映画と本の『たんぽぽ館』

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ぜんぶ、ボクのせい

2023年08月03日 | 映画(さ行)

母を求めるものたち

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児童養護施設で母の迎えを待ちながら暮らす優太(白鳥晴都)。
事務所に忍び込み母の居場所を探った優太は、母に会うために施設を抜け出します。

母の元にたどり着いてみれば、母(松本まりか)は同居する男(若葉竜也)に依存し、
自堕落な生活を送っていて、母の連絡を受けた施設の職員が迎えに来たのでした。
その場を逃げ出した優太は、絶望しあてもなく海岸を歩いていましたが、
そこで、軽トラックで暮らすホームレスの男・坂本(オダギリジョー)と出会います。
2人は日銭を稼ぎながら寝食を共にするようになっていきます。

そしてまた、たまに訪れる孤独な少女・詩織(川島鈴遙)とも知り合い、
3人はときおり寄り添って穏やかな時を過ごしていたのですが・・・。
勝手に住み着いたホームレスに、よくない感情を持つ者もいて・・・。

救いのない感じのストーリーなんですが、本作を読み解く鍵は「母」でしょうか。

優太は5歳くらいの時に母にこの施設に預けられ、
当初は母もよく面会に来たそうなのですが、まもなくほとんど現れなくなる。
優太が中学生となった今は、もう気にかけてもいないようだ・・・。
同じ施設の皆ともなじめない優太はいつもひとりぼっち。
ここは自分の居場所ではないと感じているのです。
だからこそ、母の迎えを心待ちにしているのだけれど・・・。
ついに待ちきれず自分から会いに行きますが、
それは全く自分が想像した「母」の姿とは違う。

また、坂本も子どもの頃から母にはまともに扱われず、以来孤独な時を過ごしている。
そして、詩織も幼い頃に母が亡くなっていて、
横暴で娘のことをまともに知ろうともしない父と共に暮らしてはいるけれど、やはり孤独。

母親、つまり子供のことを我が身と同じか、
もしくは我が身以上に大切に思い愛してくれる存在の不在。
それが彼らの共通点です。

がしかし、実は「母」がそうしたものであるというのは単に幻想に過ぎないわけで・・・。
優太はその幻想に気づいてしまったわけですね。

坂本は、亡き母は認知症であり、「母」への願望がすでに叶うわけもないことを気づいていた。

そして詩織も、母が自殺だったことを知り、
たとえ今生きていたとしても、自分が望む「母」ではないことに気づいている。

自分が望む「母」はどこにもいない。
そうした気づきが絶望へと変わり、悲劇的なラストへと繋がっていくのでしょうか。

3人が「母」ではない安らぎを、
この3人の友愛の中に見出しかけたように思えたのですが・・・。

<WOWOW視聴にて>

「ぜんぶ、ボクのせい」

2022年/日本/121分

監督・脚本:松本優作

出演:白鳥晴都、川島鈴遙、松本まりか、若葉竜也、仲野太賀、木竜麻生、オダギリジョー

 

生きにくさ度★★★★★

満足度★★★.5

 



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