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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

MOTHER

2023年04月12日 | 映画(ま行)

母の支配力から逃れられない

* * * * * * * * * * * *

実際に起きた、少年による祖父母殺害事件に着想を得たもの。
さすがに、重いです。

男達と行きずりの関係を持ち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子(長澤まさみ)。
実家にお金をせびりに行っても、あまりにも度重なることなので
すっかり愛想を尽かされ、絶縁すると宣言されてしまいます。
彼女は息子・周平(少年期・奥平大兼)に異様に執着。
自分に忠実であることを強いるのです。
母以外に頼る者のない周平は、なんとか母の要求に応えようともがきます・・・。

秋子は、生活保護などを受けたとしても、
パチンコなどにつぎ込んでしまい、いつもお金がないのです。
なんとか仕事に就こうなどという意欲もゼロ。
従ってなんとか男にすがって生きようとするも、こんな女に付く男はやはりクズ男。
周平の妹の父となる男(阿部サダヲ)は、
秋子の妊娠を知ると去って行って、
その後ようやく秋子の生活が底辺なりに落ち着いた?と思えるときに
またやってくる、どうにもならないヤツなのでした。

母はいきなりいなくなって何日も帰ってこなかったり、
時には住む家もなく、母子3人でホームレス状態ということも。
周平は小学校も不登校で、その後学校へも行っていません。
こんな、ネグレクトそのものの母なのに、彼は彼女のそばを離れません。
ある程度大きくなって、母から離れるという選択肢もあったのですが・・・。
こんな生活なら施設の方がよほどマシとも思えます。
実際そのように勧める福祉関係の職員もいたのです。
それでもなお、周平は母のそばを選んだ。

心理学的に言う「グレートマザー」そのもののような秋子は、
子供を支配し抱え込むあまりに、周平を少しずつ壊していっているようです。

このような厳しい生活状況であればあるほど、周平は母を頼りにするほかない。
それはそろそろ自立を迎える年齢になっても、
心の奥深くに刷り込まれてしまっていたのかも知れません。

そしてやがて、恐ろしい事件に繋がっていく・・・。

このとんでもない「母」役を、長澤まさみさんが素晴らしく演じていました。
そして奥平大兼さんもこれが初出演だったのですね。
私は彼も推しておりますので、皆様、よろしく。

 

「MOTHER」

2020年/日本/126分

監督:大森立嗣

脚本:大森立嗣、港岳彦

出演:長澤まさみ、奥平大兼、阿部サダヲ、夏帆、仲野太賀、土村芳、浅田芭路

 

生活破綻度★★★★★

ネグレクト度★★★★★

満足度★★★★☆


ノートルダム 炎の大聖堂

2023年04月10日 | 映画(な行)

世界的遺産を守れ!

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2019年に起きた、パリ、ノートルダム大聖堂の火災を題材としたものです。

2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で警報器が火災を検知するのですが、
関係者は誤報と思い込み、その間にも火は燃え広がっていきます。
天井裏で発生した炎は、聖堂上部から煙を噴き上げるのですが、
当のその内部にいた人々は気づかず、遠くから煙を発見した人が
SNSにその写真を載せるなどして、思わぬ所から徐々に火災の情報が広がっていきます。

そんなことで、消防隊が到着した頃には、大聖堂上部は激しく炎上。
そして、貴重なキリストの聖遺物は、管理が厳重すぎるあまり、
持ち出しに困難を極めます。

刻一刻と燃え広がる炎。
建材に鉛が使用されていて、火災の熱で溶けた鉛が
川のようになって流れ落ちてくるなどというシーンが恐い! 
一部の建材などが崩落。
飛び散る火の粉。
渋滞で消防車は進まない。
野次馬でごった返す街並み。
狭いらせん階段を重装備で登る消防士達・・・。

緊迫感と混乱、そんな様子がリアルに現されています。
なにしろ794年前にできたという建物、これを失えばその損失は計り知れません。
国宝どころではない、世界にとっての損失となってしまいます。
それを守るために、最後の手段の決死的活動に、名乗りを上げる消防士達。
こうした人々の奮闘が胸を熱くします。

結果的には、死者ゼロで鎮火を迎えることができたというのもスバラシイ!

