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ラストキング・オブ・スコットランド

2008年12月29日 | 映画(ら行)
ラストキング・オブ・スコットランド (特別編) [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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あんたはまるで子どもだ。だからかえってものすごく怖ろしくなるんだ。

                * * * * * * * *

1970年代、ウガンダの独裁者イディ・アミンの実像に迫った骨太のストーリーです。

主人公は、架空の人物でスコットランドの青年医師ニコラス。
彼は、理想に燃えウガンダにやってきます。
そこでは、クーデターによりアミンが大統領として政権を握ったところで、
民衆に絶大な支持を得ていた。
ふとしたことからニコラスはアミンに見出され、彼のお抱え医師となる。
青年らしい好奇心と無邪気さで、アミンに近づいたニコラスだったが、
次第に残虐な独裁者へと変貌していくアミンを目の当たりにすることになる。

武力で手に入れた権力は、やはり武力で奪われるのではないかとアミンは思っている。
だから、ほんの少しの造反の芽も見過ごすことができない。
周りの誰も信用することができず、
少しでも疑わしければ即ち死。
これが大量虐殺の真相ではないでしょうか。
30万人ものウガンダの人々が彼によって惨殺されたのです。

能天気なニコラスは、アフリカやウガンダのことなど何も知らない、私たちそのものです。
物語を彼の目を通して語ることで、私たちをウガンダの現実に入り込みやすくしています。

お抱え医師となり、また相談役ともなったことで、浮かれ気分だったニコラスだったのですが、
次第にアミンの何かがおかしいと感じ、
共感できなくなってくる。
そしてまた、自分自身もこの怖ろしい政治の加担者であることに気づき、激しい罪の意識にとらわれるのですが・・・。
そのときには、もう遅いのです。
事態は抜き差しならない方向へ進み、次第に彼自身の生命すら危ぶまれてくる。
この辺の圧倒的な緊迫感はすごい。
特に終盤の空港のシーンは壮絶です。

まるで小さな子どもが絶大な権力を持ってしまったかのような・・・、
ほとんど狂気とも思える、アミン。
フォレスト・ウィテカーが様々な映画賞を総なめしたのもうなずけます。
しかし、この人は実在していたわけですからねえ・・・。
このような人物に従う人がいる、というのが信じられないし、信じたくないです。
でも、こういうことは歴史においては珍しいことではないですね。
何もヒトラーを引き合いに出すまでもなく、権力者というものはそういうもの・・・。
歴史は残酷で怖ろしいです。


ジェームズ・マカヴォイは、「ペネロピ」、「つぐない」、「ウォンテッド」。
今の私にはとてもなじみのある方なんですが、この作品は2006年のもの。
もし公開時に見ていたら、全然知らない俳優さんでしたね。
そういう意味では、今見たのは正解かも。
その分、プラスアルファで楽しめてしまいましたから。

2006年/アメリカ/125分
監督:ケビン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー、ジェームズ・マカヴォイ、ケリー・ワシントン、サイモン・マクバーニー



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