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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ヴァラエティ」奥田英朗

2021年10月07日 | 本(その他)

本領発揮の短編集

 

 

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夫婦での帰省中、なぜか車にヒッチハイカーを乗せる妻。
乗った男が失礼で、腹を立てる夫だが、
妻は今度は見知らぬ老婆を乗せて……(「ドライブ・イン・サマー」)。

娘が外泊したいと言い出した。
きっと彼氏とだ。母はどうするべきなのか(「セブンティーン」)

ほか、山田太一氏、イッセー尾形氏との対談も収録。

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奥田英朗さんの短編集。
様々なところに単発で掲載された作品を集めたもの。

それだけに、まさしくヴァラエティに富んでいて、楽しく読めます。

 

「ドライブ・イン・サマー」のハチャメチャなおかしさもいいのですが、
私が気に入ったのは次の2作。

 

「セブンティーン」

17歳の娘を持つ母親の視点で描かれています。

クリスマスを前に、娘が友だちの家に泊まりに行くとウソをついて、
実はカレシとの初体験を計画していることを知って、
母親があれこれ思い悩んでしまう、という話。
反抗期の娘には正面から反対するのは逆効果。
第一まだ早くはないか。
万一妊娠でもしたら・・・、
その予防方法を知っているのだろうか・・・、等々。
でもちょっといい感じのラスト。

恋する乙女のドキドキワクワク感をちょっぴり思い出したおかげ・・・?

 

「夏のアルバム」

小学2年の少年の夏。
親しくしている叔母さんが病で入院しています。
叔母さんには娘が2人。
つまり少年のいとこに当たり、少年よりも少し年上。
よく一緒に遊ぶ親しい間柄です。
2人は気丈にも母親の留守に、おばあちゃんを手伝って料理などもする。
でも、叔母さんは病に勝てず亡くなってしまいます。

一方、この夏、少年は自転車の補助輪を外して乗れるように
練習を始めるのですが、なかなか乗れるようにならず・・・。

本作もラストが秀逸です。
子供なりに耐えていたことの感情の発露。
忘れられない少年の夏ですね。

本作は著者自身が「私の短編では五指に入る出来」とおっしゃっています。
まさに。

 

母親目線、少年目線、どれも的確ですばらしい!!

<図書館蔵書にて>(単行本)

「ヴァラエティ」奥田英朗 講談社

満足度★★★★☆