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セクシュアリティ・科学・社会・映画

『論座』に掲載の記事

2006年09月09日 04時51分12秒 | ゲイ・コミュニティ
 いま、発売中の『論座』に、永易至文さんのレポートが掲載されています。「セクシュアルマイノリティ「1期生」“ミドル世代”のいま」という記事です。これは、おもに尾辻さんの「レインボー・トーク」をもとに、ゲイの現状をコンパクトに解説したものです。
 
 内容自体は、雑誌を購入して読んでいただく事にして、中身を検討していきたいと思います。

 このレポート(以下「永易レポート」)では、同性愛に関する法的保障がないために不利益を被った例が紹介されます。パートナーが病死したあとで、残された人が遺産相続などの面で不利益を被った例、パートナーと共同名義でマンションを購入しようとしたら断られた例、子連れレズビアンの親権などの権利保障について語られています。
 若い世代では、ここにあげられたような事態は、なじみのないものでしょう。相手との関係が深くなれば深くなるほどリアルな問題となりますので、3ヶ月や半年の「熱き恋愛」を繰り返している若者にはあまり関係がない。 しかし、リアルな問題として浮上してきたときにはすでにとき遅しです。自分がここに揚げられたような問題を抱える可能性があるということがはっきりしてきたわけですね。
 「1期生」以前の世代では、普通に結婚している人も多いし、社会的な面まで踏み込んだ関係性を構築している人は、非常に少ないんだろうと思います。お互いに仕事をして、お互いに住処を持っていたりする。それが、もっと深い仲を構築してくる人が現れ、なおかつ社会の壁にぶつかってはじめて、こういう声があがるようになってきた。こうした問題をどうやってクリアするかというと、もう法的保障しかないわけです。

 「永易レポート」にも登場する棚村先生の言葉では、同性間のパートナーシップを保障するには①同性愛者たちが「契約書」によって公的に関係を明らかにする、②事実婚に同性同士の婚姻も含められるよう裁判などに訴える、③同性パートナーシップを保障する法制度を整備するという道があるということです。逆に言うと、他の道はない。いずれにしろ、同性愛者たちが自分たちの関係を、公的にカミングアウトしていくしか道はないといわれているわけです。

 一般誌ですので、永易さんは一般の人に対して「あなたの隣にマイノリティは生きている」と言っていますが、それだって結局大勢のゲイがカミングアウトすりゃあいい話で、結局「みんなカミングアウトしようよ」という結論しか出てこない。

 並んで掲載されている及川さんの「“夫夫”と“婦婦”に寛容な国 フランス」でも、ベルトラン=ドラノエ市長が同性愛者であることをカミングアウトしてから、同性婚を容認する声が世論調査でもわずか5年間でものすごく高まってきていることが示されています。
 日本なんかでも、上からの命令には従順な人は多いから、お偉方がカミングアウトをしてくれれば一番楽なんですが、そうもいきそうな気配がない。

 とりあえずいまある選択肢としては尾辻さんに国政にまでちゃんといってもらうしかないよなあ~。大阪の人は来年の選挙で絶対に当選させなければいけませんね。

 もっと身近なところでは、あなたのノンケの友達は、親ゲイ的ですか?
 及川レポートでは、フランスで同性婚に対して、賛成している人は実に57%に達しています。少なくとも、自分の身の回りの仲のよい「友達」にすら、自分のことをいえなかったりするような人たちが、最初にあげたような不利益を被っても「そりゃあ、あなたがちゃんと闘わなかったからだよ」としかいえない。そういう事態に巻き込まれるのが嫌なら、覚悟を決めていただく必要がある。そういう悲しみが訪れる可能性があることを選択するのか、それを避けるために社会のなかでビジビリティを上げられるような努力をすることを選択するのかどちらかしかないわけです。

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4 コメント

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Unknown (永易至文)
2006-09-09 11:56:40
 さっそくご高覧、ご紹介、ありがとうございます。

 (みくしーとはべつのコメントをしてみます)



「そういう事態に巻き込まれるのが嫌なら、覚悟を決めていただく必要がある」。大多数のゲイの反発は覚悟で、やはりカムアウトの勧めということになるかもしれません。 

 もちろん、遠い未来に日本になにか法制度ができたときは、その利用者の多くは、肝心のときには闘っていなかった、いわゆるフリーライダー、ただ乗りさんかもしれませんが、もうそれは仕方がない。そりゃ、苦労して闘った人にすれば「なんだよ、どいつもこいつもただ乗りばかりで」と思うかもしれないが、DP法闘争という得難い経験をさせてもらって、「おもしろくもなき人の世をおもしろく」過ごせたとでも思うしかないかなあ。