この撮影には大規模なセットを炎上させた映像とVFXを融合させ、
また当時のSNS映像などからマクロン大統領の姿も所々に登場、
圧倒的なリアリティを生み出しています。
本来IMAXによる撮影だそうですが、私が見たのはミニシアター。
というか、うちの地方ではIMAXのシアターではやっていません。
残念・・・。
下手なSF作品よりもこれをぜひ上映すべきなのにな。

 

<シアターキノにて>

「ノートルダム 炎の大聖堂」

2021年/フランス・イタリア/110分

監督:ジャン=ジャック・アノー

出演:サムエル・ラバルト、ジャン=ポール・ボーデス、ミカエル・チリ=アン

 

緊迫感★★★★★

満足度★★★★☆

 


裸足で鳴らしてみせろ

2023年04月09日 | 映画(は行)

心を接近させながらも、ふれあうことができない二人

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父の不要品回収会社で働く直己(佐々木詩音)は、
市民プールでアルバイトをする青年柳瀬槙(諏訪珠理)と知り合います。
槙は身の不自由な養母・美鳥(風吹ジュン)と暮らしています。

槙と直己は、美鳥の願いを叶えるため、
直己が回収して手に入れたレコーダーで「世界の音」を記録することに。
槙が実際に世界を旅したフリをして、自分たちで作り出した「音」を美鳥に届けるのです。
サハラ砂漠、イグアスの滝、カナダの草原・・・。

そんなことをするうちに、直己と槙は心を接近させていきます。
しかし、互いにひかれ合いながら、ふれあうことができない二人は、
まるで子犬のようにじゃれ合い、格闘を始める・・・。

別に意識したわけではないのですが、
先日紹介した「消えた初恋」や「チェリまほ」と
似ているようでまるで似ていないストーリー。
さすが、リアルです。

「自分には磁力のようなものがあって、
大切な人に触れたくても反発してしまうんだ」

どちらが言った言葉だったのか、
しかしそのことにおいて二人は全く同意見で、気があってしまいます。
でも、だからこそなのです。
二人は優しくふれあうことができない。
慰め合いたいのに抱きしめることもできない。
乱闘による押さえ込みなのか、強い抱擁なのか、
見ていて分からなくなってきます。
まさに同極同士というワケなのでしょう。

直己は不要回収品の中から、ビデオテープやレコードなどをそのまま収集しています。
好きだったモノはたとえ見たり聞いたりできなくても手元に置いていきたい、という。
一方槙は、好きなモノは心に残っているから、別になくてもいい、というのです。
本作終盤で起こる悲劇は、二人のこの食い違いから起きたのかも知れません。

直己は嘘の旅の音ではなくて、実際に二人で旅をしようといいます。
それは、二人の交友の証しとして、何か形になって残るモノがほしかったから。
そして、実際その思いが強すぎたのです。

ごくさりげなく淡々と進む物語描写の後ろ側で、
感情が激しく揺れ動き乱高下。

いい作品だと思います。
WOWOW「映画工房」で紹介してくれなかったら、見逃すところでした。

<WOWOW視聴にて>

「裸足で鳴らしてみせろ」

監督・脚本:工藤梨穂

出演:佐々木詩音、諏訪珠理、伊藤歌歩、甲本雅裕、風吹ジュン

 

純愛度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


「グッドバイ」朝井まかて

2023年04月08日 | 本(その他)

幕末、自らの商才を開花させた女性

 

 

* * * * * * * * * * * *

菜種油を扱う長崎の大店・大浦屋を継いだ希以(けい)26歳。
幕末の黒船騒ぎで世情騒がしい折、じり貧になる前に新たな商売を考える希以に、
古いしきたりを重んじる番頭の弥右衛門はいい顔をしない。

