映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「四十日と四十夜のメルヘン」  青木淳悟

2009年10月25日 | 本(その他)
四十日と四十夜のメルヘン (新潮文庫)
青木 淳悟
新潮社

このアイテムの詳細を見る



ううむ・・・。
思わずうなってしまいます。
野間文芸新人賞受賞作というこの本。
すごい傑作か駄作かどちらかだと思います・・・。
私にはよくわかりません・・・。


この本には「四十日と四十夜のメルヘン」と
「クレーターのほとりで」の二編が納められています。


まず、「四十日と四十夜のメルヘン」。
日記風のようでもある。
日付がついている。
7月6日。
7月7日。
7月4日(あれ?)。
7月5日。
日にちの順番はめちゃくちゃだし、同じ日付が何回もくりかえし出てくる。
スーパー・メーキューとOKマートの話。
腐った梨の話。
フランス語講座の話。
チラシのポスティング。
チラシの裏に書きなぐられる小説。

・・・これはもしかして、あれでしょうかね。
ジグソーパズルのように、
いろいろなディティールがバラバラに配置されていて、
最後のピースがハマれば全貌が見えてくるという・・・。
しかし、期待もむなしく、
最後までいってなお、よくわからない全貌。

例えば私なら、のんびりと犬と散歩中の時などに、
とりとめもなくいろいろなことを考えてしまいます。
いいお天気。
雨の心配はなさそう。
そういえばこの間とうとう新しい傘を買ったんだった。
水玉模様の傘。
水玉といえば、子供のときにジョーゼットのふんわりワンピースを買ってもらって、お気に入りだったな。
それが白地に水色の水玉で。
あの頃、アパートのお隣に同い年の男の子がいて・・・・
こんな風に、つぎつぎと連想ゲーム風に思考が流れてゆく。
この本はまるでそういう思いを、
一つ一つ丁寧に書きとめたみたいな感じがします。


この本の解説で保坂和志氏が冒頭で言っています。
『私はこの文庫解説を、「おもしろくなかった」「意味がわからなかった」
と思っている人を想定して書こうと思う。』
・・つまり、かなり意味がわからないという人がいることを
想定しているようですね。
それで私も少し安心したりして・・・。
そもそも、この話、単行本と文庫本がかなり違うそうなんです。
それで、この解説の締めくくりがこう。
『冒頭に書いた「おもしろくなかった」「意味がわからなかった」人たちは、
いよいよ「?」「?」「?」になってしまったのではないかと思う・・・・・』
それはないじゃないですか。
・・・というわけで私など、最後までわからなかった一人。
結局書き手は誰? 
ずっと1人暮らしに思えていた「語り手」が、
ラストでいきなり男と同棲していたりするし。
これは1人の視点で描いたものではなかったのか?
7月に腐った梨? 季節さえも虚ろだ・・・。
捨てるのだったら、なぜ買うんだ。
チラシにうずまった部屋は誰の部屋???

あえてこういう困惑を生み出すためのストーリーなのでしょうか。
老化現象でしょうか。
柔軟な思考力のないオバサンの、これも限界なのかも・・・。


もう一篇、「クレーターのほとりで」も、かなり幻惑されてしまいますよ。
壮大?な人類創生譚です。
なんとも取り留めのない物語を、あなたもお楽しみください・・・・。

満足度★★☆☆☆


最新の画像もっと見る

コメントを投稿