映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アンダー・ザ・シルバーレイク

2018年11月07日 | 映画(あ行)

スカンクの匂いに染められて

* * * * * * * * * *

セレブやアーティストが多く暮らすロサンゼルスのシルバーレイク。
そんなところに住むサム(アンドリュー・ガーフィールド)は、
目下仕事もなくぼんやり過ごしていて、
部屋は家賃の滞納で間もなく退去させられそう・・・。
そんな彼が、隣に住む美女サラに一目惚れ。
「明日また来て」と言われ、次の日彼女の家を訪れると家はもぬけのカラ。
サラは失踪してしまったのです。
サムはサラの行方を探し始めますが、
そんな中で街の裏側に潜む謎めいた暗号の存在に気づきますが・・・。

普通の人が気づかない身の回りに仕込まれた陰謀。
一体誰が誰に向けて、なんのために・・・?
そうした謎を解き明かしいていく作品ですが、
単なるミステリという作りではなくて、どこかクラシカルでありながら、幻想的。
けれどもやはり現代に間違いないという不思議な雰囲気をたたえた作品です。



「なにこれ、よくわかんない」と言いたくもなるのですが、
だけれども、そう言い捨てて終わりにするには忍びない魅力もある。
一庶民たるサムやもちろん私なども、考えてみたこともないけれど、
古くからの「名家」と呼ばれるセレブたちの間に、なにか秘密があるのではないか・・・
などという勘ぐりは実は信憑性があるのでは?というのは面白い発想です。
彼らの間には彼らだけに伝わる秘密があって、それは暗号で示される。
ごくごく当たり前にラジオやTVで流れるヒット曲の中に、それはある。
1ドル札の図柄にも秘密が隠されている、というのは別の作品の中にもありましたが、
本作でもそんなことが匂わされていました。

サムは友人のオタク青年の力も借りてその暗号を解き明かしていくのですが・・・。
超セレブたちの願いの行き着くところ、というのもまたなるほど・・・という気もします。
庶民が夢見るのがセレブの生活であるわけで、
それが日常となった彼らの願いはもっとその先にあるというわけか。



本作中、サムはスカンクに匂いを吹きかけられてしまい、
以後ずっと臭いまま。
出会う人皆に「臭い」といわれてしまいます。
この匂いこそが、セレブでもなく、庶民なのにセレブの秘密を知ってしまった
“異質”な存在であることの象徴なのかもしれません。
そして最後に気づいたのですが、サムの家の近所のたくさんの鳥を飼っている女性、
実は彼女は作中では一言も言葉を発していなかったのではないか?
もしかすると彼女もまた、知ってはならない秘密を知ってしまった一人なのでは?
などと想像を巡らせてしまいました。

この作品がひどく古めかしい印象を受けるのは
なんと言ってもシーンごとに流れる効果音楽。
効果音でもバックミュージックでもなくて、正しくはなんと言えばいいのだろう、
ドキドキハラハラとか衝撃とか悲しみとか・・・感情を表す音楽で、
近頃の映画ではまずないのだけれど、50年代60年代位の映画なら必ずある。
私がその頃の映画作品を見て、いかにも古色蒼然と感じるのはその音楽を聞いた時。
だから本作を見ていると一時代前の映画のような印象を受けるのだけれど、
スマホなどが出てくるのでやはり現代のストーリ―なのです。
またひどくいかがわしいシーン、残虐シーンなどもあって感情が揺すぶられ、翻弄されます。
間もなく部屋を退去しなければならないというのに、
お金の工面をするでもなくひたすら暗号に取り組むサム。
真剣なのか投げやりなのかよくわからない。
まさに現代の混沌ですな。



ジェームズ・ディーンでお馴染みの、ラ・ラ・ランドにも登場した
グリフィス天文台が出てきたのはちょっと嬉しかった。


<ディノスシネマズにて>
「アンダー・ザ・シルバーレイク」
2018年/アメリカ/145分
監督:デビッド・ロバート・ミッチェル
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ、トファー・グレイス、ゾーシャ・マメット
不可解度★★★★☆
満足度★★★.5



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