――――――――

成功と落胆を繰り返しつつ、希以――大浦慶が経たいくつもの出会いと別れ。
彼女が目指したもの、手に入れたもの、失ったものとはいったい何だったのか。
円熟の名手が描く傑作評伝。

* * * * * * * * * * * *

 

幕末、異国との茶葉の交易に乗り出し、
最も外貨を稼いだと言われる女商人、大浦慶の物語。
私は全く知りませんでしたが、実在の人物。
これぞ、大河ドラマになりそうな波瀾万丈の物語です。

大浦屋は、長崎の油商だったのですが、
その「長崎」という土地柄もあって、慶は、外国との交易こそが商機と思うわけです。
ペリーの黒船が来て、世間は攘夷思想華やかな頃。

しかし当時のことですから、まずは周囲の人たちが
慶のそんな夢のような話を全く聞こうとしない。
そんなことできるわけない。
女のくせにバカなことを・・・と。

しかしそれでも、慶はアメリカでお茶の需要があると知って、
まずはお茶の栽培から始めるのです。
よほどの覚悟と先を見通す力がないと始められないことです。

ところで、西洋でお茶の需要といえばてっきり紅茶かと思ったのですが、
アメリカに輸出したのはやはり緑茶。
アメリカではそれに砂糖を入れるなどして飲まれていたのだとか。
まあ、紅茶に砂糖を入れたりするワケなので、それもアリなのかとも思いますが。
とにかくそれが大当たりで、彼女の商売は大きく成功を収めるのです。

そんな時期の長崎なので、坂本竜馬や岩崎弥太郎なども登場。

オランダ語や英語も、自力で学び覚えていきます。
一介の商人でしかも女性。
なんだか勇気の出る物語ですね。
実際にはこの時代、他にも多くのまだ知られていない活躍した人物がいそうです。
時代のうねりにワクワクします。

 

「グッドバイ」朝井まかて 朝日文庫

満足度★★★★★


アフロ田中

2023年04月07日 | 映画(あ行)

自分自身の証明

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彼女いない歴24年、アフロヘアの青年、田中広(松田翔太)。
高校時代のダメ仲間の一人が結婚するという知らせを受けます。
仲間のうち誰かが結婚することになったら、それぞれ彼女を連れて行こう、
と約束していたことを、田中は思い出します。
しかしもちろん田中には付き合っている彼女すらいません。
そんな折、アパートの隣室に美少女(佐々木希)が引っ越してきます・・・。

久能整クンも真っ青、というくらいの超アフロ、
恐いというかむしろダサいのですが、
それに反して田中は意外と小心者の小市民。

隣に越してきた美少女を見ても、ハナから高嶺の花と決めつけ、
アプローチしようとすらしません。
不思議なモノで、そんな時は向こうの方から近づいてきたりするわけで・・・。

小市民ではあるけれど、どこか行動が人とは違っていて、
独自性を持っている(変な方向にユニークとも言う)
つまり田中のアフロヘアは、人とは違う、
彼自身のアイデンティティの象徴でもあるのでしょう。
そしてそれが故に幸せになるとか不幸になるとかとは、また別の話。

実は誰でもどこかその人なりの「アフロヘア」を身につけているのだけれど、
なるべく隠しているのかもしれません。
もっとおおらかに、自分らしく生きられたらいいのにね
・・・という話だと私は理解します。

それにしても、このあくまでも独自性を保ちつつ、どこか茫洋とした感じ、
松田翔太さんにはぴったりの役柄でした。

<WOWOW視聴にて>

「アフロ田中」

2012年/日本/114分

監督:松井大悟

原作:のりつけ雅春

出演:松田翔太、佐々木希、堤下敦、田中圭、リリー・フランキー

 

独自性★★★★☆

コメディ度★★★★☆

満足度★★★★☆

 


