goo blog サービス終了のお知らせ 

映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「冠・婚・葬・祭」 中島京子

2012年04月11日 | 本(その他)
人と人とのつながり

冠・婚・葬・祭 (ちくま文庫)
中島 京子
筑摩書房


              * * * * * * * * * * 

中島京子さんの短篇集。
4篇からなるこの本は、
成人式、結婚、お葬式、お盆と、
日本人の心に根ざした大事な儀式に関わる一シーンをそれぞれ題材にしています。
でも、儀式そのものズバリではなくて、
例えば初めの「空に、ディアボロを高く」では、
ジャグリングなどのストリート・パフォーマンスに取り組む女性が、
成人式には出席せず、会場の前で中国ゴマ(ディアボロ)を披露しているという、そんなシーンが登場します。
成人式そのものではなく、青年が「大人になる」というのはどういうことなのか、
ストーリーを通じて語っているのです。
4作ともどれも好きで、どれをご紹介しようかと悩んでしまいますが・・・



「葬式ドライブ」
新米サラリーマン直之は、社命で、グループホームの"宇都宮さん"というおばあさんが、
あるお葬式に参列するためのお供をすることになります。
面倒な仕事を押し付けられてしまったと、直之は憂鬱だったのですが・・・。
その宇都宮さんは、せっかく出かけたものの、
誰のお葬式かもよくわかっているふうではなく、
直之が「ご親戚ですか?」と聞いても「知らないわ」と、そっけないのです。
お経も「嫌い」だというし、直之には何のためにおばあさんをここに連れてきたのか見当もつきません。
他の参列者も宇都宮さんのことは知らない様子。
けれど、周りの人の会話を漏れ聞くうちに、
直之には「宇都宮さん」の立場とこれまでの人生がおぼろげながら見えてくるのです。
それはとてもつらい出来事なのですが、
当の本人にはそういう自覚はなさそう、というのが、逆に救いのような気がしてきます。
宇都宮さんにとっては、そんなお葬式よりも、そこまでのドライブがとても気に入ったようなのでした。
直之にとってはたった一日の出来事。
けれど彼の人生観がちょっぴり変わる、大切な一日となるのです。
そんなささやかな宇都宮さんとの関わりですが、
その3ヶ月後、直之は宇都宮さん自身のお葬式に参列します。
グループホームでの本当に慎ましくささやかなお葬式。
お坊さんのお経もありません。
ただ、彼女のことを好きだったホームの職員が寄り添って、
棺の前で思い出を語り、「浜辺の歌」を歌う。
じんわりと心に残る作品でした。


さて、この4作はそれぞれ別の物語ですが、それぞれ、ほんの少し登場人物が重なり合っています。
人と人とのつながりの妙。
そんな意味もありそうですね。

「冠・婚・葬・祭」中島京子 ちくま文庫
満足度 ★★★★★


タイタニック 3D版

2012年04月10日 | 映画(た行)
スペクタクル・ロマン再び



                   * * * * * * * * * *

見ました!
「タイタニック」は何度目かわからないくらいですが、また見ました!!
3D版、気合を入れてIMAXシアターで見ましたよ!!!
アカデミー賞11部門受賞、ジェームズ・キャメロン監督が賞賛をほしいままにした超大作。
1997年というので、もうあれから15年にもなるのですね。
今作は同監督が、最新の技術で全編3D化したもの。
期待が高まります。


ストーリー紹介など今更ですが・・・
ときは現代。
タイタニック号引揚げ作業の責任者ラベットが、
タイタニック最大の秘宝と伝えられるダイヤモンド
“ハート・オブ・ジ・オーシャン”を身につけた若い美女のスケッチ画を発見します。
そのニュースをテレビで見た102歳のローズが、絵のモデルは自分だと名乗り出ました。
ローズは悲劇の航海の様子を語り始めます。


1912年4月10日。
イギリスの豪華客船タイタニック号がアメリカへ向け処女航海へ出発。
(・・・おお、奇しくもちょうど100年前!!)
出港直前に乗船券を手に入れた画家志望の青年ジャックは、
名家の令嬢ローズと知り合います。
ローズは、没落貴族の悲しさ、お金のために好きでもない富豪のホックリーと婚約していますが、
希望のないその将来に絶望を感じているのです。
ジャックとローズは互いに心惹かれ、親密になっていくのですが・・・。
出港4日目の深夜、船は氷山に激突。
1時間後には沈没するというその船内の、混乱、恐怖。
脱出のボートにも乗らなかった二人に、船の最後の時が近づきます。


                * * * * * * * * * *


今作のいいところは、ラブストーリーとスペクタクルが実に心地よく融合しているところ。
どちらも取ってつけたようではなく、どちらがなくても今作は成り立たない。
新天地アメリカへの航海、しかも出来立てほやほやの注目のタイタニック号。
この旅の高揚感が素晴らしいですよね。
後の悲劇を知っている私達でさえ、その先行きも忘れて気持ちが高ぶってしまいます。
それというのもこの写真のシーン。
ジャックとローズが船の舳先に立ち、“飛ぶ”シーンです。
あの頃、誰もがこのシーンをまねましたよね。
セリーヌ・ディオンの歌にのせて。
・・・いや何度見ても素晴らしいシーンです。




他にも私の好きなシーンはいくつもありますが・・・


老ローズがジャックにスケッチをしてもらうところを語るシーン。
引揚げ船のスタッフが皆で彼女を取り囲んで、目を丸くして聞き入っているのが、愉快です。
老ローズ役はグロリア・スチュアートという方ですが、
30年代に金髪美人女優として名を馳せた方だそうです。
たしかに若い頃はさぞお美しかっただろうという気品がありますね。
ローズにとっては、ダイヤモンドよりもその絵のほうがずっと大事だったわけです。



3等客用のにぎやかなバーで、どんちゃん騒ぎのダンスに興じるシーンも心に残っています。
気取ったディナーの席よりもずっと気持ちがいい。
食事のマナーは、欧米人なら誰でもお手のものと思いきや、
それは特権階級だけのモノなんですね。
ジャックは、たくさん並んだナイフやフォークの使い方がわかりません。
豪華客船とはいえ、階級に応じてしっかり区切られていて
(今もこれは変わりませんけれど)、
しかも避難も階級順とは・・・。
こういう現実がしっかり描かれているのもいいです。


それから、船尾の手すりにしがみつき、沈む直前の二人。
恐怖に凍りつく場面ではありますが、わずかにローズが微笑むシーンがあります。
ここは初めて二人が出会ったところ。
愛する人と、こんなふうに運命を共に出来ることを幸せに感じた瞬間です。
「決して諦めるな。
 どんなことをしても生きて、幸せな結婚をして、
 たくさん子どもを産んで、長生きして、暖かい部屋で死ぬんだ。」
ジャックの言葉が、それからの彼女を支えたのでしょう。



私が初公開時に劇場で見て、涙にくれたのは、ラストシーンです。
ローズの魂が懐かしいタイタニック号に入り込んでいくと、
あの大階段のところで待っていたジャックが振り向く。
それを取り囲む懐かしい人々が、二人を拍手で迎え入れる・・・。
今回は・・・、
3時間以上の大作で、もよおして(!)しまいまして、
ひたすら早く終わることを願っていたため、泣く余裕がありませんでした^^;



さてさて、3Dの効果。
これはもう元々がすごいのに、またまた迫力が加わってます。
ただ、いつも3Dを見て思うのですが、初めのうちはその立体感に驚かされるのですが、
次第に、それはどうでも良くなってきます。
やっぱり重要なのはストーリーですよね。
でも、そうですね、ラスト付近、冷たい海に累々と浮かぶ死体。
その死体が本当に目の前にあったので、ちょっと焦りました。
自分も浮かんだ死体の一つのような感じ・・・。
それから、特にIMAXは、音響も素晴らしい。
私は恐ろしくて、寒々しくて(氷山の浮かぶ海ですから!!)、まさに身も心も震えていました。
そして、若きレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの、なんとみずみずしく美しいこと。
この巨大スクリーンに耐えるお肌の滑らかさ・・・、
ああ、若いって素晴らしい・・・。


何度見ても飽きないですね。
私の中では、「風と共に去りぬ」と同じくらいに高みにある永遠の名作であります。

「タイタニック 3D版」
2012年/アメリカ/195分
監督:脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、ビリー・ゼイン、キャシー・ベイツ、フランシス・フィッシャー、ビル・パクストン

