映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

僕たちは希望という名の列車に乗った

2020年09月11日 | 映画(は行)

ベルリンの壁、建設前夜に

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ベルリンの壁建設前夜、東ドイツでの実話を元にしています。

1956年、東ドイツの高校に通うテオとクルト。
西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュースの映像を見ます。
東側ではそのようなニュースは伝えられません。

自由を求めるハンガリー市民に共感した2人は、クラスメイトに呼びかけ2分間の黙祷を実行します。
しかしソ連の影響下にある東ドイツでは、
この行為は社会主義国家への反逆と見なされてしまうのです。
仲間を密告しエリートの道を歩むか、または信念を貫き大学進学を諦めるか・・・
若き生徒たちは将来に関わる重大な決断を迫られるのです。

ベルリンの壁は、二次大戦直後に作られたわけではなかったのですね。
この当時、東側から西側へ、正当な理由があれば行き来することができたのです。
お墓参りとか、親戚の家へ行くとか・・・。
テオとクルトも若者らしい冒険心で西側へ行って「自由」を感じられる映画を見るわけです。

そしてまた、東側、共産主義社会では“能力”さえあれば高校から大学へも進学できて、
将来の地位も約束されるのです。
実際、テオの父親は鉄工所に務める労働者。
きちんと学校を卒業しなければ、テオも肉体労働につくほかありません。
そうした事情を抱えているから、彼らにとって反社会主義者の烙印を押される事は、
豊かな生活を送ることのできる「未来」をなくすことに等しいのです。

それでも、友情と信頼を大事にしたいと思う彼らは、
「黙祷」を言い出した首謀者を決して明かさないと暗黙のうちに結束しますが・・・。
弱みを突き、揺さぶりをかける当局のやり方の汚さ・・・。
大人の社会は本当にイヤラシイ・・・。

結局彼らがどうするのか、まあ、それは本作の題名に表されているわけです。
ちょっとした歴史の隙間の物語。
けれど、やはり人は「自由」を希求するものではあります。
それを押さえ込もうとする社会は、やはり何か違うのではないかと・・・。

<WOWOW視聴にて>

「僕たちは希望という名の列車に乗った」

2018年/ドイツ/111分

監督・脚本:ラース・クラウメ

出演:レオナルド・シャイヒャー、トム・クラメンツ、レナ・クレンク、ヨナス・ダスラー、イザイア・ミカルスキ

 

歴史発掘度★★★★★

一途さ★★★★☆

満足度★★★★☆

 



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