MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『HK / 変態仮面 アブノーマル・クライシス』

2016-05-21 00:44:36 | goo映画レビュー

原題:『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』
監督:福田雄一
脚本:福田雄一
撮影:工藤哲也
出演:鈴木亮平/清水富美加/柳楽優弥/ムロツヨシ/水崎綾女/片瀬那奈/安田顕
2016年/日本

ヒーローの変態度の許容範囲について

 前作のヒットで多くの予算がついたおかげもあり、CGのクオリティーが格段に向上し、日本版「スパイダーマン感」が色濃い作品に仕上がってはいたのだが、本作は前作『HK/変態仮面』(2013年)を超えるものにはなっていなかった。一番の問題は色丞狂介が悪を倒すために変態仮面に変身する際に使用するパンティを姫野愛子が返してもらおうとする動機である。前作は変態とヒーローの間に挟まれた主人公の苦悩が上手く描かれていたのだが、本作において「変態仮面は変態であるが自分は変態ではない」というロジックが納得できないとしても、実際に強盗を捕まえることに貢献しており、少なくとも他の女性のものではなく自分のパンティを使っているのだから、愛子がどうしてそこまで頑なにパンティの返却を求めるのか理解できないのである。逆に言うならば本来なら他のヒーロー同様に色丞狂介は自身の正体を明かさないように活躍しなければならないはずなのではあるが、まさかこのネタで続編を制作すると想定していなかったのだと思う。
 分かりやすく例えるならば、三池崇史監督の『ゼブラーマン』(2004年)は面白かったが続編の『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲-』(2010年)にはがっかりした感じと似ている。基本的に「出オチ」の作品はよっぽど脚本を練らないと前作を超えられないということは証明されたのである。『モテキ』(大根仁監督 2011年)の派手な神輿やNHKの『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』の「無敵の男」の引用など、いずれにしてもそんな真面目に観るようは作品ではないということは分かっているつもりなのだけれど、前作で怪演を見せた片瀬那奈の出番が少なかったことも不満として残ってしまう。


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『64 -ロクヨン- 前編』

2016-05-20 00:09:30 | goo映画レビュー

原題:『64-ロクヨン- 前編』
監督:瀬々敬久
脚本:瀬々敬久/久松真一
撮影:斉藤幸一
出演:佐藤浩市/綾野剛/榮倉奈々/夏川結衣/緒形直人/窪田正孝/瑛太/永瀬正敏/三浦友和
2016年/日本

少女誘拐殺人事件に紛れ込んでいる「告発」について

 昭和64年というわずか7日間で終わった年に起こった少女誘拐殺人事件を巡るミステリーの謎解きと思って観ていたら、当時「ロクヨン」の捜査を担当し、現在では群馬県警の警務部広報室に広報官として勤めている主人公の三上義信の、上層部と記者クラブとの間に挟まれている苦悩が描かれていることに虚を衝かれるのであるが、それにしても記者クラブの記者たちはあんなに態度が悪いものなのだろうかというくらい酷いもので、本作は実は記者クラブ批判という、少女誘拐殺人事件というメインテーマに隠されたテーマがあるのかもしれない。
 前編を観ただけでとりあえず言えることは、低予算の作品では映画監督としての実力をいかんなく発揮してきたものの、『アントキノイノチ』(2011年)や『ストレイヤーズ・クロニクル』(2015年)とメジャーな大作になるといまいち実力が出せていなかった瀬々敬久監督がようやく才気走っていたことと、第40回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞は佐藤浩市に確定したということである。


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『ちはやふる -上の句- -下の句-』

2016-05-19 00:02:45 | goo映画レビュー

原題:『ちはやふる 上の句』『ちはやふる 下の句』
監督:小泉徳宏
脚本:小泉徳宏
撮影:柳田裕男
出演:広瀬すず/野村周平/真剣佑/上白石萌音/矢本悠馬/森永悠希/國村隼/松岡茉優
2016年/日本