冬薔薇

2023年04月06日 | 映画(は行)

開かない薔薇

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学校にも行かず半グレ仲間とつるみながら
友人から金をせびってダラダラと生きる渡口淳(伊藤健太郎)。
両親は建築用の土砂を船で運ぶ海運業を営んでいますが、
仕事は減っていく一方、従業者の老齢化や後継者に悩んでいます。
しかし、淳は両親の仕事に全く興味を持たず、会話もほとんどありません。

ある時、淳の友人が何者かに襲われるのですが、
それは淳の知る身近な人物の仕業で・・・。

 

この題名の意味を考えます。
寒い冬にゆっくりと美しい花を咲かせる、冬薔薇。
それは逆境にめげずに地道に頑張っていれば、
やがて美しい花が開くという暗示なのかと思いました。

淳が、どうしてこんなにもやる気なく半分ぐれてしまったのか。
それは過去に、彼の兄が幼い頃に父の作業現場で
事故で亡くなっていることに起因するようです。

両親は、あっけなく亡くなってしまった我が子に心を痛めるあまりに、
子供とマトモに接することが恐くなってしまったのかも知れません。
その兄よりもさらに幼かった淳なのに、
父からも母からも放置されて育ったようです。

父はいまだに、息子に対して思ったことを言えないし、
母は、自分が放置したために息子がこんな風になってしまったことを
うすうす分かってはいるようですが、今さらどうにもならないとあきらめている。

淳は服飾デザイナーを目指し専門学校に在籍はしているものの、
ほとんど授業にも出ず、よくない連中とつるんでダラダラ過ごすばかり。

しかし、こういうことが「逆境」と言えるでしょうか。
なんだか、自分がうまくいかないことを周囲のせいにしているようにも思えます。
そうではあるけれど、彼はなんとかこんな中から
自分で脱出していくように思えたのですが・・・。

苦い思いが残ります。

 

気になるのは、彼の友人との付き合いかた。
淳が「友達」だと思っている相手が一人いるのですが、
実のところお金を借りるなど、自分の都合のよいときにばかり近寄っていって、
相手のこともよく知らないし、何かをしてあげたこともない。
最後に淳が彼を頼ったときには「おまえなんか友達じゃない」ときっぱり言われ、
淳はそれに対してキレまくってしまうのです。

実は心を許せる友など一人もおらず、親にも頼れず、
孤独の淵に落ち込んでしまう淳。
そんな彼に声をかけたのが、やはり同じく「友達」のない男。

皮肉で先行き不安なラストに愕然としてしまいます。
どうやらこちらの冬薔薇は、開かないまま枯れてしまったのか・・・

 

<Amazon prime videoにて>

「冬薔薇」

2022年/日本/109分

監督・脚本:阪本順治

出演:伊藤健太郎、小林薫、余貴美子、真木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、板東龍太

 

ダメ男度★★★★☆

満足度★★★☆☆

 


生きる LIVING

2023年04月04日 | 映画(あ行)

生きることの意味を問う

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黒澤明監督作品「生きる」を、カズオ・イシグロの脚本により、
イギリスでリメイクしたものです。

本家「生きる」は有名な名作ですが、例によって、私は見ていません・・・。
この年で映画好きなどと言えば往年の名作、
特に黒沢作品ならすべて何度も見ているはず、などと思われがちですが、
全く見ていませんので、あしからず。
(威張ることじゃない)

舞台は1953年のロンドン、ということで、原作とはほぼ同時代。
冒頭シーンの画質や映し出される街の光景が、
まさしくそういう時代を感じさせるのが、すごいです。

 

これまで仕事一筋に生きて来た役所勤めのウィリアムズ(ビル・ナイ)。
ところがガンに冒されていることが分かり、余命宣告を受けてしまいます。
彼は、ヤケになって仕事を放棄し、
酒を飲んでバカ騒ぎをしたりしますが、満たされません。

