映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「コロナ黙示録」海堂尊

2023年03月09日 | 本(その他)

「あの頃」を今一度

 

 

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豪華クルーズ船内で新型コロナウイルスのパンデミックが発生。
政府の対応が後手に回る中、厚労省技官・白鳥の差配で
クルーズ船の感染者を東城大学医学部付属病院で引き受けることになり、
不定愁訴外来の田口医師が対策本部長に任命された。

一方、北海道の雪見市救命救急センターでもクラスターが起こり、
センター長の速水たちも濃厚接触者に……。

混乱する社会状況に彼らはどう立ち向かうのか!?

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海堂尊さんの “桜宮サーガ”、オールキャスト!!
新型コロナウイルス禍、始期の物語。

本巻が書き下ろしとして刊行されたのが2020年7月。
あの豪華クルーズ船の感染爆発が起こったのが1月ですので、
ものすごい速さで描かれていますね。

今となってはもう忘れかけた、あの頃の
コロナウイルスに対しての恐怖心がまざまざと蘇りました。
つまりあの頃は、新型コロナウイルスに対して私達は、全くの無防備でした。
敵の前になんの防具も武器も持たずに立っているような。
今は、何度もワクチンを受けて、曲がりなりにも防具を身につけている。
だからこそ、当時では考えられない感染者数でも平気で出歩いて、
マスクもはずそうかという状況でいられるわけですよね。

あの頃、緊急事態宣言でお家ごもりになったのは、
ムダなことではなかったと思う次第。

 

さて本作は、あくまでもフィクションといいながら、
コロナウイルス感染拡大の様子は、実にリアルに事実に基づいて書かれています。
そして、その対応のマズさについても赤裸々にそのままに・・・。

そして海堂尊さんのことですから話がウイルスのことだけにとどまるはずもなく、
強烈な政権批判が展開されています。
内閣総理大臣・安保宰三のこと、
その妻・安保明菜のこと、
内閣官房長官・酸ヶ湯のこと・・・。
総理に忖度しまくってまともな判断をしようとしない人々・・・。

そんな中で、本作の希望の光、北海道の雪見市救命救急センターの速水医師、
極北市民病院の世良医師、
桜宮市の東城大学医学部付属病院のおなじみの面々、
彼らが最善の策をサクサクと進めていく様がなんともここちよいです。
本当にこんな人々と病院がたくさんあればよかったのに・・・。

何でいつまで経ってもPCR検査の実施数が少ないままなのかとか、
東京オリンピックを開催するかしないかと、
やきもきしたりすったもんだしたことなども思い出しました。

いま、結局あれらのことはどういうことだったのか、
振り返ってみるのも悪くありません。

 

図書館蔵書にて

「コロナ黙示録」海堂尊 宝島社

満足度★★★★☆



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