映画と本の『たんぽぽ館』

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はじまりへの旅

2017年04月10日 | 映画(は行)
ワイルドだろ~



* * * * * * * * * *

久しぶりに、ビゴ・モーテンセン♥
しかしこれがまた、いいんですよね―♪


現代社会から切り離されたアメリカ北西部の森。
ベン・キャッシュ(ビゴ・モーテンセン)は、
独自の教育方針で6人の子どもたちを育てています。
子どもたちは学校に行っていませんが、
アスリート並みの体力を持ち、6ヶ国語を操り、社会問題を語ります。
18歳長男ボウ(ジョージ・マッケイ)は、
数カ所もの名門大学合格の通知を受けています。
そんな時、入院中の母親が亡くなり、
一家は葬儀に出席するため、2400キロ離れたニューメキシコへ。
子どもたちは生まれて初めて、現代社会と接触することになりますが・・・。



ベンの自然主義というか自給自足の生活へのこだわりがタダモノではありません。
動物を狩り、自分たちでさばいて調理します。
山道を走ったり、崖を登ったりして体を鍛え、学習時間もきっちり確保。

また時にはみんなで音楽を奏でたりもする。
どうしても必要なものがあるときにだけ、村まで降りて用事を足します。



狩りはちょっと勘弁してほしいですが、
何やら羨ましくもある、そんなワイルドな生活。
さてところが、そんな子どもたちがいきなり街に出るとどうなるか。
見るものすべてが珍しいうちはまだいいのですが、
自分たちが当たり前だと思っていたことが通用しないのです。
ボウは、知識として愛も恋も、キスもセックスのこともわかっている。
けれども実際に女の子を前にすると、どうしていいかわからない。
亡くなった妻の実家の父母に、ベンは散々に言われてしまいます。
娘が亡くなったのはお前のせいだ。
子どもたちを学校にも行かせないで、
無理やり崖登りをさせて怪我をさせたりしている・・・。
これまで子どもたちの唯一信頼できるリーダーであった父親が、
世間から見れば、異端者、
ただの困った変人であるということが、子どもたちに見えてくるんですね。



本作は、常識と思われている現代社会の有り様への警鐘でもあるけれど、
結局は子どもたちのアイデンティティの問題でもあるのだろうと思いました。
いきなり父親に
「これまでのことは間違いだった」
と言わてれても、すんなり納得できるはずはありません。
彼らが生まれ育った場所、家族とともに過ごした時間、
そういうものが彼ら自身を作っている。
ここで父親に間違いだったと言われてそれを認めたら、
今の自分の存在すらも間違いということになってしまいます。
だからすごく納得できるラストでした。



まあ実際、行き過ぎはよくありません。
このあと子どもたちがどんな道を進むのか、すごく興味があります。
ボウは名門大学には行かないようですけどね。

「はじまりへの旅」
2016年/アメリカ/119分
監督:マット・ロス
出演:ビゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、ジョージ・マッケイ、サマンサ・アイラー、アナリース・バッソ
ワイルド度★★★★☆
満足度★★★★.5


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