そんな時にかつての部下、マーガレット(エイミー・ルー・ウッド)と再会します。
若くて快活、エネルギーに満ちた彼女。
茶目っ気のあるマーガレットは、実は密かにウィリアムズに
「ゾンビ」というあだ名をつけていたと白状するのです。

つまりは、まるで「生きる屍」のような・・・?
それで、ウィリアムズは思うのです。
これまで自分は本当に生きていたのだろうか?
せめて残り少ない命を、本当に生きてみようと思うわけですね。

そしてサボり続けていた職場に戻り、
これまでたらい回しの末放置されていた案件を実現させようと、動き始める。
その熱意は周囲の人をも巻き込むほど。

生きることの意味に真っ正面から立ち向かう感動の物語。
原作を見ていないので、どこが同じでどこが違うのか、
比較できないのはちょっと残念ではあります。
順不同ではありますが、やはり原作をみるべきか。

でも、お役所仕事の有様はどこの国でも同じだなあ・・・と思ってしまいました。
それと、クレーンゲームがこんな時代からあったとは・・・!

 

<シネマフロンティアにて>

「生きる LIVING」

2022年/イギリス/103分

監督:オリバー・ハーマナス

出演:ビル・ナイ、エイミー・ルー・ウッド、アレックス・シャープ、トム・バーク

 

生きることの意味を探る度★★★★☆

お役所仕事度★★★★★

時代表現度★★★★★

満足度★★★★★


「占」木内昇

2023年04月03日 | 本(その他)

選び取る道

 

 

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欲しい未来(こたえ)は、
自分が一番わかってる――。

恋愛、家庭、仕事……。
いつの世も尽きぬ悩みと不安にもがき、
逞しく生きる女性たちを描く、異色の「占い」短編集。

* * * * * * * * * * * *

木内昇さんの短編集「占(うら)」

短編集ではありますが、すべて同時期、日本の大正期を舞台としていて、
ときおり先に登場していた人物がチラリと顔をのぞかせたりもする、
連作形式となっています。

時代を大正期としたのは、文庫巻末対談集にもあるとおり、
日本が近代化するタイミングであり、女性の立場が変わり始め、
また占いの立場も大きく変わった時代を切り取ってみるためなのでしょう。

 

ここに登場するある女性は、占いに依存し、
自分の気に入る占いが出るまで、占い師の元に通い詰めます。
悪い結果ならよい結果が出るまで、と思う。
逆によい結果であれば、占い師が気に入られたいために適当なことをいっているのだ、と思う。
結果、いつまで経っても納得できずに、自分で新たな道を歩み出すこともできない。

また、人の運命というか、何かに囚われているものが見えてしまう女性がいて、
一時期、名占い師として人気を得るのだけれど、途中からイヤになってやめてしまう。

 

結局の所、自分の道は自分で納得して選び取って進むほかないのかも知れません。
結婚して家長のために尽くすという道しかなかった女性達が、
他の道を行く可能性がわずかに広がったというこの時代だからこそ、
占いに頼るということもあるわけですね。

占いといえば、やはりスピリチュアルな方向性に近いのですが、
本巻中の「鷺行町の朝生屋」はかなり恐い・・・。
こういうのもアリなのか・・・。

 

「占」木内昇 新潮文庫

満足度★★★★☆


チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~

2023年04月02日 | 映画(た行)

おとなの事情も交えて

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テレビドラマ「チェリまほ」を見たからには、こちらも見ない手はありません。
もちろんこちらも、風間太樹さんが監督を務めています。

テレビドラマ版の最終回は、クリスマスの花火の夜、
安達と黒沢の2人は共に過ごし、安達は魔法の力を喪失する・・・
ということだったと思うのですが、なんと、本作冒頭で明かされる衝撃の事実。
この夜は色々とゴタゴタがあって、まだ安達は童貞を喪失していなかったのです。