 圧倒的多数の、DP法ができたらいいな(でも、自分はカムアウトもしないし、動きもしない)という人に、「(不利益は)あなたがちゃんと闘わなかったからだよ」と苦言を呈したい気持ちもわかるけど、カムアウトって、はじめてするときはチクリとするけど、あとはずっと効いてくる予防接種みたいなもの、とでもいうイメージ作りとか効能の宣伝とか、アリーチェさまのアイデアでなにかできませんかしらん。
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Unknown (永易至文)
2006-09-09 12:37:23
あと、今年、IDAHキャンペーンが尾辻さんによって呼びかけられましたがもう一つ、国際的に連帯したらいいものにナショナルカミングアウトデーというものもあります。先日、尾辻さんと立ち話したとき、これも呼びかけようか、そうしたらLGBTコミュニティの年中行事カレンダーができるかなあ、なんて話してたところです。



毎年10月11日は、ナショナルカミングアウトデー

ご存じ、キースヘリングのシンボルマークも楽しい。



http://en.wikipedia.org/wiki/National_Coming_Out_Day

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Unknown (永易至文)
2006-09-09 13:08:11
 ゴメンなさいね。年寄りになると思い出話をだらだら書いてしまって(削除機能があれば、一回降ろして、まとめて投稿し直すのですが)。



 昔、「●カー」に元気があって、若い子がよく集まっていたころ、そうしたビギナー向けグループなどで「カミングアウト報告会」というのをしていました。親にカミングアウトした子が経験を話して、みんなでお赤飯を炊いて(笑)お祝したのです。外部から見れば、なんだかセクトじみて「それもどうよ」と思うかもしれませんが、若いメンバーの励ましになり、そこでノウハウを学んだり、カムアウト後のフォローの場ともなっていたようです。私ら当時においてもロートルだったものは、若い子がつぎつぎカムアウトしてくるので、むしろそれに煽られるようにして親へカムアウトしたものです。また、その経験談のなかで「親に泣かれた」という話もさんざん聞いていたので、自分のカムアウトのとき親に泣かれても、「あ、定石通りの反応」と落ち着いて向き合えたと思います(鬼畜)。

 カミングアウトへの支援ツールや前後のフォローの場が、意外にまだまだ少ないんでしょうねえ。「ア●ー」のカミングアウト報告会とか、いまはどうなってるんだろう……。尾辻さんの「親の会」や札幌も伝統的に親の会がありますが、貴重なんですねえ。
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フリーライダー (玉野)
2006-09-10 16:02:45
 ちょっとあおり気味に書いてみました。

 うちの相棒君を観察していると、クローゼット・ゲイの生態がつぶさに見えるので、ちょうど良いサンプルなんです。彼なんかは、「セクシュアリティの政治に興味がないよね」といわれると、それはなぜか気に入らないらしく一くさり反論をしたあとで、「そんなことを議論したところで何が変わるの?」なんて言って終わります。自分の一票の力をまったく信用していないわけですね。

 彼の場合には、「他人から変に思われる」ことを、ものすごく恐れますので、「カミングアウトなんてしたら、変なヤツだと思われてしまう」という観念が大きすぎて、何の行動もできないわけです。

 都城市の尾辻さんの署名活動についても話をしてみまして、賛同するようなことをいっていたけど、実際にメールを出したりはしないわけです。何の行動も伴わない「興味」は、ないに等しいので、興味がないとしかいいようがない。それを指摘すると、「仕事が忙しい」とかいろいろ言い訳をしますが、3分あれば出せるメールにそんな言い訳が通用するはずはありません。

 世の中そういう人が大多数でしょうねえ。人材的にも、能力的にも、少しでも裾野を広げる努力をしながら、のんびりやっていくしかないですよね。

 



 カミングアウト支援ということでは、一つはぼせ先生が以前やっていた、「同性が好きかもしれない君へプロジェクト」

http://blog.livedoor.jp/bose_web/archives/5281032.html

がありましたが、ぼせ先生がお医者様になり多忙のためか立ち消えています。



 それでも、一時期に集めた証言を集成した、「アーカイブス」はいまでも良い事例が集まっているんじゃないかな。



http://doupro.gozaru.jp/



 あとはかじよしみさんの「アイデンティティハウス」が電話相談をしていますね。



http://identityhouse.blogzine.jp/



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