作品にグルーブを持たせる2人の天才について

 『上の句』で主人公の綾瀬千早を演じた広瀬すずの演技に圧倒され、それだけでも続編を観るに足りると思っていたら『下の句』で千早のライバルとして「クイーン」と呼ばれる若宮詩暢を演じた松岡茉優という、これまた天才の出現で俄然面白みが増した。
 クライマックスの2人の対戦で、相手にかるたを取られた時に、好敵手の出現に却って笑顔を見せてしまう2人の振る舞いが印象的で、再びこの2人の対決が見られることに心の底から感謝したい。


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蓮實重彦の真意が分からない作家

2016-05-18 00:07:38 | Weblog

「80歳の私に…はた迷惑」三島由紀夫賞の蓮實重彦さん
辻仁成、蓮實重彦氏を批判 「はた迷惑」発言は「若手に失礼」
辻仁成、蓮実重彦氏「はた迷惑」に「辞退するべき」
辻仁成、「はた迷惑」発言の蓮実氏に「この発言こそ暴挙」

 おそらく辻仁成は蓮實重彦の著書など読んだことがないのだろう。「候補になると必ず出版社は

通達する。その段階で断らなかったのに受賞後にはた迷惑とは?ならば候補の段階で辞退するべき

では?」と疑問を呈しているが、断らない理由は『伯爵夫人』を掲載してくれた出版社だからという

こともあっただろうが、そもそも受賞させる訳がないと踏んだからである。もしも賞を与えた場合

どのようなことになるのか新潮社ならば分かっていたはずだが、もしかしたら記者たちは

分かっていなかったのかもしれない。分かっていたらもう少し蓮實の虚を衝くようなトリッキーな

質問を用意していたであろう。もっともそれくらい頭が良ければ記者にはなっていないだろうが、

辻仁成も含めて文句があるならばおまえが三島由紀夫賞くらい獲れという皮肉も込めての受賞

なのであろう。個人的にはインテリやくざとは関わり合いたいとは思わない。

 19日のTBSの『白熱ライブ・ビビッド』で今回の記者会見が取り上げられていた。私の

知る限り、三島由紀夫賞の記者会見がテレビで流れたのは初めてのような気がする。まんまと

蓮實重彦の「策略」にハマってしまっているのであるが、蓮實重彦の『ゴロウ・デラックス』への

出演の流れは出来たと思う。


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『フィフス・ウェイブ』

2016-05-17 00:21:53 | goo映画レビュー

原題:『The 5th Wave』
監督:J・ブレイクソン
脚本:アキヴァ・ゴールズマン/スザンナ・グラント/ジェフ・ピンクナー
撮影:エンリケ・チェディアック
出演:クロエ・グレース・モレッツ/ニック・ロビンソン/ロン・リビングストン
2016年/アメリカ

食傷気味の「続篇ありき」の作品について

 主人公のキャシー・サリヴァンが弟のサミー・サリヴァンを救うという設定は『ハンガー・ゲーム』の主人公のカットニス・エヴァディーンが妹のプリムローズ・エヴァディーンを救う場面を思い出させ、キャシーとベン・パリッシュとエヴァン・ウォーカーの「三角関係」もカットニスとゲイル・ホーソーンとピータ・メラークの「三角関係」を想起させる。
 あるいは正体不明の知的生命体「ジ・アザーズ」と戦わなければならない設定は、『メイズ・ランナー』の謎の巨大組織「WCKD(世界災害対策本部)」と似たような感じで、要するに続編を観てみなければ物語がよく分からないのであるが、それにしては内容を出し惜しみしている感じがあって、ストーリーが本当に面白いのかどうか自体がよく分からないし、なによりも主人公たちが敵対する「ジ・アザーズ」に対して緊張感がなさすぎる。


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『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』

2016-05-16 00:49:00 | goo映画レビュー

原題:『Captain America: Civil War』
監督:アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ
脚本:クリストファー・マルクス/スティーヴン・マクフィーリー
撮影:トレント・オパロック
出演:クリス・エヴァンス/ロバート・ダウニー・Jr/スカーレット・ヨハンソン/ドン・チードル
2016年/アメリカ