ということで、安達は魔法の力を持ったまま、もうしばらくの時が流れます。
本作はその時の出来事。
なんと安達が、長崎に転勤になってしまうのです。
このときに気持ちがすれ違ったまま、安達は長崎に行ってしまい、
双方なんとも言えない空虚な気持ちを持て余しつつ過ごすことに。
そんな安達ですが、その気持ちを紛らわすために仕事に没頭しすぎ、
ある日倒れてしまい・・・。

この先はちょっと、大人の展開になっていきます。
安達は言うのです。

「自分が倒れたことは、家族や本社には連絡が行ったけれども、
一番知らせたい大切な相手、つまり黒沢には連絡が行かなかった。
だから僕は、みんなに自分たちのことを知ってほしい」と。

そして、
「だから周囲に僕たちのことが知れても左遷されたりしないように、
しっかりと仕事をして会社に必要な人間になる。」

お~!!
あの、自分に全く自信がなかった安達のなんという成長具合でしょう。
感動してしまいます。

そしてまた、同居を始めた2人は、それぞれの両親のところに挨拶をしに行くのです。
ものわかりのよい両親達については、ちょっとできすぎかなあとは思うけれど、
まあいずれにしても本作はそうした理想のファンタジー世界である訳なので、
ここでいきなり現実的に反対し始めるなどという方がよほど白けてしまいますよね。

制度上、今はまだ「結婚」という形はとれないけれど、
周囲の人々に自分たちのことを知っていてほしいというのは
すごくリスキーではあるけれど、大切なことだなあ・・・と強く思います。

町田啓太さんは、一見クールだけれど、
そんな彼が安達とのことで内心ドキドキしているというのが、なんともキュンキュンします。
カッコ良くて、笑顔がステキでほわ~っとなってしまいます・・・。
つまり私は目黒蓮クンに限らず、イケメンで笑顔がステキなら皆大好き。
間口が水平線のように広いのであります。

そういえば、黒沢が安達に
「2人で旅行でもしようか。京都とか、函館とか。」というシーンがありました。
京都は分かるけどなぜ函館?と一瞬思いましたが、ピンときました。

この撮影の頃、町田啓太さんはNHKの大河ドラマ「青天を衝け」で、
新選組の土方歳三役をやっていたのではなかったか。
ちょっとクスリとしてしまいました。

<Amazon prime videoにて>

「チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~」

2022年/日本/104分

監督:風間太樹

原作:豊田悠

脚本:坂口理子

出演:赤楚衛二、町田啓太、浅香航大、ゆうたろう、草川拓弥

 

胸キュン度★★★★★

同性愛のおとなの事情度★★★★☆

満足度★★★★★


「消えた初恋」と「チェリまほ」

2023年04月01日 | テレビドラマ

胸の高鳴りがとまらない

 

「消えた初恋」と「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称チェリまほ)」。
双方、深夜枠で放送された30分モノの連続テレビドラマです。
私は、どちらもリアルタイムでは視聴していなかったのですが、
やはり目黒蓮さんつながりで「消えた初恋」を見てみました。
そして「チェリまほ」の方は、近頃朝ドラですっかりおなじみの
赤楚衛二さん出演ドラマをみたかったので。

それで今回わざわざ合わせてご紹介するのは、
この二つの物語は双方BLコミックの実写ドラマ化ということで、
極めて相似形にあるからなのです。

 

「消えた~」は、高校生男子・青木(道枝駿佑)と同級生の井田(目黒蓮)のピュアなラブストーリー。

きっかけは、ひょんなことから井田が、
青木が自分に好意を持っていると誤解してしまうというところから。
しかしこれまで恋愛経験もない真面目な井田は、
戸惑いながらもその気持ちに真剣に向き合おうとします。
そして井田に誤解され、焦ってしまう青木ですが、
彼と話をするうちに、次第に本当に井田のことが好きになってしまうのです。
おずおずと距離を縮めていく2人のピュアな思いに、思わず胸キュン。

