映画と本の『たんぽぽ館』

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ラブリーボーン

2010年02月13日 | 映画(ら行)
死者の安らぐ世界はきっとある



             * * * * * * * *

14歳の少女、スーザン・サーモン。
普通に幸せな女の子でしたが、ある時突然、何物かによって殺されてしまう。
彼女は、この世と天国との合間の世界にしばしとどまって、
彼女を失った家族たちをひたすら見守り続けます。


この映画は、浮かばれない霊が何かをする・・・というホラー系のストーリーではないのですね。
言ってみれば、
このように事故や事件に巻き込まれ、不幸にも亡くなってしまった人の家族へ向けた
癒しのストーリーなのでしょう。
スーザンは自分が死んでしまったことよりも、
彼女を亡くして憂い悲しみ、お互いのいたわりや信頼さえ失って
ばらばらになってしまう家族のことが気がかりなのです。
しかし、そんなこともいつしか時が解決する・・・・。



静謐な合間の世界は、様々に姿を変えます。
時に夢のように美しくおだやか。
“この世”ではない世界。
・・・そして“天国”。
たとえ“事件”がきちんとした解決の形をとらないとしても、
死者の行くべき世界はちゃんとある。
きっとある。
そこは穏やかで、満たされた世界なのだろう。
きっと。
・・・そういうふうに思えば、
残された者も、少しは生き続けている自分に罪悪感を抱かないですむのかも。



この、スージー役のシアーシャ・ローナン。
薄青い瞳が何ともいえず印象的でした。
まさに、あちらの世界から、こちらの世界を眺めている、そんな目なんですよね。
ああ、そういえば「つぐない」にでていた彼女も、
密かに姉の情事をじっと見つめていましたっけ。
何かそういう不思議な力を感じる瞳なんです。
この先も楽しみですね。



父親役が、マーク・ウォールバーグ。
「極大射程」などで、アクション俳優のイメージがあったのですが、ここでの彼もステキです。
娘を目に入れても痛くないというふうに愛していたことがとてもよく伝わります。

巨大なボトルの中の船が実際の海に浮かんでいるシーンは、
現実シーンともリンクし、すばらしいイマジネーションでした。
ボトルに閉じ込められた船は、
死んだまま閉じ込められているスージーを暗示していたのかもしれません。

2009年/アメリカ/135分
監督:ピーター・ジャクソン
出演:マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、スーザン・サランドン、スタンリー・トゥッチ、シアーシャ・ローナン


映画『ラブリーボーン』予告編




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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは。 ()
2010-02-15 06:28:11
こんにちは。
この映画の内容が非常に気になっていました。
ブログに記事、ありがとうございます。
価値観として、西洋人と東洋人の間の隔たりがあるのでは?と思っているのですが、そのあたりはいかがだったのでしょうか?
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宗教色 (たんぽぽ)
2010-02-15 21:18:59
>亮さま
う~ん、私の見たところは、特に西洋・東洋の宗教観の相違のような物は感じませんでしたが・・・。
というより、キリスト教色を感じなかったというのは、むしろ東洋よりだったから???
いい加減ですみません。
つまりはいずれにしてもさほど宗教色は感じなかった、ということなのですが。
ネタ晴らしになってしまうかもしれませんが、気になるのは、結局きちんとスーザンの遺体は発見されないまま。このあたり、私たちの感覚からするとどうも落ち着きが悪いのですが、西洋的にはどうなのかなあ、と。それくらいですね。
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逝ってしまった者 (de-nory)
2010-02-27 12:24:25
たんぽぽさん。こんにちは。

「ゴースト」のような展開を想像していたので、少々面食らいました。
残された者も、逝ってしまった者も「死」というその事実を乗り越えて初めて、それぞれ先に進めるものなのだな。
逝ってしまった者にも、そういった視点で描いているところが、斬新だったと思ってます。
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Unknown (たんぽぽ)
2010-02-27 20:12:43
>de-noryさま
平和で美しい死んだ後のあちらの世界。
これは生きている者が心を慰めるための自己満足だとは思うのですが、ここのところ、本当にそういう世界があるといいと思われてなりません。
ついこの間まですぐここにあった「存在」が「無」になってしまうのはあまりにも寂しいですものね。
おっしゃるとおりこの作品は、彼女が死んだその事件性よりも、残された者がどのようにそれを乗り越えるか、というところが主眼なのでしょうね。
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