古来から日本にいた、不思議な力を持つ人々
* * * * * * * * * * * *
監視ドローン飛び交う息苦しい社会で、元気に生きる母・姉・弟の入谷ファミリー。
一家は不思議な力を持つ"カザアナ"と出会い、
人々を笑顔にする小さな奇跡を起こしていく。
読めば心のびやか、興奮とサプライズに満ちた著者待望の長編エンターテインメント
* * * * * * * * * * * *
後白河法皇や平清盛の登場する平安の世と、
監視ドローンの飛び交う息苦しい近未来が交互に語られる、
ちょっと不思議な物語。
その平安の世までには、“カザアナ” と呼ばれる不思議な能力を持つ一族がいました。
天気のことに詳しかったり、石のことに詳しかったり・・・。
ささやかであまり役に立たない能力であったりもしますが、
人々のほんの少しの力になりながら過ごしていたのが、
この時代に貴族に珍重されるようになり、
そしてやがては忌み嫌われて、滅ぼされてしまう。
そんな悲しい一族。
しかし、ごく一部に生き残り、その力は潜伏しながら子孫に受け継がれていく・・・。
さて、千数百年を経て、3人の身の上にその力が覚醒します。
その時代は、様々な要因からすっかり経済的に落ちぶれた日本。
その日本が起死回生をかけて、観光革命に打って出るのです。
日本の「いにしえ」を再現。
西洋的なものは排除。
まあ、その辺の発想までは悪くはない気もしますが、
問題なのはすっかり統制社会となっていて、
空には監視ドローンが常に飛び交い、規制に反する者は排除されてしまうというところ。
今も世界の中にはこんな国が多くあると思いますが、
この日本がそうならないとは限りません。
でも本作は、そんな世の中を根底から覆そうとする大胆なストーリーではなくて、
そんな中でも少しでも住みよい社会にしたいと奮闘する、
ファミリーと、カザアナたちの物語です。
監視社会は論外ですが、経済大国ではないあり方を考えてみてもいいのかなあ
・・・と思ったりします。
「カザアナ」森絵都 朝日文庫
満足度★★★.5
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます