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8月21日 その2~キナバル山から下山

2007年09月11日 03時02分33秒 | ボルネオ旅行記
 とりあえず1時間昼寝をして体力を少しでも回復して下山である。
 もう膝は笑っていて、その状態で、あの急坂を降りなければならない。それを思うだけでも憂鬱である。



 キナバル山の山頂付近は年間6000mm近い雨が降るという。日本の平均が1700mmくらいだからその3倍以上の値である。それが、氷河によって削られた花崗岩の岩肌をすぐに川になって流れていく。
 この水が、山地林を潤し、低地の熱帯雨林を潤し、海に流れ込む。海には、陸で十分吸収したミネラルを供給し、豊かな生態系を育む。そこで蒸発した水がまたこうして雨となって流れてくる。

 帰り道にはさまざまな鳥が鳴いていて、姿を見せてくれた。
 しかし足が痛すぎて追うことができずカメラに収めることはできなかった。
 キナバル山はバードウォッチャーにも人気のスポットである。ボルネオに固有の鳥も多い。こちらのホームページ(「ボルネオ・キナバル山探鳥記」)などは参考になる。

 さて、山小屋のラバンラタを出ると、周辺にシャクナゲがさいている。高地であるため花も葉も小さくなっている。



 ベルのような形のきれいな赤い色である。シャクナゲも高地適応をしてもう少ししたのものとは大違いだ。この高地性のシャクナゲはランやウツボカズラとともにキナバル山の象徴的な存在だ。

 もう少し下るとシャクナゲの花も大きくなってくる。今度は黄色い大きなシャクナゲを見つけた。




 他にも赤いシャクナゲもあった。



 どれも力強く環境に適応して生きている。
 このあたりには、ベゴニアも真っ白な花を咲かせている。



 花の密度は思ったほどではないが、やはり日本の植生とはあまりに異なっている。

 下りはスピードはさすがに登りよりは早い。しかし、膝が笑いまくっているので、休憩所が来るたびに十分な休憩をとった。
 他の人がいなくなったときに、臆病な動物が現れた。
 明らかにリスではない。鼻がとがっている。動きもリスとは違っていて、地面を這うように走る。休憩所の周りの小さな洞穴を行ったり来たりしている。
 ツパイだ。臆病なため、登山客が大勢いるときには姿を現さないが、登山客たちが餌を落としていくことはよく知っているのだろう。ちょっと静かになってから姿を現した。



 ツパイはネズミに似た原始的な哺乳類が、サルへと進化していく第一歩を踏み出したころの特徴を持っている。系統的にはリスよりもサルに近い仲間だ。
 哺乳類はモグラにちかいような仲間だったと考えられている。そこからげっ歯目が生まれた。原モグラは、繁殖力の旺盛なげっ歯目に負われるように、一方で地中に逃避し現在のモグラになる系統になり、一方で樹上に追いやられてツパイのような動物になった。その中から、遠近感を測って枝から枝へと自在に飛び移れるような動物が生まれた。そのためには目が前についていなければならない。両眼視をしなければ遠近感は分からないからだ。ツパイはまだ両眼視が十分にできないため、半樹上性で半地上性の生活をしている。ここから目が前についたサルの仲間に進化が起こっていったとされている。
 哺乳類の進化については、まだまだ憶測の部分も多いが、そういうストーリーが考えられている。ともかく、ツパイは原始的な哺乳類の特徴を備えた動物なのである。

 休憩所からよく見ていると、樹上性のランがある。



 ランは裸子植物の中でも、最も新しく出現したものだから、他の植物が少ないところで生きていこうとしている。このランも木の上というニッチを見つけて生きている。ランはこうしたところに種子を届けるために、種子を最小限にしている。直径1mm以下で、粉のような種子なのだ。そのため、発芽に必要な栄養まで捨てている。栄養は共生している菌類(カビの仲間)からもらっている。その代わり、発芽して成長したあかつきには、カビに栄養を与える。持ちつ持たれつの関係を構築しているのである。

 もう、足を前に出すこともできず、段差を降りるときの衝撃に耐えられなくなって、ソロリソロリとカニ歩きで降りる。

 やっと入り口付近で見かけたツリフネソウを見かけた。



 なんとか歩きぬいて登山道の入り口にたどりついた。
 
 ベンチで休憩をしながら見ていると、今週末はクライマソンだ。
 クライマソンは、いま、ぼくが登って下った道のりを走り抜ける競技である。ランニングスタイルで練習している人もいた。今までの最高記録は2時間50分だという。ぼくが疲労困憊しながら17時間かけた道のりを、だ。人間鍛えると何でもできそうな気がしてくる。
 そういえば、この山の山小屋に荷物を運ぶポーターの料金は1kgで3リンギットだ。だいたい15kgかついで登るのだとか。それでも45リンギットである。日本円にして3000円弱。それをなんと毎日2往復するのだいう。それでも一日の稼ぎは5000~6000円ほどだ。この重労働では割に合わないとは思うが、小学生くらいのころから山が遊び場であり生活の場であれば、私たちが思うほど重労働とも思わなくなるのかもしれない。ネパールのシェルパたちの力なくしてはエベレスト登山は不可能なのと似ている。それでも、体ひとつが資本の大変な仕事であることに変わりはない。

 このあと昼食を食べて夕方4時ごろにコタキナバルのホテルに戻った。
 マッサージをしてもらおうと思い、町のショッピングセンターにいったら案の定見つけた。ゆっくりと全身のオイルマッサージと足裏マッサージを頼んだ。それでも1500円ほど。2時間の快楽である……と思ったら、足が痛すぎてマッサージに耐えられず止めてもらって、その代わり足裏マッサージを丁寧にやってもらえることになった。

 明日は朝5時に、ボルネオ・ダイバーズのお迎えが来る。
 ホテル近くのレストランで肉骨茶を食べることにした。豚肉を漢方で煮込んだ薬膳鍋料理だ。最初はおいしくなかったのだが、いろいろ自分で味付けができるので、周りを見よう見まねでやっているうちにおいしくなってきた。すごい混雑だったので、人気店なんだろう。
 ほっこり体が温まり眠くなってきた。
 ホテルに帰って寝ることにした。


 
 
 
 

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