救いはどこにあるのか
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イギリス、ニューカッスルに住むターナー家。
フランチャイズの宅配ドライバーとして独立したリッキーは、
いつかマイホームの夢を果たすため、長時間の過酷な労働に挑みます。
一方妻アビーはパートタイムの介護士として、
一日にいくつもの訪問介護をこなさなければなりません。
けれども、夫・リッキーのトラック購入のため、自分の車は売らなければならず、
バスでの移動を余儀なくされてしまいます。
また、両親が仕事で不在がちのために、
高校生の兄セブと、小学生の妹ライザ・ジェーンは、さみしさを隠せません。
セブは学校をサボるようになり、素行が悪く警察にやっかいになり・・・。
リッキーもアビーもこんなにも長時間、真摯に仕事に当たっているのに、
暮らしはちっともよくならない。
まさにワーキングプアの状態。
しかもこの宅配の仕事というのが実にいやらしいシステムなのです。
一応「自営業」とうたってはいるものの、
会社員なら休暇制度などもっとしっかりしているはずが、それがない。
急病や、やむを得ない家族の事情があっても休むのは「自己責任」とされて、
罰金まで取られてしまいます。
今や宅配業はほとんどライフラインともいえる業界ではありますが、
人手不足ということもあって、実に過酷な仕事となってしまっているようです。
これは日本でも同様ですね・・・。
「効率」がすべての世の中・・・実に嫌な感じです。
こんな中でもなんとか家族の絆を保とうとするアビーがいじましい。
しかも彼女は仕事に対してもとても心がこもっています。
夜中に困っている利用者から助けを求められれば、なんとか駆けつけようとします。
こんな涙ぐましいリッキーとアビーの奮闘が、いつかきっと報われるはず、
そうでなければあまりにも救いがない・・・と思えたのですが。
ケン・ローチ監督は、今のワーキングプアや格差社会の問題は、
安直なハッピーエンドなどでごまかせないとでも言うかのように、
ほのぼのしたエンディングを拒否したように思えます。
全く、一体どこに解決法があるのか。
家族愛だけではどうにもならない厳しい現実を突きつけられるようでした。
ライザ・ジェーンが父親の宅配トラックに同行したり、
家族みんなでトラックに乗りアビーの利用者宅にかけつけるシーンには
ようやく心が和んだのですが、これすらもフランチャイズの規定に反しそうですよね・・・。
悲しい・・・。
<シアターキノにて>
「家族を想うとき」
2019年/イギリス・フランス・ベルギー/100分
監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター
家族愛度★★★★☆
ワーキングプア度★★★★★
問題提起度★★★★★
満足度★★★.5
「甘い」「考えていない」etc
バッサリ斬ってしまう人(例えばホ〇エ〇ンのような人)もいるでしょうが、それでは社会は益々歪んだものになってしまうと思いました。
お金はあるところにばかり集まって、ないところにはいつまでたってもないまま。つまりそれが資本主義。それなのに尚また、資本家が貧乏人を食い物にしている。自己責任じゃないですよね。本当に、こんな社会のどこに救いがあるのか。考えると暗くなってしまいます。