カンパニー・メン

2012年04月09日 | 映画(か行)
アメリカン・ドリームの崩壊



                      * * * * * * * * * *

リーマン・ショック後の不景気で会社をリストラされた男のストーリー。
大企業のエリート社員である30代後半、ボビー(ベン・アフレック)。
彼はある日突然会社からクビの宣告を受けます。
会社が経営の悪化から大規模なリストラを断行した結果です。
妻とまだ小さい子供たちを養う身。
すぐに次の仕事を見つけなければ生活も行き詰ってしまう。
・・・しかし、どこからもオファーが来ません。
一流会社エリート社員のプライドを捨てきれないボビーは、
もっと質素な生活に切り替えようという妻の提案も受け入れようとしなかったのですが・・・。



ものすごく身につまされるストーリーです。
突然の会社からの解雇。
まるで自分自身が社会から不要扱いされたような気分に落ち込みます。
街に出れば人々は忙しそうに行き交っているのに、
自分だけ行き場がない孤独。不安。
アメリカン・ドリームもついに崩壊・・・。
まさにそういう世相を映し出していますね。
けれど、まだ若いボビーはいいほうなのです。
プライドさえかなぐり捨てれば、義兄の工務店で大工仕事をしてでも何とか食いつなぐことは出来る。
そしてまた、奥さんや子供たちが、彼を力づけてくれる。
・・・ううむ、彼は奥さんに恵まれましたね。
実際はなかなかこうは行かないと思うけれど。


けれど、同様にリストラされた60歳間近のフィル(クリス・クーパー)の場合は、そうではなかった。
もう再就職は絶望的だし、娘にはまだまだ学費がかかるのに、お金のあてはない。
奥さんは近所に知られたくないと言って、
無理やり彼にスーツを着せ鞄を持たせて毎日彼を送り出す。
そうして取り返しのつかない悲劇が起こるのです。



現社長と力をあわせてこの会社を創り上げた重役のジーン(トミー・リー・ジョーンズ)は、
このやり方に反対するのですが、
それを煙たがられて、彼もまたクビになってしまうのです。
彼は言います。

この会社は、実際に船を自分たちで作るところから始めた。
毎日遅くまで働いて、船を作ることが自分たちの誇りだった。
いつから会社はこんなに巨大で訳のわからないものになってしまったのだろう・・・。


先日「ヒューゴの不思議な発明」でも少し感じたのですが、
かつては物を作って売るということがとてもシンプルでした。
ものの構造自体も、その流通システムも。
けれど今は機械自体も社会のシステムも複雑で巨大で、
その全貌を見極めることすら難しい。
そして人間性はその巨大なシステムの中で押しつぶされている。
非常に今重要な問題提起をしている良作です。



なんだかお久しぶりのケビン・コスナーは、
初めちょっと嫌味なお義兄さんで、
でも実は・・・、というナイスな配役でした! 

カンパニー・メン [DVD]
ベン・アフレック,ケヴィン・コスナー,トミーリー・ジョーンズ,クリス・クーパー,ローズマリー・デヴィット
Happinet(SB)(D)


「カンパニー・メン」
2011年/アメリカ/104分
監督・脚本:ジョン・ウェルズ
出演:ベン・アフレック、クリス・クーパー、トミー・リー・ジョーンズ、ケビン・コスナー、マリア・ベロ

ドライヴ

2012年04月07日 | 映画(た行)
爪楊枝に隠された意味



                  * * * * * * * * * *

昼はハリウッド映画のカースタントマン、
夜は強盗の逃走を請け負う運転手。
この男が、愛する女性とその子供を守るため、裏社会を相手に命がけの戦いを挑みます。


―――と言ってしまえば、ありがちなストーリーなのですが、
単なるアクションものとは明らかに異なっていて、つい引き込まれてしまう、
不思議な魅力があるのです。
なぜなんだろう・・・、いろいろ考えてしまいました。


まずこの“ドライバー”、最後まで名前が出てきません。
非常に寡黙です。
クールに口の端に爪楊枝をくわえ、背中に黄金のサソリの刺繍入りジャケット。
この爪楊枝で、ちょっぴり「木枯し紋次郎」を思い起こします。
お若い方は、ご存じないのかな?
「あっしには関わりのないことでござんす。」
と言いつつも、いつも関わって、弱いものの見方をしてしまう、
一見クールな無宿人。
彼もいつも長い楊枝をくわえていました。
思うに、この爪楊枝は、あまり人と関わらないことのサインなのです。
爪楊枝をくわえたままでは、そう多くは人とおしゃべりできませんよね。
人を拒むというよりは、うっかり自分が人と多くの関わりを持ってしまうことへの戒めなのでしょう。
それはなぜなのか。
多分彼は、自分の危険性を自分で認識しているのです。
人と関わることは、結局その人物に災厄を与えることになる、と。
背中のサソリも同じ意味を持っていますね。
うっかり近寄ると危険だゾ、とのサイン。


