプと、その後に製造された3ドアタイプに分けることが出来ます。高度経済成長の中、沿線の開発ラッシュによる乗客の増加を増備増結で支え、神鉄の中でも一大ファミリーであった1000系列。しかしながら、老朽化と5000~6000系の新車導入による代替わりにより徐々にその数を減らしているのが現状。やって来た1105先頭の小野行き。1000系の中でも、真ん中にサハ車を挟み両側に前パン先頭電動車をくっつけた1100系列が一番カッコいいですかね。

神戸電鉄・中興の祖とも言える車両がこの3000系。自分なんかの小さい頃は、この3000系が「神鉄の最新型電車」であった。特徴的なのは、各車両のドア上にある出っ張りで、ここに物はさみ防止センサーみたいなのが付いていて、乗降の安全を補助する装置ともなっています。1975年から1991年まで16年間に亘る長期間の増備を経ている辺りは、伊豆箱根の3000系とか、中規模の私鉄にはよくある話。この3017編成が1991年に作られた最終増備車ですが、もう30年以上走り続けているんですね。

1000系シリーズ、1300系の4連。準急の三田行き。神鉄の優等列車には特快速・急行・準急と三つの種別がありますが、現行ダイヤだと特快速は有馬線方面からの平日朝の上り2本だけ。前回訪問した際は、夕方の粟生線にも下り特快速とかあったんですけど、コロナ減便の余波ですかねえ・・・ちなみに優等で唯一終日運転されているのがこの「準急」で、長田から鈴蘭台の間の丸山・鵯越を通過するのみのささやかな優等列車になっています。

1151編成のメモリアルトレイン。井の頭線を思わせるような淡いグリーンのカラーリング。神戸電鉄の鉄道開業90周年記念事業として、4連の1360編成が「オレンジ×シルバーグレー」そしてこの1151編成が「スプリンググリーン×シルバーグレー」というかつて使用されていた塗装に身を包んでいます。2018年からの塗装変更なので、もう走り出してから結構長いんだな。神鉄というと、基本的にはオレンジ系のカラーリングで走っている印象が強いので、こんな涼やかな塗色で走っていたとは驚きます。戦後間もないころの一部車両に使われていた塗装なのだそうで。

山に向かって延びて行く住宅街、神戸らしい風景のある長田の街。それも、高級住宅街や異人館が広がる生田や山手のいわゆる「六甲モダニズム」の風景ではなく、どちらかと言えば港で働く労働者や夜のネオンの街で働く人々の暮らしというか、ダウンタウン然としたアンダーグラウンドな切り口の神戸がある。観光客や外国人には決して見せない、しかしながらそれも確かに神戸の顔。そんな少し斜に構えたような街並みを登っていく神鉄電車。昔も今も、庶民の足なのでしょうね。

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