原題:『Garm Wars: The Last Druid』
監督:押井守
脚本:押井守
撮影:ブノア・ボーリュ―
出演:メラニー・サンピエール/ランス・ヘンリクセン/ケヴィン・デュランド
2014年/カナダ・日本
「名付け得ぬ者」によってもたらされる戦争について
原題にある「Druid」という言葉には説明を要するだろう。「ドルイド」の元々の意味は「キリスト教以前の古代のガリア(Gaul)およびケルト(Celt)族の間で信仰されていた予言と呪術を行なうドルイド族の僧」を指しており、本作においては「かつて創造主ダナンの声を伝えたとされる部族」ということを勘案するならば、空の部族のコルンバの女性飛行士であるカラと陸の部族のブリガの兵士であるスケリグと情報技術に長けていたことで辛うじて生き残ったクムタクの老人ウィドと、ドルイドの最後の生き残りであるナシャンが目指した「ドゥアル・グルンド」という聖なる森の中で見つけてしまったものとは創造主ダナンに代わる新たな創造主であり、つまるところ「キリスト」となる。
姿を消した神の真実を探求する過程において争っていた部族の者たちが一時的にせよ結束出来たにも関わらず、新たな神を見いだしたとたんに人間たちが再び戦争を始めるという物語は皮肉が込められていて興味深いのだが、日本語吹き替え版は新しい神の名前は敢えて不明瞭にしたのであろうが、なかなかセリフが聞き取りにくい。
その上、事件の発端となった、ブリガ族のリーダーが情報中枢にウィドとナシャンを導き入れてしまうくだりはブリガ族でなくても危険であることは分かると思う。バセットハウンドのグラや『ASSAULT GIRLS(アサルトガールズ)』(2009年)でも見られた、カラが拾うかたつむりなど押井守の作風を垣間見ることはできるが、字幕版でもう一度観る必要を感じる。