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青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

荒川の 流れ漱ぎて 岩肌に。

2022年02月22日 17時00分00秒 | 秩父鉄道

(うつりみず・ゆらめき@親鼻橋梁)

夕暮れ迫る親鼻の鉄橋は、荒川が刻む河岸段丘を飛び越える、大きなガーター橋。赤いレンガで積まれた橋脚の見事さは、いつでも変わらない秩父路のシンボル。モチーフを探して河原を彷徨えば、早い流れの脇に見付けた小さなワンド。僅かながらに流れ込みがあるので鏡と言う訳にもいかず、くにゃくにゃと揺らめく水に映り込む元東急8590系。秩父・富山と自分の好みの地方鉄道に現れるこの車両。特に思い入れがある訳ではないけれど、横浜や二子玉川でよく見た顔も、すっかり地方暮らしが板についた感じがあります。

夏であれば川遊びに興じるファミリーや、バーベキューで賑わう親鼻鉄橋の河原も、冬のこの時期は静かなもの。ただ、カメラを握る人々(特に秩鉄ファン?)にとっては冬の親鼻河原こそ至高じゃないですかね。きれいな北関東の空気に、赤々と沈んで行く鉄橋越しの夕陽はこの時期のお楽しみ。鉄橋が南北に走っているので、荒川の下流側に行けば年中列車&夕焼けの構図は作れるんだけど、やっぱ夕焼けは冬の澄んだ空気の方がいいんである。冬の両パン時期は、朝の三輪から始まって夕暮れの親鼻鉄橋でシメるのって結構無意識のルーティーンみたいなところがあるかもなぁ。意図してる訳じゃないのに、この日もついフラフラと上長瀞の駅を降りてしまったので・・・

この日は西の空はそこまできれいに抜けず、雲混じりの夕暮れ。それでも、雲間から漏れ射す夕陽を背景に、荒川の流れをメインキャストに迎えて一枚。瀬を速み、岩を漱ぎ、泡立つ荒川の流れ。太陽が西秩父の山並みに隠れる頃合い、返空のヲキ車を連ねた原谷行きの貨物列車が親鼻の鉄橋に乗っかったところをパチリ。夕映えの空に、デキの両パンと盃形のヲキがシルエットを結びました。

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春は皆との別れ、皆野の別れ。

2022年02月20日 16時00分00秒 | 秩父鉄道

(町の中心駅にも、合理化の波@皆野駅)

秩父鉄道は、首都圏を走る鉄道ながら、長い事SuicaやPASMOなどのいわゆる「交通系ICカード」というものが使えませんでした。殆どの駅で駅員さんが窓口に居て、出改札業務をこなすオールドスタイルの駅務はこの鉄道の特徴の一つでもあったのですが、とうとう今年の3月から秩鉄にもPASMO導入が決定。それに伴い、大幅な出札窓口の合理化が行われることになりました。3月以降に有人窓口が残るのは、羽生・熊谷・武川・ふかや花園・寄居・長瀞・秩父・御花畑・影森・三峰口の10駅のみ。他の27駅はPASMOの簡易リーダー導入により、一斉に無人化が図られることになります。

この報道が流れて来た時は、流石に驚きましたねえ。秩父線の駅ってーと、どんな小さい駅でもとりあえず一人は嘱託と思しき年配の駅員さんがいて、30分に1本くらいの電車が着くたびに、改札だけはしっかりやってた。改札の他にも、たまに訪れる観光客にフリー乗車券を売ったり、運転日にはSLの案内や指定席券の取次ぎをしていたりね。自動券売機もあったけど、窓口で乗車券頼むとフツーに硬券で出て来たりしてたから、それこそ切符趣味の人にとっては秩父鉄道って貴重な会社だったんじゃないかなあ。勿論、撮り鉄的な目線から見ても、ローカル私鉄的な路線でここまで各駅に駅員のいる鉄道会社ってのは魅力的だったんですよ。写真のモチーフにさして貰った事もあるし、何より人の姿がある事による安心感と言うか・・・ね。

