原題:『Zootopia』
監督:バイロン・ハワード/リッチ・ムーア
脚本:ジャレッド・ブッシュ/フィル・ジョンストン
撮影:トーマス・ベイカー
出演:ジニファー・グッドウィン/ジェイソン・ベイトマン/イドリス・エルバ/シャキーラ
2016年/アメリカ
偏見を克服する方法としての「芝居」について
主人公のウサギのジュディ・ホップスが女性という立場や身体の小ささというハンディを乗り越えて警察学校を首席で卒業しながら、大柄な動物の「巣窟」である警察署で再び「駐車違反の取締り」という閑職に甘んじなければならず、しかしなおもその偏見に立ち向かう強靭な精神力を発揮するものの、そのジュディにしてもいつの間にか肉食動物と草食動物の違いに対する偏見を持っていたために混乱を招いてしまうという本作のテーマの明快さが良い。そのような偏見をどのように克服するかが本作の醍醐味となると思うが、冒頭で9歳のジュディが学芸会で披露した肉食動物と草食動物が仲良くなるという芝居を演じ、クライマックスにおいて事件の黒幕のドーン・ベルウェザーに対してジュディはニック・ワイルドを相手に再び「芝居」を演じることにより事件を解決するのである。つまり自分たちの素質をありのままに認めた上で、自分を客観的に見つめ素質の違う相手と上手く「芝居」を演じながら社会を築いていくことが生きるということなのである。
『シュガー・ラッシュ』(2012年)のリッチ・ムーア監督と『塔の上のラプンツェル』(2010年)のバイロン・ハワード監督による本作はかなり期待して観に行ったが、いかんせんレック・イット・ラルフやラプンツェルと比較するならば主人公のウサギのジュディ・ホップスとキツネのニック・ワイルドの線が細いように感じてしまうのものの、ストーリーの展開の仕方は相変わらず素晴らしい。