映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「教科書の詩をよみかえす」 川崎洋

2011年04月30日 | 本(その他)
詩を読んで想像の翼をひろげよう

教科書の詩をよみかえす (ちくま文庫)
川崎 洋
筑摩書房


           * * * * * * * *

この本は教科書に採用された詩を取り上げ、
あらためてまた、その詩を味わってみようという趣旨。
でも、この著者自身詩人なので、この本はいわゆる「教科書」的な詩の解説ではなく、
うんと想像の翼を広げ、自由で楽しい本となっています。

取り上げられた詩は
草野心平、中野重治、室生犀星、まど・みちお、
萩原朔太郎、谷川俊太郎、三好達治、中原中也・・・
そもそも、私が『詩』の本など紐解いた最後の日はいつだったのかも思い出せませんが、
そんな私でも名前だけは知っているという方も多いですね。
私も遠い昔に教科書で見たものだったのか、見知っている作品も。


紙風船
      黒田三郎

落ちて来たら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも打ち上げよう

美しい
願いごとのように



この詩を見て、あれ?と思いました。
私はこの詩のメロディを知っている。
フォークソングが全盛の頃、私が好きだった「赤い鳥」が歌っていた曲の一つ。
この方の詩だったんですねえ。
何十年もたって知りました。
川崎氏はこの詩をこのように言います。

この詩を読むと、いつも光さす空を見ていよう、
紙風船がおちてくるのに目をとめるより、
何度もうちあげるそのことに生きる証をみつけよう、
というような祈りに似た詩の心が伝わってきて、励ましさえ感じます。


そうですね。
私たちは希望を失ってはいけない。

次の詩は是非声に出して朗読したい詩です。


あめ
           山田今次

あめ あめ あめ あめ
あめ あめ あめ あめ
あめは ぼくらを ざんざか たたく
ざんざか ざんざか
ざんざか ざんざか
あめは ざんざん ざかざか ざかざか
ほったてごやを ねらって たたく
ぼくらの くらしを びしびし たたく
さびが ざりざり はげてる やねを
やすむ ことなく しきりに たたく
ふる ふる ふる ふる
ふる ふる ふる ふる
あめは ざんざん さがさん ざかざん
ざかざん ざかざん
ざんざん ざかざか
つぎから つぎへと ざかざか ざかざか
みみにも むねにも しみこむ ほどに
ぼくらの くらしを かこんで たたく



この詩が書かれたのは敗戦の翌々年といいます。
焼け野原にたてた掘っ立て小屋を無情の雨がたたきつける・・・
なんとも殺伐とした厳しい状況ではあるのですが、
著者はこのようにいっていますよ。

この詩は黙読するより声に出して朗読する方が、
よりまっとうに詩に込められた作者の気持ちが伝わってきます。
音読すると暗さや惨めさより、
むしろ激しい雨を跳ね返して生きていこうという
したたかなたくましさが胸にしみ込んできます。


まさしく、その通り。

今の私たちが口ずさみたい2編をご紹介しました。


この本のような解説を小中学校の国語の時間に聞いていたら、
もっと国語が好きになっていたかもしれませんね・・・。
もちろん、詩とか物語とか、本は大好きでしたが
「国語」の時間が好きとは思えなかった私です・・・。

「教科書の詩をよみかえす」 川崎洋 ちくま文庫
満足度★★★★★


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