しかし、男は自分から禁を破ってしまいます。
おなじアパートの隣人の母子と知りあってから。、
3人でドライブに出かけたり、なんとも平和でほのぼのとした日々。
男は、これまでこうした陽だまりのような生活の経験がないように見受けられます。
愛だ恋だのセリフもなし。
ただ寄り添っていればそれでいい。
そんな3人。
彼女と付き合い始めてからの彼は、爪楊枝をくわえません。
(記憶に間違いがなければ・・・^^;)



ところがこの男、自分で認識しているとおりに、非常に危険な男でもあるのです。
愛するものを守るためには、人を殺すことに何の躊躇もない。
物静かな男が瞬時に怒りを爆発させるその瞬発力に、ただ圧倒されます。
この男、実はちょっと壊れている?と思えるほどに・・・。
銃を持たない彼の武器は、ハンマーであり彼自身の肉体であり、そして車そのものでもある。
このような直接的な暴力のシーンは結構過激で、
こうしてみると銃が実に慎ましい武器のように思えてしまいます。
こんなふうな彼の静と動のギャップに驚かされてしまうんですね。
名前も明かされないこの男、実はナニモノなのでしょう? 
人知れぬ過激な過去があるのでは・・・と、つい想像してしまいます。



さて、アイリーンの夫は服役中。
そしてその夫が出所した時、私はてっきり男同士険悪なことになってそこから争いになるのだと思いました。
でも、そうではないのです。
夫は刑務所で多大な借金を作ってしまい、そのお金が返せないと妻と息子の命が危ない。
なんとか母子を助けたいという夫の思いを、“ドライバー”が引き継ぐという意外な形での協力関係となる。
この展開も重要です。


また、今作では「エレベーター」が重要な舞台となっていますね。
はじめに“ドライバー”とアイリーンが出会ったのが、エレベーターのなか。
そして終盤、二人のキスシーンと直後の凄まじいバイオレンスシーンも、そこで展開されます。



ひたすらにクールで、暴力的で、そしてロマンチック。
これらが同居してしまうこの作品は、やはりタダモノではない。
この手の作品で、こんなに面白いと思うのも私には珍しいのです。
参りました。
この監督作品には今後も注目したいと思います。
そしてまた、ミーハーな一言。
ライアン・ゴズリングがカッコイイ!!。

「ドライヴ」
2011年/アメリカ/100分
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
原作:ジェームズ・サリス
出演:ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、クリスティーナ・ヘンドリックス

「ガラスの仮面 48」 美内すずえ

2012年04月06日 | コミックス
笑えるうちが華だったよ、紫織さん

ガラスの仮面 48 (花とゆめCOMICS)
美内すずえ
白泉社


                  * * * * * * * * * *

前巻では思う存分盛り上がりましたが・・・、
これはそのしっぺ返しが恐い巻。


ついに、速水氏が紫織さんに別れを宣言したのだけれど・・・
ちょっと遅すぎでしたね。
黙って引き下がるわけないじゃん、この女!
 しかし、あまりにもベタな展開だよねえ・・・
た、確かに・・・。


大体、紫織さんは子供の頃から病弱で友達が少なかったなんて書いてあるけど、
 それは病弱のせいじゃなくて、明らかに性格の問題でしょって気がする。
 ほんと、はじめからいけ好かない女でした・・・。
でもねえ、やっぱりそれは、元はといえば速水氏に責任がある。
 気持ちが他にありながら、政略結婚をしようとしたりするから・・・。