あまりにもドラスティックな秩鉄の合理化策。中間の小駅はしょうがないにしても、市の中心駅である行田市の駅もそうだけど、ここ皆野の駅まで無人化の対象とは驚いたものです。一応町の玄関口の駅でもあるし、SL停車駅だからねえ。皆野。まあ私なんか古い人間だから、駅の役割って何だろう、駅における窓口の役割って何だろうって改めて考えてしまう。ピッと入ってピッと出るだけであれば、人などは必要ないのかもしれないけど、緊急時の連絡とかトラブルとかだってあるだろうしね。それこそ貨物列車の多い秩父鉄道だから、時刻表にない列車もやって来る訳であって、駅の安全要員としても駅員がいる意味はあるとは思うのだけど・・・おそらく、各駅に勤めていた嘱託の駅員氏については、そのまま職を辞する人も多い事と思います。この施策は、地味に地元の雇用って面でも後退するけど、うーん。コロナ禍で傷んでしまった鉄道会社には、一刻も早い合理化が必要なのも分かるのが辛いところ。

街の中心駅ですら、春からは駅員の姿が無くなること。コロナがいみじくも地方鉄道の疲弊と窮状の針を進めたこの2年。コロナがなければ、この駅から人が消えることはなかったのか。それとも、ICカード導入は前向きな設備投資による合理化として受け止められ、コロナ関係なく人の姿は消えていたのだろうか。駅前の川魚屋から、鰻を焼く芳しい香りが漂う皆野の駅。郷愁を誘う赤屋根の駅舎を掠めて、返空7205レ。

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今もなお 古豪健在 意気高し。

2022年02月18日 17時00分00秒 | 秩父鉄道

(トップライトの中を@三ヶ尻~武川間)

三ヶ尻の工場で荷を下ろし、身軽になって戻って来た7205レ。再び鉱石を積みに今度は武州原谷を目指します。現在の秩父鉄道、基本的に貨物列車には7000番台の列番が付与されておりますが、この日のデキ105は72**のスジを担当。朝の7204レで影森(三輪鉱山)を出て、返空7205レで原谷、積載7206レで三ヶ尻に行き、三ヶ尻から戻りの返空7207レで武川まで戻ったところでカマ替えということになった模様。個人的には72**の行路は日中の光線がいい時間帯に影森~三ヶ尻を一往復半もしてくれるので、なかなか撮りごたえのあるスジ。武川のストレートを進む姿は、今もなお古豪健在と言わんばかりの意気軒高さが見えます。

昨秋、キレイに塗装し直して出場しているデキ105ですが、流石に歴戦の傷跡は隠し切れませんで、至る所に地の塗装と言うか鋼板部分の膨れや歪みが見え隠れします。製造65年余を経過している電気機関車ですから、さもありなんという感じ。昨年のデキ108引退の際は大フィーバーに湧いた秩父沿線ですが、秩父の機関車もジワリジワリと一線を退くものが増えて来ました。現在の100番台は102~3・105~6の4両のみ。自分が秩父に通い出した時はこれに104・106・107~8の8両態勢だったから、半分になってしまったんですね。以前の秩父鉄道の被写体と言えばSLパレオが一番人気で、どちらかと言えば電気機関車を撮影する人ってのは日陰者だったような気がするのだけど、最近は「私鉄電機」という希少性もあって、マニア的な耳目を集めるようになった秩父の貨物列車。その価値は、日ごとに高まっているような気がします。

青空の下、武川の貨物ホームで発車待ちの7205レ。平成19年前後にセメント貨物が消滅し、最近は熊タへの接続がなくなって石炭や東武・メトロ(日比谷線)の新車甲種もなくなり、機関車が必要なシチュエーションもだんだん少なくなっている秩父鉄道。さらなるカマの減車については、これからの貨物の運用数の減少によって落とす事はあるかもしれないけど、今のところ予定はないそうです・・・なんて事を書いていたら、先日東上線の10000系南栗橋出場回送にデキ105が使われたと聞いてぐぬぬ、となってしまった。東武マルーンに茶デキというマッチングの美しさ、堂々甲種回送のハナに立つデキ105と東武10000系の組み合わせは、素敵が過ぎて辛かった。そうか、東上線~伊勢崎線の間の東武車両の回送は、まだまだ秩父のデキが必要なんですね。

