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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

エンパイア・オブ・ライト

2023年03月05日 | 映画(あ行)

心にしみる・・・

* * * * * * * * * * * *

1980年代初頭、イギリス。
海辺の町、マーゲイト。
映画館エンパイア劇場で働くヒラリー(オリビア・コールマン)は、
つらい過去のために、心に闇を抱えています。

ある日、大学進学への夢をあきらめて、映画館で働くことを決めた
黒人青年スティーヴン(マイケル・ウォード)が同僚に加わります。

過酷な現実に路を阻まれていた二人は、少しずつ心を通わせていきますが・・・。

80年代というのが、異国の地ではありますがどことなく郷愁を誘います。
映画フィルムの搬送や上映の様子なども、
おそらく今は見られない光景なのでしょう。

ヒラリーは作中で詳しい年齢は明かされませんが、50代くらいでしょうか? 
いや、私には60代にも思えたけれど、あちらの方はちょっと老けて見えるので・・・。

彼女は、ここの支配人(コリン・ファース)に思い切りセクハラ(いや、それ以上の行為だけど)を
受けているのですが、あまりにも自己肯定感が低いので、
いやいやながら受け入れるほかないと思い込んでいるようです。
そんな彼女が、スティーヴンの若くしなやかな体を美しく思う・・・。
この青年がいいんですよね、確かに。
素直でまっすぐで、やさしい。

そこで、人種の別とかなりの年齢差、人から見ると奇異に映ることでしょう。
でも人と人とのふれあいや絆に、そんなことは実はどうでもいいことなのかもしれません。

折しもイギリスは大不況の波がよせて、
安い賃金で働く移民、特に黒人が目の敵にされ、
大がかりな排斥運動が巻き起こっていたのでした。
それ故に、差別発言ばかりではなく暴力まで受けて、深く傷ついてしまうスティーヴン。
そして、小康状態にあり、スティーヴンと出会ってからは調子を取り戻していた
ヒラリーの心がまた次第に壊れていく・・・。

二人にはただ黙って抱きしめ合うしかないではありませんか・・・。

それでも、やはり若者には未来が必要なわけで・・・。
まさに、心に染み入る良品。

あ、作中でスティーヴンは、
映画館で働いているのに映画を見たことがないと言うヒラリーに、
ぜひ一度ゆっくりきちんと映画を見るように、と言います。
「映画を見ている間だけは現実を忘れられるから」と。

さしずめ私などは、映画を見過ぎてすっかり夢の中で生きているのかも・・・。

 

というわけで(どういうわけだ?)、
おばちゃんが“めめ”にぽ~っとなるくらいは、許してくださいねー。

 

<シアターキノにて>

「エンパイア・オブ・ライト」

2022年/イギリス・アメリカ/115分

監督・脚本:サム・メンデス

出演:オリビア・コールマン、マイケル・ウォード、トム・ブルック、
   トビー・ジョーンズ、コリン・ファース

時代設定度★★★★☆

心のふれあい度★★★★☆

満足度★★★★★