映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実

2021年12月17日 | 映画(ら行)

一人一人の、終わらない戦争

* * * * * * * * * * * *

実話に基づいています。

1999年、アメリカ。
空軍省に勤務するハフマン(セバスチャン・スタン)は、
30年以上請願されてきた、ある兵士の名誉勲章授与についての調査を開始します。
それは、その時から30年以上前のベトナム戦争下のこと。
1966年、米国の陸軍史上最悪の日とも言われる、多くの死傷者を出した日のことです。

敵の奇襲を受け孤立した陸軍中隊の救助に、空軍落下傘救助隊が向かいました。
ヘリコプターで現地に向かいましたが、着地できるような場所もありません。
第一、地上では激しい銃撃戦が繰り広げられているさなかです。
しかしピッツェンバーガーは、果敢に単身で地上に降り立ちます。
彼は銃弾の飛び交う中、負傷兵を集め、的確な治療を施していきます。
彼によって、多くの兵が一命を取り留めたのですが、
結局ピッツェンバーガー自身は銃弾に倒れ、帰らぬ人となったのです。

このことの調査担当となったハフマンは、
30年も前の、しかもすでに亡くなっている下級兵への名誉勲章授与
と言うこと自体に興味が持てませんでした。
出世街道まっしぐらに歩みつつある彼にとっては、
とんでもない寄り道、時間の無駄に思えたのです。
これまでの担当者も、適当にお茶を濁しつつ、
次の担当者にバトンタッチしてきたに過ぎない。
けれど、ハフマンは、当時ピッツェンバーガーに救助された
退役軍人たちの証言を集めるうちに、心が動かされていきます。

彼らは30年経った今でも、当時の心の傷を抱えたままでいる。
その時の恐怖、絶望感はもちろんのこと、
自分のちょっとした判断ミスが犠牲者を増やしてしまったのではないかという後悔。
そして、多くの死者を尻目に自分が生き残ってしまったことの罪悪感・・・。
PTSDで未だに精神が不安定の者もいます。

そんな彼らが、命がけで自分たちを救おうとしたピッツェンバーガーが
名誉勲章を受けることで、自分たちの戦争もピリオドが打てるのではないか・・・
そんな風な気持ちになっていったのかも知れません。

ところが、30年ものあいだこの名誉勲章授与の話が進展しなかった裏には、
実は「不都合な真実」があったから・・・。
どうも、政治的な圧力で握りつぶされていたらしいと知ったハフマンは、
もはや出世の道も断たれる覚悟で、真実を突き詰めます。

なんとも感動の物語。
心打たれ、悲しいシーンではないのに泣けました。

退役軍人たちには、豪華キャストがあてられています。
エンドロールに、「ピーター・フォンダに捧げる」という一文がありました。
遺作だったそうです。
そして、今年2月に亡くなったクリストファー・プラマーも、
遺作かどうかは分かりませんが出演しています。

 

<WOWOW視聴にて>

「ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実」

2019年/アメリカ/116分

監督:トッド・ロビンソン

出演:セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、ウィリアム・ハート、
   エド・ハリス、サミュエル・L・ジャクソン、ピーター・フォンダ、ジェレミー・アーバイン

 

歴史発掘度★★★★☆

感動度★★★★★

満足度★★★★★



最新の画像もっと見る

コメントを投稿