特に井田くんは、男でなくても(?)惚れてしまう、ものすごーくイイ奴なんです。
自分の思うことは教師に対してでもきっぱりという。
いつも相手の身になって考え、優しい。
ちょっとぶっきらぼうで、でも時々微笑めばもう、
すっかり虜になってしまいます

 

「チェリまほ」の方は、社会人の2人。

安達(赤楚衛二)は、30歳になってもいまだに恋愛経験がない、
ちょっと自分に自信がない青年。
「30歳でまだ童貞の男子は魔法が使えるようになる」という都市伝説を耳にするのですが、
安達の30歳の誕生日に、なんとその通り、魔法が使えるようになってしまいます。
その魔法というのが、触れた相手の心を読むことができる、というもの。

そして安達は、混雑したエレベーターの中で、
職場の同期である黒沢(町田啓太)の心の声を聞いて、知ってしまうのです。
彼が、自分のことをとても好きだと言うことを。
黒沢は、イケメンで仕事ができて人付き合いもよく、
できすぎていて、逆に安達はちょっと苦手と思っていたのですが・・・。
黒沢は、同性の相手に対して、告白しても叶うわけがないとあきらめ、
これまで片思いに甘んじていたのでした。

・・・という、これもまたおずおずと接近していく、胸キュンのふたりの物語

 

 

イケメンのふたりが、恥じらいを持ちつつ接近していって、やがて気持ちが結ばれていく、と。
まあ、BLもののお定まりではありますが、
どうしてこういうストーリーが女子の心をぎゅっとつかむのでしょう?

たまたま同性同士の話というだけで、
普通の女子の初恋物語と結局は同じだからなのかもしれません。
同性同士の方がハードルも高いですしね。
男性はこういうストーリーをどう思うのか、伺ってみたいところではあります。

 

さて、このようなときに、同性間で、「好き」と思うことと、友情は違うのか?
と少し疑問に思うのですが、両作品とも、そこはきっぱりと線引きがされています。

というのも、青木にも、安達にも、
きわどいところまですっかり打ち明けることができる親友がいるのです。
その親友とは、ふれあいたいとか、相手のことを思うとドキドキするとか、
そういうことには全然なりません。
一定の相手にしか感じないもの、それこそがLOVEなんですね・・・。

恋心を伝えたい、伝えられない、
受け入れたい、だがしかし・・・
迷い逡巡する男達にたっぷり胸キュンしましょう・・・。

それにしても、彼らの住む世界は意外と理解のある心優しき人ばかり。
本当に、こういう人ばかりならいいんですけどね。
せめてドラマの中だけでも・・・という願望を描いているわけでもありましょう。

 

とても心に残っているシーン。
「消えた~」のなかで、青木が教育実習生と親しくなります。
しかし、青木が同性の井田のことが好きだということが分かると
急によそよそしくなってしまうのです。

青木は言います。
「僕は、始めから変わっていない。」
「誰でもいいってワケじゃない。」
この言葉こそがテーマそのもの。
誰かを好きということは、相手がどうであろうと
それはその人そのものの内面が表出したものだし、
同性であれば誰でもいいってわけじゃなくて、
ちゃんと相手その人を見ているのだ、と。
まずはその人らしい「個人」であることが重要なのであります。

 

つい、熱くなって長く語りたくなってしまう

 

ちなみに、双方のテーマソングの始めの方に「胸のたかなり」という言葉が出てきます

 

「消えた初恋」

2021年10月

出演:目黒蓮、道枝駿佑、福本莉子、鈴木仁、田辺誠一

脚本:黒岩勉

ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子

 

「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」

2020年10月

出演:赤楚衛二、町田啓太、浅香航大、ゆうたろう、草川拓弥

脚本:吉田恵里香

監督:風間太樹

 

うわ、それで今気づきましたが、風間太樹さんは「silent」も監督されてるじゃないですか!!