荒れ果てたかつての日本庭園で
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舞台はマレーシア。
戦中1940年代、戦後50年代、80年代と、三つの時間軸で構成されます。
亡き妹の夢だった日本庭園作りに挑むマレーシア人女性と日本人庭師の物語。
80年代。
マレーシアで史上二人目の女性裁判官となったユンリン。
さらなるキャリアアップを図ろうと奮闘しています。
そんな時、かつて愛した日本人庭師・中村(阿部寛)が、
終戦時、日本軍が埋めたとされる埋蔵金にまつわるスパイ容疑をかけられていることを知り、
彼の潔白を証明するため、かつての彼との出会いの地を訪れます・・・
1940年代、マレーシアは日本軍に支配され、
ユンリンと妹は捕らえられ、日本軍に過酷な労働を強いられていました。
そして妹は若い女性として、さらに過酷な運命にさらされてしまう。
辛くも生き延びたユンリンはその後50年代、
日本人戦犯の裁判などにも関わる地位を得ていました。
そんな精神的にも金銭的にも落ち着いてきた彼女が、
亡き妹が憧れていた日本庭園を造りたいと、日本人庭師中村有朋の元を訪ねるのです。
しかし有朋は依頼を拒否。
自分で覚えて作ればいいと、無理矢理彼女を弟子にしてしまいます。
有朋というのは戦前から戦後の今までこの地に残っている謎の人物。
何でも天皇家に仕える庭師をクビになったのだとか・・・?
一見穏やかそうである彼は造園には酷くこだわりをみせて、
同じ石を気に入るまで移動させたり向きを変えたり・・・。
そして背中には美しいタトゥー。
彼自身も彫り師でもあり、ユンリンの背にも彼自身の図案で美しいタトゥーを施します。
80年代の今、あの時美しかった中村が住んでいた家も今は荒れ果てて廃屋同然。
庭ももちろん、深い草に覆われています。
あの時、突然姿を消してしまった有朋とのあれこれを思い返しながら、
家の周囲や残された書類などを調べるユンリン。
そして、彼女は一つの驚くべき事実に気がつくのです。
時を経て、有朋が残した謎を解き明かすという、かすかにロマン漂う作品。
日本庭園と有朋の底に秘めた神秘性・・・静かな雰囲気に満ちています。
戦中の出来事を、日本人ではない視点で描いているこの作品。
そういう所も興味深いです。
<Amazonプライムビデオにて>
「夕霧花園」
2019年/マレーシア/120分
監督:トム・リン
原作:タン・トゥアンエン
脚本:リチャード・スミス
出演:リー・シンジエ、阿部寛、シルビア・チャン、ジョン・ハナー、ジュリアン・サンズ
日本庭園の神秘度★★★☆☆
時と人のロマン度★★★★☆
満足度★★★★☆
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