それにしても、「紅天女」の話自体は、さっぱり盛り上がらないというか、
 ちっとも見てみたいという気にはならないですね・・・。
長く引っ張りすぎですよね。
 亜弓さんの努力もわかるけど・・・、彼女の最大の欠点は「美しすぎる」ことなんだな。
まずその華やかな顔に目がひかれてしまうし、演技はそこそこでも、たいていは満足されてしまう。
 逆に美人過ぎて冷たい感じも受けるし。
実は同じ大金持ちでも、紫織さんとは段違いの高潔な人なんですけどねえ。
 美人過ぎて損なんてこともあるんですねえ・・・。
そこへ行くと、地味でごく平凡な目鼻立ちのマヤは、化粧映えするし、役に応じて変幻自在。
ま、そんなもんなんでしょ。そこが作者が亜弓さんにつけたハンディなわけで。
いやそれにしても、今度のハンディは大きすぎる・・・。
 結局、どっちが勝つわけなんですか~?
それがわかれば苦労しない・・・。
 結論が出るのはいつのことやら・・・。


この際、紅天女は亜弓さんにあげてもいい。
 だから、どうかマヤには速水さんを・・・。
両方なら虫がよすぎる気がするしね。
あ、それから間違っても紫織さんには、突然自分を悔いて善人になったりしないで欲しい。
 こうなったら、とことん「嫌な女」に徹してもらわないと納得できない。
 頑張って、腹いせに速水氏の会社を潰すくらいのことすればいいんだよ。
いっそそうなったほうが速水氏は自由の身・・・か。
 とにかく次号を待ちましょう・・・。

「ガラスの仮面 48」 美内すずえ 花とゆめコミックス

満足度★★★☆☆

モンスター上司

2012年04月05日 | 映画(ま行)
上司のモンスターぶりに注目



                 * * * * * * * * * *

3人の親友、ニックとカート、デイル。
彼らは3人とも、耐え難い上司のもと、ストレス一杯の毎日を過ごしています。
いっそこんな仕事はやめてしまいたいと思うのですが、
その後の再就職はかなり難しそう。
そこで彼らは上司の殺人を計画します。
怪しげな「殺人コンサルタント」の助言を受け、交換殺人を実行しようとするのですが・・・。


この3人は、悪ガキの友人同士がそのまま大人になっちゃった、みたいなノリがありますね。
「ハング・オーバー」の友人たちのような。
でも、この作品にパンチをきかせているのは、彼らではなくて、
そのモンスター上司の面々。


嫌味をネチネチ、自分ばかりいいとこ取りのパワハラ上司はケビン・スペイシー。


ヤク中で、環境問題よりは自分の利益優先のクレイジー上司、コリン・ファレル。


セックス依存症?と思われる、過激なセクハラ上司はジェニファー・アニストン。

豪華な配役が功を奏して(?)、ものすごいことになっています。
それに比べるとこの3人はおとなしすぎると思えるほどに。


それにしてもストーリーは一筋縄ではなく、
パワハラ上司は実は超あぶない上司でもあった・・・と。
ケビン・スペイシー一人勝ちの作品だったかな?
あ、ジェイミー・フォックスも。



結局この3人は、パワハラに耐える小市民がお似合いに思えますが・・・。
殺人を犯すだけの覚悟があるなら、きっぱり仕事をやめて3人で何かを始めればいいのに。
おっと、それを言ったら物語にならない。
暇つぶしには良い作品です。
(わざわざ、劇場に見に行かなくてよかった・・・。)

モンスター上司 ブルーレイ&DVD セット【初回限定生産】
ジェニファー・アニストン,コリン・ファレル,ケビン・スペイシー,ジェイソン・ベイトマン,チャーリー・デイ
ワーナー・ホーム・ビデオ



「モンスター上司」
2011年/アメリカ/98分
監督:セス・ゴードン
出演:ジェイソン・ベイトマン、チャーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス、ジェニファー・アニストン、ケビン・スペイシー、コリン・ファレル、ジェイミー・フォックス

ヘルプ 心がつなぐストーリー

2012年04月03日 | 映画(は行)
負の連鎖を断ち切るには・・・



                        * * * * * * * * * *

1960年代。
アメリカ南部ミシシッピーが舞台です。
大学を出たスキーターは作家志望。
白人社会におかれた黒人メイド達の立場に疑問をいだき、
彼女らにインタビューしようとするのですが、
白人の報復を恐れる彼女たちは口を閉ざすばかり。
でもある時、不当解雇を受けたミニーの親友エイビリーンが、真実を語り始めます。