 ヒーローたちが内輪もめする原因について

 驚くべきことに本作はメインテーマが『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(ザック・スナイダー監督 2016年)と同様に「内紛」であり、ポスターまでそっくりである。おそらくテーマが被った要因は時代の空気を反映したというような高尚なものではなく、今年のアメリカの大統領選挙に便乗したと捉えるべきであろう。
 それでも作品自体のクオリティーは「マーベル・コミック」のキャラクターを新たに動員した甲斐もあって本作の方がギャグやユーモアも豊富で断然面白い。キャプテン・アメリカとトニー・スタークは彼らが戦う度に被害を被る一般市民に対する対策として国際連合の管理下に置かれることになるのであるが、その案を素直に受け入れるトニー・スターク側と、それでは敵に対してフレキシブルな対応が出来ないというキャプテン・アメリカ側が対立することになる。このように説明するとトニー・スターク側が保守的で、キャプテン・アメリカ側が革新的に見えるが、実はトニー・スタークは自分がアイアンマンであることを公にするなど絶えず「ヒーロー」のあり方を模索しており今回もその一環であるのに対し、キャプテン・アメリカは幼なじみのウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズを救うという個人的な行動が制限されるという保守的な理由で組織に属することを拒否しており、なかなか状況が入り組んだまま結論など出るはずもなく続編を待つしかないのである。


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『バットマン vs. スーパーマン ジャスティスの誕生』

2016-05-15 00:07:45 | goo映画レビュー

原題:『Batman v Superman: Dawn of Justice』
監督:ザック・スナイダー
脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー/クリス・テリオ
撮影:ラリー・フォン
出演:ヘンリー・カヴィル/ベン・アフレック/エイミー・アダムス/ジェシー・アイゼンバーグ
2016年/アメリカ

いつ始まったのか分からない正義について

 まだ幼かった主人公のブルース・ウェインが映画を観た帰りに両親を強盗に殺されたシーンから始まる本作は、後に誘拐されることになるクラーク・ケントの育ての母親の登場でその意味が分かるのであるが、メインとなるテーマは彼らの本来の姿であるバットマンとスーパーマンが敵と戦うことで却って人類に被害をもたらすというパラドックスにあると思う。しかしバットマンが宇宙人のスーパーマンを脅威に感じることは理解できても、スーパーマンがバットマンを脅威に感じる理由は説得力が足りない上に、「暗い」バットマンと「明るい」スーパーマンの対戦は、ザック・スナイダー監督の作風により「暗い」中で行われ、バットマンはともかくスーパーマンも暗めな感じでスーパーマンらしくない。
 ダイアナ・プリンスの突然の出現もテーマを不鮮明にしている要因になっていると思う。スーパーマンの遺体が入っているとされる棺桶にかぶさっている土がラストで上昇しているところを見ると続編があるようで、確かにまだ「正義の始まり(Dawn of Justice)」ということなのだから続きはあるのだろうが、残念ながらその肝心の正義が本作を観てもよく分からなかったから、続編を観ても理解できる自信がない。


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『アイアムアヒーロー』

2016-05-14 00:10:24 | goo映画レビュー

原題:『アイアムアヒーロー(I Am a Hero)』
監督:佐藤信介
脚本:野木亜紀子
撮影:河津太郎
出演:大泉洋/有村架純/吉沢悠/岡田義徳/片瀬那奈/塚地武雅/長澤まさみ
2016年/日本

「放牧地」が「射撃場」になる原因について

 全体のストーリーは主人公で漫画家アシスタントをしている鈴木英雄が出版社の担当編集者に見せて面白くないと貶されたマンガと同じで、てっきり英雄の「夢オチ」だと思って観ていたらそのまま終わってしまった。冒頭のニュースで広島県広島市で起こった土佐犬「が」人間に咬まれるという報道から既に事件は始まっていたのである。
 それならば本作には『ヒーローマニア-生活-』(豊島圭介監督 2016年)のようにヒーローに対する「批評」があるのかと言えば、何もない。英雄は逃げる途中で出会った高校生の早狩比呂美と、「Fuji Outlet Park」で出会った「藪(ヤブ)」こと看護師の小田つぐみと共に、まるで『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督 1982年)のエンディングようにとりあえずクルマで逃げて終わってしまうからなのだが、そこで流れる主題曲「峠の我が家」の原題である「Home on the Range」の「range」には「射撃場」という意味もあり、「英雄」が「ヒーロー」になるように「射撃場にある家」という皮肉が成り立たないことはないし、『ブレードランナー』のように本作にも続編の噂があってもおかしくはない。


