映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ライフ・ウィズ・ミュージック

2022年11月11日 | 映画(ら行)

共に生きること

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ステージで素顔を見せない “顔なきポップスター”として注目を集める
シンガーソングライター、Sia(シーア)が、
自身の半生を投影させて描いた作品にして、初監督の作品。

アルコール依存症のリハビリプログラムを受けているズー(ケイト・ハドソン)。
祖母の死をきっかけに、自閉症の妹、ミュージック(マディ・ジーグラー)と暮らすことに。

ミュージックは感受性豊かですが、周囲の変化に敏感、
時にはパニックを起こすこともあります。
そんな妹との生活に戸惑うズーに、アパートの隣人エボ(レスリー・オドム・Jr)が、
優しく手を差し伸べます。
そんなここでの暮らしに居心地の良さを感じ始めたズーは、
自身の孤独や弱さに向き合いながら少しずつ変わろうとします。
一方エボも、実は大きな悩みを持っていたのでした。

 

ミュージックの心の中に広がる音楽が、カラフルでポップな映像とダンスで表現されます。
これらの楽曲はもちろんSiaの書き下ろし。
一体どれだけの才能をもってるんだ!っていう感じですね。

自閉症の少女。
言葉で自分の感情を人に伝えることは難しいけれど、
それでも自分自身の中にはみずみずしい感覚が満ちあふれている。
本作の音楽シーンは、そういうことの表現でもあると思いました。

実は2人の母はシングルマザーとして2人を産み、薬物依存症。
ズーもミュージックもほとんど母の愛情を知りません。
ズーは早くに家を飛び出してしまいました。
一方ミュージックは祖母に引き取られて、
祖母とご近所の人々の温かな見守りによって、
それなりに穏やかな日々を過ごしていたというわけです。

ところがその祖母の急死で、すっかり状況が変わってしまった。

ズーが呼び戻されて、2人暮らし。
そもそも自分1人生きていくことすら危ういズーが、
ミュージックを抱えてどのように生きていくのか・・・、
まあ、それだけで心配ですよね。
おまけに、ズーの収入を得る手段というのが、麻薬の売人。
これではいかにもまずい。
そして頼りのエボの悩みというのも、深刻なのです。

困難や苦難は、身近にいくつも転がっている。
そんな中でも前向きに生きていこうという気力を生み出すのは、
やはり身近な人の存在なのかも知れません。
ズーはいつしか、自分こそがミュージックに支えられているのだと気づいていく。

それにしても、このお祖母さんの家のご近所さんが、
じつにさりげなくミュージックを見守ってくれている様子が、すごくいい感じでした。
障害者に対して、こんな風に地域が見守ることができるといいですよね。

ミュージックに対してほとんど愛情?とも思える思いを持つ1人の青年が登場するのですが、
彼の運命というのがちょっと哀しい。
しかもミュージック達はそのことに気づいていない。
彼の存在はほとんど「神」です。

ちょっと、ユニークな後味を残しました。

 

<WOWOW視聴にて>

「ライフ・ウィズ・ミュージック」

2021年/アメリカ/107分

監督:シーア

出演:ケイト・ハドソン、レスリー・オドム・JR、マディ・ジーグラー、
   メアリー・ケイ・プレイス、ベト・カルビーヨ

 

音楽の楽しみ度★★★★☆

満足度★★★.5



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