映画中にも触れられていましたが、アメリカ南部で黒人のメイドと言うと、
私は「風と共に去りぬ」を思い出してしまいます。
その中でかなり大きな存在感を持っていたオハラ家の黒人メイド、マミー。
当然その頃のことですから、まだ「奴隷」の位置づけだったのだろうと思います。
けれど、作中のマミーは、大らかで言いたいことをズケズケ言うのが、なかなか心地よかったのです。
またその主人は彼女の生活自体にも責任をもっているように見受けられました。


そうして時は流れ、とっくに奴隷制度など廃止されて久しいというのに、
この南部では黒人たちの事情はあまり変わっていなかったのですね。
女たちの仕事といえばほとんどこの「メイド」しかなく、
ひどい差別にさらされている。
黒人専用の店があったり、
作中では、働いている屋敷のトイレは使わせず、別の黒人専用トイレを作るよう法を定めようなんて運動が起こったりします。
同じトイレでは不衛生だなんていうんですよ。
そしていかにも身勝手にクビを言い渡すようなところは、
奴隷の生活まできちんと面倒をみるのが義務であり務めであった昔よりも
状況が悪いともいえるのです。
もちろんそんなモラルも持ち合わせない「主人」も多くいたでしょうけれど。
このような全く理不尽な差別にも、ひたすら耐えるほかない彼女たち。
けれども、エイビリーンたちは、自分の仕事に誇りを持ち、ユーモアを忘れません。
さすが、オハラ家のマミーの末裔であります。



「どんなに頑張っても、私たちは今の生活から抜け出せない」
黒人の子供達を前に、そのようにつぶやくエイビリーンの姿には胸を打たれます。
だからこそ、彼女は一大決心をするのですが。
南部では当たり前の光景に疑問を持ち、斬り込んでいくスキーターと、
勇気を出し声を上げていこうとするエイビリーンやミニーたち。
声高に政治的な動きはしませんが、
身の回りのおかしなことを変えていこうという「女性」たちのストーリー、
とても馴染みやすく、するりと胸に染みこんでいきます。



お屋敷の若奥様代表、ヒリーが「アフリカの子供たちのために」慈善バザーをする
なんていうのがものすごい皮肉でした。
そして彼女に関わる最も強烈なエピソードについては、
ぜひご自分で確かめてください!!



それから、女性は高校を出るとすぐに結婚して子どもを持つというのがスタンダードなその頃のその街で、
大学を出て、さらに仕事を持とうというスキーターも私は大好きです。
彼女は、以前からそんなふうで、周りからちょっと浮いていたんですね。
そんなことで落ち込んでいた彼女を
励まし勇気づけてくれたのが彼女の黒人の乳母だったわけです。
男っ気のなかった彼女がようやく付き合い始めた彼は
「思ったことをはっきり言う君が好き」といってくれます。
結構いいヤツ?と思えるのですが・・・、
この結末も乞うご期待。


「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
2011年/アメリカ/146分
監督:テイト・テイラー
原作:キャスリン・ストケット
出演:エマ・ストーン、ジェシカ・チャステイン、ビオラ・デイビス、オクタビア・スペンサー、ブライス・ダラス・ハワード、アリソン・ジャネイ

「パーフェクト・リタイヤ」 藤堂志津子

2012年04月02日 | 本(その他)
これまでの生き方の肯定。そして明日からも生きていく。

パーフェクト・リタイヤ (文春文庫)
藤堂 志津子
文藝春秋


                          * * * * * * * * * *


藤堂志津子さんの、オーバー40の女たちの生きざまを描く短篇集。
どれも人生の半ばを過ぎた女性たちが登場します。
結婚していたり、そうではなかったり、まちまちですが、
共通点は、彼女らが自分のこれまでの生き方を後悔していないこと。
自分の生き方を少しずつ積み重ねながら今日に至ったことを、
彼女らはしっかり自覚して、肯定しているのです。
結婚していてさえも、夫に倚りかからない。
こうした女性たちがきっと「お一人さまの老後」を豊かに過ごすのだろうな・・・と、
ちょっぴり頼もしい気がします。


「バッド・ボーイ」
長年の母の介護を終えたひとり暮らしの由未子。
犬の散歩の途中、足を痛めて困り果てているところを一人の青年に助けられます。
彼、花樹は快活で親しげ。
犬の散歩のバイトを引き受けてくれたので、
由未子は彼にカレーを食べさせたり、クッキーを焼いたり。
しかし、実は花樹にはある下心があり・・・。
予想される結末ですが、でもはっとさせられるのは由未子の気持ちです。
彼女は騙されたと知って悲嘆にくれたり、彼を恨んだりはしない。
仕方ないか・・・と彼女は思う。

