映画と本の『たんぽぽ館』

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アジアの天使

2021年07月06日 | 映画(あ行)

話す言葉は違っても

* * * * * * * * * * * *

石井裕也監督が韓国人スタッフとキャストによりオール韓国ロケで製作した作品。

 

妻を病で亡くした青木剛(池松壮亮)は、一人息子・学を伴い
疎遠となっていた兄が暮らすソウルへやって来ました。
兄・透(オダギリジョー)から、ソウルでいい仕事があるから来いといわれて来たものの、
ところがそれはでまかせで、実は心許ないその日暮らしだったのです。
仕方なく剛は全く韓国語も話せないまま、怪しい化粧品の輸入販売を手伝い始めます。

一方、タレント活動をするソル(チョ・ヒソ)は、
先にアイドル歌手としてほんの少し売れてから後が続かず、
今はほとんど仕事がなく、所属事務所の社長と関係を持ちながら
先行き不安な日々を過ごしています。
また彼女は、兄・ジョンウ(キム・ミンジェ)と妹・ポム(キム・イェウン)と暮らしていますが、
生活はギリギリで家族関係もギクシャクしています。

あるときこの二組の家族が知り合い、共に旅をすることになって・・・。

双方、互いの言葉が全然わかりません。
透は韓国語がわかりますが、丁寧に通訳するようなマメさは全くない奴なので、
まあ、いないよりはマシという程度。

ジョンウは始めからこういいますね。
「大抵の韓国人は日本人が嫌いだし、大抵の日本人は韓国人が嫌いだ」 
そんなわけで、双方の第一印象はぜんぜんよくないのですが、
透が美人姉妹を気に入って、下心ありまくりで接近したのです。
なりゆきで、透と剛はジョンウたちの両親のお墓参りに同行することになってしまった! 
そうして始まる異文化交流のロードムービーです。

長く行動を共にすれば、互いのことが少しずつわかってきます。
剛とソルは互いに片言の英語で会話を交わします。
そうしてわかったのは、自分たちはどちらも父母を亡くしているということ。
そして剛の妻もソルの母も同じ病であったこと。
互いに家族はこの3人ずつきりということなんですね。

そして、運命的なのはソルも剛も、「天使」を見たことがあるのです!!
その「天使」の正体がまた衝撃なのですが、それは最後のお楽しみ。

結局言葉は違うけれども、家族や親しい人たちを大切に思う気持ちは全然変わらないということ、
当たり前のことながら、彼らはそのことを体で理解していくのです。
そしていつの間にかジョンウたち兄妹も家族の絆を取り戻している。

ステキな家族のドラマでした。

 

ところで、最後あたりでようやく気がついたのですが、
剛の息子・学くんは一言もしゃべりません。
言葉は聞こえて理解しているようなのですが。

私の勝手な想像ですが、彼はお母さんを亡くしたショックで
失語症のようになっているのかも知れません。
ですが、作中、学くんが言葉を話さないことに気づきながらも
誰もそのことを改めては指摘しないし、同情したりもしない。
だれもが全く自然に受け入れ、そして、ごく当たり前に子供を守ろうとします。
そんなさらりとしたところがいいなあ、と思いました。

 

<サツゲキにて>

「アジアの天使」

2021年/日本/128分

監督・脚本:石井裕也

出演:池松壮亮、オダギリジョー、佐藤凌、チェ・ヒソ、キム・ミンジェ、キム・イェウン

 

異文化交流度★★★★☆

家族愛度★★★★☆

満足度★★★★☆



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