MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『リリーのすべて』

2016-05-06 00:14:59 | goo映画レビュー

原題:『The Danish Girl』
監督:トム・フーパー
脚本:ルシンダ・コクソン
撮影:ダニー・コーエン
出演:エディ・レッドメイン/アリシア・ヴィキャンデル/ベン・ウィショー/アンバー・ハード
2015年/アメリカ・イギリス・ドイツ

映像化を阻む複雑な夫婦について

 本作は、例えば、『彼は秘密の女ともだち』(フランソワ・オゾン監督 2014年)のようなフィクションではなく、監督のトム・フーパーはかつて『英国王のスピーチ』(2010年)のような比較的確度の高い作品を制作しているため、観客が鵜呑みにしてしまう可能性があるのだが、実話として観るならば本作はあまりにも脚色が過度ではないだろうか。
 主人公の2人が結婚した時期は、エイナル・ヴェゲネル(英語読み アイナー・ヴェイナー)が22歳でゲルダ・ゴットライプが18歳で、それからエイナルが48歳で亡くなるまで26年間の婚姻関係があったのだから、本作で描かれているように6年という短い結婚生活ではないのである。さらにリリー・エルベとなったエイナルは睾丸の摘出手術、陰茎の除去、卵巣と子宮の移植手術など計5回の手術を受けており、本作のように2回の手術ではない。
 それほど状況が違うとなるとリリー・エルベの世界初の性別適合手術が、描かれているほど単純ではないことになると思うのであるが、40代後半になる夫婦の性別適合手術を巡る様子が映像化の際に美しくならないという判断で若い夫婦に代えられたように感じる。その設定の変更がテーマと合っているようには思えないのであるが、ゲルダがレズビアンであったかどうかも含めてその複雑さが映画化の遅れにつながったのであろうから微妙な問題ではある。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする