映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「和菓子のアンソロジー」坂木司他

2014年08月05日 | 本(その他)
取合せの妙、ミスマッチの妙

和菓子のアンソロジー (光文社文庫)
坂木 司
光文社


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「和菓子」をモチーフに、短編を一作書いていただけませんか?
読書家としても知られる『和菓子のアン』の著者・坂木司が、
今いちばん読みたい人気作家たちに執筆を依頼。
日常の謎を描くミステリーから、
壮大な世界観を展開するSF、
心温まる優しい怪談まで、
さまざまな読み味の作品が揃いました。
疲れたときに読みたくなる、宝箱のような一冊。


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あの「和菓子のアンの著者坂木司氏のリクエストにより、
人気作家10人が「和菓子」をモチーフにストーリーを展開。
いやはや、「和菓子」からどうしてこんな発想ができるのかと、驚かされ、感動されられ・・・
非常に読み応えのある一冊となりました。
和菓子が好きな方も、そうでない方も、ぜひどうぞ。


まずは坂木司さん自らの「アン」ちゃんのシリーズで「空の春告鳥」。
アンちゃんがふと耳にした「飴細工の鳥」ということばの謎を
解き明かしていくというストーリー。
おなじみの流れで安心感があります。
アンちゃんは和菓子屋に勤めているからこそ和菓子の話になるのは当たり前。
さてしかし、和菓子屋店員ではない者を主人公に据えると一体どうなるのか?


近藤史恵「迷宮の松露」
ふと思い立ってモロッコにやって来て滞在しているわたし。
モロッコの土の壁の迷宮はいつも自分を迷わせる。
そんな彼女が思い出すのはおばあちゃんのこと。
そしておばあちゃんとの思い出のお菓子・・・。
モロッコと和菓子。
この意外な取り合わせに唸らせられます。


柴田よしき「融雪」
私は本作の雰囲気がこの本の中では一番好きかもしれません。
田舎町に自力でカフェを開いた女性が、
地元の有機栽培野菜などを用いて店に出す料理を工夫します。
この店を訪れた男女のストーリーがまた心惹かれまして・・・。
まあ、今どきの女性のトレンド的ストーリーではありますが、やはり好きだな・・・。


小川一水「時じくの実の宮古へ」
地球温暖化で文明が崩壊、
廃墟は砂糖きびと葛とキャッサバに覆われている・・・
という未来の日本。
思い切り壮大なSFとなりましたが、ここになぜ和菓子が登場するのか???
多少無理矢理な気もしますが、面白いですよ~。


恒川光太郎「古入道来たりて」
こちらはなんとも幻想的。
談でもありファンタジーでもありますね。
る山奥の電気も通じていないような小屋で、深夜男が目撃した光景とは・・・!
それが戦争体験とも結びついているというのがいっそうの深みを増すのです。
この光景、私はぜひ宮崎アニメでみてみたい。
絶対いいと思うなあ・・・。

「和菓子のアンソロジー」坂木司他 光文社文庫
満足度★★★★★



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