彼女はなぜ、それを飲み込むのか
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ニューヨーク郊外、プールもある邸宅。
資産家の御曹司と結婚し、誰もがうらやむような生活を手に入れたハンター(ヘイリー・ベネット)。
しかし、どうも幸せそうには見えないのです。
まともに話を聞こうとしない夫。
彼女を見下す義父母・・・。
親しい友人もなく、広い家でひとりぼっちで過ごす毎日。
そんな彼女はある日、美しいビー玉を飲み込みたい衝動に駆られ、
そして、本当に飲み込んでしまいます。
すると、不思議に充足感に満たされるのです。
それからはちょっとした金属片や石ころを飲み込んでは快楽に浸ることを
人知れず繰り返すようになります。
彼女は後にトイレでそれを回収して鏡台に並べ、コレクションにしたりもします。
そのうちにヘイリーは妊娠。
そして病院でエコー検査を受け、
彼女がおかしなものを飲み込んでいることがバレてしまいます。
異物を飲み込んでしまうのは、「異食症」といって、稀にあることのようです。
精神障害の一種なんですね。
誰もができないようなことをすることで一種の達成感・充足感が芽生え、
多幸感を得るのでしょう。
そうなってしまう前提として、限りない自己肯定感の欠如があるようなのです。
そしてこの場合、ハンターには自らの出自という大きな要因があったことが分かります。
家族の中で誰からも愛されていない。
それは彼女が生まれたときからのこと。
そして結婚によりようやく1人の男性からの愛を得たのもつかの間、
もともと夫はハンターを生活の中の「お飾り」としか見ていなかったようで、
ハンターの異食症を知るともう、少しはあったのかもしれない愛も吹き飛んでしまいます。
ますます孤独に沈んでいくハンター。
確かに、ハッピーエンドにはなり得ない話・・・。
ビー玉を飲み込んで恍惚の表情を浮かべるハンターが、異星人のように不気味です。
しかしおそらく、彼女はこれまでの人物関係をかなぐり捨てて
別の世界で生きた方がいい。
そうした中で、自分を好きになることができればきっと
ビー玉を飲み込まなくても済むようになるのでは・・・。
<Amazon prime videoにて>
「SWALLOW スワロウ」
2019年/アメリカ・フランス/95分
監督・脚本:カーロ・ミラベラ=デイビス
出演:ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーベル、デビッド・ラッシュ
ミステリアス度★★★★☆
満足度★★★.5
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