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ハッピーバレンタイン、デキ105。

2022年02月15日 22時00分00秒 | 秩父鉄道

(乗務員交替@武川駅)

青いナッパ服にいわゆるドカジャンを着込み、運転台へ乗り込んで行く機関士氏。秩父鉄道の鉱石列車は、影森・武州原谷~三ヶ尻間を運行しておりますが、乗務員の交替などは武川駅での停車中に行われています。現在一日に上下で9往復の貨物のダイヤが組まれている訳ですけど、乗務員の交番とかどんな行路で行われているのだろう。秩父の貨物は距離以上に退避が多くて時間がかかるので、運転台と言う持ち場を離れられない機関士の仕業はそれなりに重労働なのではなかろうか。年季の入ったカマだけに、冬は寒いし夏は暑いしでしょうからね。

武川で発車を待つ7204レ。三輪で積み込んだ大量の石灰石は、これより熊谷市の三ヶ尻にある太平洋セメント熊谷工場に運び込まれ、セメントに加工されます。以前はセメント製品の積み出しも貨物列車でやっておったのですが、自分が秩父に通うようになるほんの少し前にセメント輸送はトラックに切り替えられて終了。今思えば、もう少し早く秩父鉄道の魅力に気付いていれば、タキ1900のセメント貨物も撮影出来たんだがなあ・・・と後悔しきり。この趣味はとかく後悔と反省の繰り返しが波のように訪れるもの。それはカルマと割り切るしかないのかもしれない。

重々しいツリカケサウンドを響かせ、武川の3番線から1,000トン貨物を牽き出して行くデキ105。正面がちに向いたところでワンショット。秩父のデッキ付きのカマは、車体前面下部に付いたプレートの車番をきれいに抜けるとなんか嬉しいよね。

三ヶ尻線の本線へ入ったところでもうワンショット。武川発車は、もっと先の三ヶ尻寄りのストレートで狙ってる人が多いんですが、自分はここの角度が気に入っております。ヲキの側面を残しつつS字っぽく仕上げるのが好き。それにしてもデキ105、光の当て加減で結構色味の変わるカマ。逆光すぎれば黒潰れるし、トップライトだとぶどう色っぽく見えるし、順光過ぎればかえってのっぺりとして面白くないし。こんな感じでサイドからやや半逆光気味だと、イイ感じのチョコレート色が出て来る感じです。

一日遅れましたが、デキ105で、ハッピーバレンタイン。

 

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空っ風 吹いて武川 冬の空。

2022年02月13日 17時00分00秒 | 秩父鉄道

(北関東の冬の空@武川駅)

青空の下、満載の鉱石を積んで武川のヤードに到着したデキ504牽引の貨物列車。重い雪雲が低く垂れ込める日本海側と違って、比較的晴れの日が多いのは関東の冬の特徴ですが、こと北関東については、冬の時期の「晴れの質」が一段と高いような感じがします。秩父鉄道には、架線凍結などの多い厳寒期に集電性能を高めるため、デキのパンタグラフが両方上がる「両パン」の時期に来ることが多いのだけども、そう言えばあまり天気が悪かった時がない。新潟や会津地方に雪を降らせ、三国山脈や帝釈山脈を越えて北関東に吹き付ける空っ風は・・・と筆を進めたところで、あ、いや、ここ深谷は埼玉だっけか。という事を思い出すのであった。まあでも埼玉の北部って群馬・栃木の北関東工業ベルトと関係が近いし、みそポテト・いもフライなどのイモ食文化やおっ切り込み・煮ぼとなどの小麦食など、食の面から見ても共通点が多いし、北関東みたいなもんだよね。

個人的には、ちょうど秩父鉄道が通っている位置が、南関東と北関東の境目に当たると思っている。秩鉄より北側とか、東武電車やJRだと栗橋や久喜以北は埼玉だとしてももう「北関東」の範疇ではないのかと。高崎線や東武電車に乗っていると、その辺りから客人のおっさんの口調が明らかに違ってくるし、そして何しろ冬場になると、幾重にも続く冬ざれした田んぼの茶色と、車窓に広がる空がこの日の様にどこまでも広くて青いのだ。秩父のデキの色は、澄み切って鮮やかな、そんな北関東の冬の空の色を映しているのではないかと思う。

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