映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

よだかの片想い

2023年07月09日 | 映画(や行)

コンプレックスとアイデンティティ

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理系の大学生、前田アイコ(松井玲奈)は、顔の左側に大きなアザがあります。
そのために人間関係や自己形成に複雑な影響を受けているアイコは、
恋や遊びはあきらめ、研究一筋に打ち込む毎日。

ところがある日、「顔にアザや怪我を負った人」の
ルポタージュ本の取材を受け、話題となります。
そして、その本を映画化したいという映画監督・飛坂(中島歩)と会うことになり、
次第に彼の人柄に惹かれていきますが・・・

題名の「よだか」は、宮沢賢治の「よだかの星」から来ていて、
そこでよだかはたいそう醜い鳥とされているのです。
そこで大きなアザのあるアイコが、よだかを自分と重ね合わせてもいるのでしょう。

自分の生まれついての顔のことで、それはそれとして受け入れているけれども、
人からかわいそうだとか哀れみの視線を受けるのがイヤだと彼女は思っているのです。

そんなことは特に大きな問題ではなくて、アイコをアイコ自身として受け入れてくれる人々、
例えば研究室内の人々や、先輩、そして飛坂とともにいるときに、
アイコは安らぎを感じるのです。

だからまっすぐに自分を見つめてくれる飛坂を好きにならない方がおかしいですよね。

しかーし、確かに飛坂は実にイイ奴なのだけれど、
仕事熱心なあまり、恋人を大事には扱わない。
もしかすると、映画化を承諾させるために自分と付き合ってくれているのかな・・・?
とそんな疑問も湧き出てしまうアイコ。
そしてまた、飛坂のモトカノの登場で、アイコは平常ではいられなくなってしまう・・・。

自分の持つコンプレックスと、自分が自分らしく在ること、
その二つが葛藤するドラマなのでしょう。
あの「よだか」が、鷹に「名前を変えなければ殺す」といわれるのだけれど、
名前こそが自分自身の証であるわけだから、
よだかは名前を変えようとはしないわけなんですね。

手術でアザを消すことができると言われたときのアイコの迷いと、
ここは重なります。

貴重な物語でした。
あ、原作が島本理生さんなので、物語はよくて当然。

青木柚さん演じるアイコの後輩くんがステキでした。
なんて淡々とした愛情表現。
でも、そういうのもアリだよなあ・・・と。

 

<WOWOW視聴にて>

「よだかの片想い」

2021年/日本/100分

監督:安川有果

原作:島本理生

脚本:城定秀夫

出演:松井玲奈、中島歩、藤井美菜、青木柚

 

自己発見度★★★★☆

満足度★★★★☆



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