ポンコツロードノベル、発進!
* * * * * * * * * * * *
「田舎のポルシェ」…実家の米を引き取るため大型台風が迫る中、
強面ヤンキーの運転する軽トラで東京を目指す女性。
波乱だらけの強行軍。
「ボルボ」…不本意な形で大企業勤務の肩書を失った二人の男性が意気投合、
廃車寸前のボルボで北海道へ旅行することになったが――。
「ロケバスアリア」…「憧れの歌手が歌った会場に立ちたい」。
女性の願いを叶えるため、コロナで一変した日本をロケバスが走る。
* * * * * * * * * * * *
篠田節子さんのロードノベル、3篇を収録した本です。
表題作「田舎のポルシェ」
岐阜に住む女性が実家の米を引き取るために、
軽トラを運転手込みで手配し、東京を目指します。
ところがその運転手は紫のツナギ、坊主頭に手ぬぐい巻き、喉元には金鎖のネックレス。
どう見てもヤンキーで、びびってしまう翠(みどり)。
しかも折悪しく台風が迫る。
こんなアブナイ道行きを行く二人の物語。
東京とは名ばかりの昔ながらの風習の残るど田舎出身の翠。
女には教育なんか要らないといわれ、
ひたすら男達に尽くすことばかりを強要されるのがイヤで、
高校を出てからは家を出て、自立をめざし頑張ってきた。
・・・なんだかこんな話をつい最近読んだような、と思ったのですが、
「アンのゆりかご」で語られる村岡花子さんの実家の様子ですね。
こちらはもちろんフィクションだけれど、
こういう家父長制度的考えが今もまだ根強いところがあるのだなあ
・・・と感じ入った次第。
本作では、二人の旅の中でこの二人のこれまでの人生が明かされて行きます。
強面ヤンキーの瀬沼はこれでなかなかの苦労人。
バツイチ。
見た目とは裏腹に仕事は丁寧で、心優しいところもある。
台風で道がふさがり、なんと山の中の火葬場で一夜を明かすことになったりもしながら、
二人には次第に「同士」のような親しみが・・・。
好きな物語です。
「ボルボ」は、引退したおじさま2人の優雅な北海道を巡るドライブ
のストーリーかと思ったのですが、
意外にもパニック映画みたいな展開になってドッキリ。
篠田作品だから、ただののんびり旅行話のわけはありませんでした・・・。
「ロケバスアリア」はコロナ禍で起こった日常の変化を強く物語る作品です。
好きな一冊となりました。
図書館蔵書にて
「田舎のポルシェ」篠田節子 文藝春秋
満足度★★★★.5
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます