高橋克彦ファン必読の書
* * * * * * * * * *
この本は、著者自ら選定した「謎解き」を醍醐味とする傑作短編6編に、
著者の「ミステリー」観が浮かび上がる解説や評論等を収録した
読み応えのある内容になっています。
第15回日本ミステリー文学対象受賞記念企画によるもの。
収録短編は「百物語の殺人」、「かすかな記憶」、「歌麿の首」等、
おなじみの塔馬双太郎シリーズや記憶シリーズもあり、うれしいラインナップです。
記憶シリーズは、「記憶」というものの不思議さ不確かさに加えて怖さもあり、結構好きなのです。
また、ミステリーも好きなのですが、
私としては「総門谷」や「竜の棺」の伝奇モノも欠かせません。
スケールが大きくて、ゾクゾクします。
一向に眠くならず、興奮冷めやらず夜な夜な読みふけった記憶が。
残念ですが、それ系は長編作となっているので、この短編集にはありません・・・・。
この本の中で、著者の本の書き方は、
あまりきちんとプロットなどを立てず、どんどん書き進めてしまう、とあります。
思いつくままどんどん書いて行ったら、
いつの間にか勝手に伏線ができていたり、 当然のように結末に行き着いたり。
私が著者の作品で好きなのは、そのいきいきとした会話文なのですが、
これも、登場人物が勝手に好きなことを語り始めるとか・・・。
よく、栗本薫さんも言っていました。
自動書記のようなもので、物語が勝手に浮かんでくる、と。
天性のストーリーテーラーとはそういうものなのかも知れません。
それからこの本で面白かったのは、著者の年譜。
生まれた時から作家になるまでのことが結構細かに記されています。
昭和22年岩手県にて誕生。
お父上はお医者さんなんですね。
弟さんが後を継いで医師となった、と。
ちょうど思春期の14歳~16歳くらいのあたりでしょうか。
生霊を見る、とか、自宅の風呂場で守護霊に頭をなでられるとか、自分のドッペルゲンガーを目撃、
などという体験の記載があります。
このあたりの話は、何かで読んだ記憶がありますが、本当のことだったんですね・・・。
それから、20歳の頃、札幌に住んでいたことがあるそうで、
それは知らなかったので驚きました。
そこで、予備校仲間と遠出した帰りの列車で、後に奥様となる女性を見初める、と。
短い間でしたが札幌に住んだことにも意義があったようで、喜ばしいことであります。
24歳の頃、ある編集長に「本当に小説家になりたいのなら10年書くのをやめなさい。」と言われたエピソード、
またその後の話など、驚きに満ちていますが、
結局著者が初めて書いた長編小説「写楽殺人事件」で江戸川乱歩賞を受賞したのが36歳のとき。
人生色々・・・です。
高橋克彦ファン必読の一冊でした。
「みちのく迷宮 高橋克彦のミステリー世界」高橋克彦 光文社文庫
満足度★★★★☆
![]() | みちのく迷宮: 高橋克彦のミステリー世界 (光文社文庫) |
高橋 克彦 | |
光文社 |
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この本は、著者自ら選定した「謎解き」を醍醐味とする傑作短編6編に、
著者の「ミステリー」観が浮かび上がる解説や評論等を収録した
読み応えのある内容になっています。
第15回日本ミステリー文学対象受賞記念企画によるもの。
収録短編は「百物語の殺人」、「かすかな記憶」、「歌麿の首」等、
おなじみの塔馬双太郎シリーズや記憶シリーズもあり、うれしいラインナップです。
記憶シリーズは、「記憶」というものの不思議さ不確かさに加えて怖さもあり、結構好きなのです。
また、ミステリーも好きなのですが、
私としては「総門谷」や「竜の棺」の伝奇モノも欠かせません。
スケールが大きくて、ゾクゾクします。
一向に眠くならず、興奮冷めやらず夜な夜な読みふけった記憶が。
残念ですが、それ系は長編作となっているので、この短編集にはありません・・・・。
この本の中で、著者の本の書き方は、
あまりきちんとプロットなどを立てず、どんどん書き進めてしまう、とあります。
思いつくままどんどん書いて行ったら、
いつの間にか勝手に伏線ができていたり、 当然のように結末に行き着いたり。
私が著者の作品で好きなのは、そのいきいきとした会話文なのですが、
これも、登場人物が勝手に好きなことを語り始めるとか・・・。
よく、栗本薫さんも言っていました。
自動書記のようなもので、物語が勝手に浮かんでくる、と。
天性のストーリーテーラーとはそういうものなのかも知れません。
それからこの本で面白かったのは、著者の年譜。
生まれた時から作家になるまでのことが結構細かに記されています。
昭和22年岩手県にて誕生。
お父上はお医者さんなんですね。
弟さんが後を継いで医師となった、と。
ちょうど思春期の14歳~16歳くらいのあたりでしょうか。
生霊を見る、とか、自宅の風呂場で守護霊に頭をなでられるとか、自分のドッペルゲンガーを目撃、
などという体験の記載があります。
このあたりの話は、何かで読んだ記憶がありますが、本当のことだったんですね・・・。
それから、20歳の頃、札幌に住んでいたことがあるそうで、
それは知らなかったので驚きました。
そこで、予備校仲間と遠出した帰りの列車で、後に奥様となる女性を見初める、と。
短い間でしたが札幌に住んだことにも意義があったようで、喜ばしいことであります。
24歳の頃、ある編集長に「本当に小説家になりたいのなら10年書くのをやめなさい。」と言われたエピソード、
またその後の話など、驚きに満ちていますが、
結局著者が初めて書いた長編小説「写楽殺人事件」で江戸川乱歩賞を受賞したのが36歳のとき。
人生色々・・・です。
高橋克彦ファン必読の一冊でした。
「みちのく迷宮 高橋克彦のミステリー世界」高橋克彦 光文社文庫
満足度★★★★☆