ここに来てまで相手によく思われたいからではなく、
あえて言うなら、卑しい人間にはなりたくないという由美子のささやかな美意識というか、
つっぱりや意地に近いものから。


一人で生きていこうとするものの矜持というのでしょうか、
はじめからそういうものを持っている人なのです。由未子は。
苦い話なのですが、後味は悪くない。



表題作「パーフェクト・リタイヤ」
60歳の定年を間近に控えた布沙子。
会社の何度かの吸収合併の際のリストラをくぐり抜けて、今日に至っています。
途中リストラに合わなかったのは、
ひたすら地味に目立たないようにしてきたおかげ、と思っています。
そんな布沙子は、退職後に一つの計画を持っています。
なんと、バーを経営すること。
40年独身で地味なOLを続けてきた彼女の、女として最後の楽しみ。
それは、これまでの人生を後悔しているというのではありません。
こうして過ごしてきたからこそ、
ある程度の資金もできたし、ここから新たな出発ができるということなのでしょう。
周りの人には想像もつかない転身です。
むろん、そのことは職場の人には内緒。
・・・なんだかそういうのもいいなあと思えてきます。
長年の愛人が、密かに彼女と共に過ごす老後を期待しているのもあっさり振り切り、
他の土地へ行くという鮮やかな切り返しが小気味良い。

「パーフェクト・リタイヤ」藤堂志津子 文春文庫
満足度★★★☆☆

007/美しき獲物たち

2012年04月01日 | 007
シリコンバレーを狙え!

                   * * * * * * * * * *

007第14作目。
ロジャー・ムーアのジェームズボンド最終作となります。
・・・にしてもなんだか気分が盛り上がらない。
なんだかねえ。やっぱり飽きてます。
もう止めたいです、正直。
このあたり、2年に一度づつ、順調にシリーズが作られているようなのだけど・・・。
これはイギリス版の寅さんみたいなもんなんだね。
偉大なるワンパターンでも、皆さんそれを楽しみにしていたのでしょう、多分。


1985年作のこの作品、それでも話題がだいぶ現在に近づいてきた感じがしたよ。
ここの敵役は、大富豪のゾリンなのだけど、彼は素晴らしい競走馬を持っている。
そういうことでも、たんまり儲けているわけだけど、
それが馬にステロイド投与のインチキをしていることがわかったりする。
大富豪が敵役で、競馬場のシーンがあったりするので、
この間見た「ジョニー・イングリッシュ」を思い出したけど・・・。
この映画も、モト作品の一つなのかもしれないね。
イギリス映画にはよく、競馬場のシーンが出てくるよね。
上流階級の社交の場なんだよね。だからみなさん精一杯おしゃれしてくる。
マイフェアレディとか、思い出しちゃうなあ。
こほん、まあそれはともかく、
その大富豪の世界征服という野望の手段は、アメリカのシリコンバレーを壊滅させること。
ね、話題が今日的になってきたでしょ。
なるほどね・・・。
アップルのマークの入ったパソコンも、今作初登場かもしれない・・・。


・・・などという考察をするしか特に話題のない作品だったりする・・・。



ところでひとつ問題が。
実は第13作「オクトパシー」を見てないじゃないの。
あ~、それね、前まで、TSUTAYA DISCASで検索しても出て来なかったんだよ。
あまりにも人気がなくて、扱ってないっぽかったんだけどね、
なんと、今さっき試しに検索したら、ちゃんとあった。
やっぱり見ますか?
うんにゃ。いい。ヤダ。
でしょ・・・。
全部おわって、心残りだったら、忘れた頃に見よう・・・。
しかし、惰性ですが、それでも先は行きますよ~。
次からは、ティモシー・ダルトンです。

美しき獲物たち (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
ロジャー・ムーア,クリストファー・ウォーケン,タニア・ロバーツ,グレイス・ジョーンズ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


007/美しき獲物たち
1985年/イギリス/131分
監督:ジョン・グレン
出演:ロジャー・ムーア、クリストファー・ウォーケン、タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ、ドルフ・ラングレン