人生のどん詰まり、どん底のふたり
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俳優を目指して上京した翔太(村上虹郎)。
しかし芽が出ず、オレオレ詐欺に加担してなんとか食いつないでいます。
ある夏、故郷の和歌山にある高齢者施設で所属劇団が演劇を教えることになり、翔太も同行。
その施設で働くタカラ(芋生悠)と出会います。
そんなある日、祭りに誘うため、タカラの家を訪ねた翔太は、
刑務所帰りの父親から性的虐待を受けているタカラの姿を見てしまいます。
そしてそこで事件が・・・。
逃げ場のない現実に絶望し、たたずむだけのタカラを、
翔太は衝動的に連れ出し、2人のあてのない逃避行が始まります。
翔太は俳優を目指すと言いながら、すでに稽古もおざなりで
自分の才能も信じられなくなっていたのです。
オレオレ詐欺で老婆をだましてもさして罪悪感もない。
あるのは自己嫌悪くらい。
こんな若者が、レイプされている女性を助けようと思ったのは、
さすがに目の前で行われている惨状を見ないふりはできなかった。
そして、力ではどうにもならない、痛めつけられても耐えるしかないどん詰まりの彼女に、
自分と同じ匂いを嗅いだからなのかもしれません。
でも実のところはさっさと警察に連絡した方がよかったのですが・・・。
行くあてもなくお金もなく、無意味に逃避行を始める2人。
絶体絶命、底辺の底辺にいる2人。
結局は互いのぬくもりだけが支えなのでした・・・。
演劇には疎い私、「ソワレ」って何だっけ?と思ってしまったのですが、
つまり演劇などの昼公演がマチネで、夜公演がソワレ。
翔太が演劇活動をしていることから来ます。
作中、道成寺にまつわる「安珍清姫」伝説と絡むところがあり、
ラスト付近の翔太とタカラが演じるこの舞台の一シーンがなんとも心に迫るのでした。
ただ、安珍清姫とこの2人の関係性が重なっているかというと、
そうでもないようなのがちょっと残念な気もします。
・・・あ、でもそうでもなくはないのか?
「きっとまた帰ってくる」と約束した言葉に安珍は従わなかったけれど、翔太は・・・。
ということなのでしょう。
村上虹郎さんと芋生悠さんの熱演が、とにかく光ります。
<サツゲキにて>
2020年/日本/111分
監督・脚本:外山文治
プロデューサー:豊原功補
出演:村上虹郎、芋生悠、岡部たかし、康すおん、江口のりこ
人生のどん詰まり度★★★★★
満足度★★★★☆
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