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『ヒーローマニア-生活-』

2016-05-13 00:23:59 | goo映画レビュー

原作:『ヒーローマニア-生活-』
監督:豊島圭介
脚本:継田淳
撮影:神田創
出演:東出昌大/窪田正孝/小松菜奈/片岡鶴太郎/山崎静代/船越英一郎
2016年/日本

本来の「ヒーローマニア」について

 タイトルに注意しておきたい。本作は「ヒーロー」の話ではなく、「ヒーローマニア」たちの話である。「ヒーローマニア」とは、例えば、5年間働いていた会社で経費の使い込みがバレて3年前にクビになって以来コンビニエンスストアでアルバイトをしている中津秀利や、下着泥棒の土志田誠や、情報収集能力だけは過剰に持っている高校3年生の寺沢カオリや、妊娠した娘と産まれてくる孫を心配するあまり自作の金づちの兵器で若者を襲撃しているサラリーマンの日下孝蔵など、要するに自分のことを棚に上げて「悪者」をつるし上げてヒーローを気取る者たちである。
 そのような者たちに近づいてくる者も「ヒーローマニア」であり、実際に、宇野正は4人と共に『ともしび総合警備保障』なる低料金で警備をする
会社を設立するのだが、彼らはそもそも何が正義で何が悪なのかが分からなくなっていき、会社は分裂してしまうのである。
 だからラストにおいて、中津は自分が働いているコンビニで行われている小さな悪行を正すことで大きな犯罪を未然に防ぐことから始める。それが本物のヒーローではない生活に密着した「ヒーローマニア」としての正しい振る舞いなのであろう。
 それにしても東出昌大の演技はどのように評価するべきなのだろうか。先日放送された『精霊の守り人』というNHKのテレビドラマではタンダというキャラクターを演じていたが、本作のニート役と演技が変わったようには見えないのである。それはおそらく『ROAD TO HiGH&LOW』(久保茂昭監督 2016年)でスモーキーというヤンキーを演じ、『64(ロクヨン)』(瀬々敬久監督 2016年)で日吉浩一郎という引きこもりの元科捜研研究員を演じた窪田正孝が、本作では下着泥棒役を器用に演じ分けていたから余計にその変化の無さが目立ったのであろう。


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『ROAD TO HiGH & LOW』

2016-05-12 00:19:16 | goo映画レビュー

原題:『ROAD TO HiGH&LOW』
監督:久保茂昭
脚本:Team HI-AX
撮影:長野泰隆
出演:岩田剛典/鈴木伸之/町田啓太/中村達也/林遣都/窪田正孝/山田裕貴/黒木啓司
2016年/日本

テレビドラマの総集編の限界について

 総称「G-SWORD」と呼ばれる「山王連合会」「White Rascals」「鬼邪高校」「RUDE BOYS」「達磨一家」の5つのギャングチームを一つにまとめるためにノボルが取った行動は、幼馴染のコブラやヤマトが所属している「山王連合会」ではなく「家村会」の構成員になるという展開が不可解で、かつて弁護士になることを目指していただけの頭の良さで交渉でまとめようとするものの上手くいかないところまでは理解できるが、策略を練ってまで「内紛」を起こさせるという性格のこじらせ方が分からない。過去を捨てたというのならば、「山王街」や湾岸地区から姿を消すべきだと思うからである。しかし本作はテレビドラマを再構成したもので、カットされたシーンでノボルの繊細な心理が描かれていたのかもしれない。7月に公開される『HiGH&LOW THE MOVIE』を観に行くかどうかは微妙な感じである。何となく韓国の映画を観ているような錯覚に陥る。
 個人的には渋い映画を好んで観ているらしい藤井萩花に期待していたが、圧倒的な「男社会」の中で埋もれてしまっていた。しかしもちろん本人の責任ではない。


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